石原知事記者会見

平成22年2月12日更新

石原知事定例記者会見録

平成22(2010)年2月5日(金)
14時58分〜15時15分

知事冒頭発言

【知事】きょうは冒頭に私申し上げることはございませんから、質問があったらどうぞ。ご意見でも結構です。どうぞ。

質疑応答

【記者】きのう、大きなニュースが2つありまして、片や横綱(朝青龍関)の引退というもの、それから、小沢さん(小沢一郎 民主党幹事長)の続投というニュースがありました。それぞれ、率直にどうそのニュースをごらんになって…。

【知事】三権っていいますが、立法、行政、司法に限らず、人間のやることというのは、いろいろ規則、規律があっても、何によってそれができ上がってるかというと、人間の長い歴史の中での、今までの人間の経験というものの収斂(しゅうれん)された常識というものを踏まえていると思います。その常識ということからすれば、新政権の中枢の中枢にいる2人(鳩山由紀夫首相と小沢一郎氏)の金銭の問題というのは、国民から見たらどう考えても非常識というか、我々の常識になじまないものだと思います。それに非常に不愉快、不透明、不可解といいましょうか、親子の問題だけども、しかし、あうんの交流、流通、感情も含めあるでしょうけども、他人でもなおさらだろうが、十数億のお金を母親からおりてて知らなかったという、そういう表明というのは、どんな人間が常識で考えたってわからないです。

 それから、贈収賄というのはなかなか立件しにくいものでしょう。だけど、そういったものを、アプリオリ(経験的認識に先立つ先天的な概念)というか、1つの前提、前段に踏まえても、わけのわからない金の動き、しかもそれは膨大なものです。しかも、今度、それが、ポイントアウト(指摘)されていなかったけども、政党助成金という税金を使って資産を買うというのは、民主党の中にも批判が出ているようだけど、こういった問題が不問に付されるってことは、私はよくわかりません。国民もわからないと思います。

 今度、その検察というのも、しょせん人のやっている仕事だから、それに対するチェックを強化するために、新しく強化されたんでしょう?

【記者】検察審査会(※検察官の不起訴判断の妥当性を審査する機関)の話ですか。

【知事】検察審査会。そういったものが、これからどうやって機能していくかわかりませんが、国民の常識というものを踏まえて、国民が感じてる不快感、疑義というものは、手を尽くして解明してもらいたいと思います、それは。また、そうすることが政治家の責任だと思うし、政治家当事者の責任だと思うし、ただ、それだけの金が何に使われたかといったら、これはわからんけども、おそらく自分の権力というか、政権というか、選挙というものも通じて、政党という力を使うために使ったんでしょう。ということになれば、なおさら政治は結局金かということになっちゃうんで、その結論はきちっとした機関が出したらいいと思うけども。

 もう1つ、あの横綱の問題は、結局、(日本)相撲協会の体質にありますよ。何といったって(朝青龍は)ドル箱なんだから。それに手をつけられなかった相撲協会の、コマーシャリズム(営利本位の商業主義)というか、拝金主義というか、それは相撲は伝統を表象する1つの文化のあらわれだとするなら、文化というのは、単にフィーリングとかそういうものじゃなくて、文化は文化としてまかれた様式があるわけだ。1つのフォーマット、フォームが、様式というのがあるわけです。その様式というものを無視するということだったら、これは文化の破壊者でしかなくて、相撲が国技であり、文化であるなら、その様式をきちっと守らない力士というのは、これは文化を破壊してるとしか言いようがないし、国技を破壊すると言われるんだから、つまり横綱にあるまじき振る舞いということ云々(うんぬん)あったけども、それをほとんど見ぬふりしてきた相撲協会に責任があると思います。自業自得だと思う、僕は、相撲協会の。

 つくづく、私は昔、八百長問題で物議醸(かも)して問題になって、怖い目にも遭ったんだけれど、そういうこともありましたが、知事になったら、青島君(青島幸男 元東京都知事)はやらなかったみたいだけど、鈴木さん(鈴木俊一 元東京都知事)がずっと続けて、都知事になったらそれが慣例かどうかは知りませんが、横綱審議委員会の委員になってくれって、2度要請がありましたが、私は断りました。もう相撲にはうんざりしてるから。

 昔、審議委員をしていた舟橋聖一さん(元横綱審議委員会委員長)という作家がいた、先輩の。私が八百長問題を起こしたときに、「石原君、これは君、やっぱり自重してくれ」と。「大男というのは何か体が大きくて力があるだけで変に自信に満ちてるけど、我々から見ればこっけいなところがある」と。私が言ったんじゃないよ、舟橋さんが。それで、そういう連中でもなお、物の哀れってあるんだって。それが、相撲道の1つの特徴であって、ほかのボクシングとか野球とかスポーツが国技であるかって別にしても、それにあんまり物の哀れは働かないけども、「だから八百長はあるんだよ」と言ってました、舟橋さん。僕も昔、西日本新聞の東京支局の大隈秀夫さん、後に評論家になって、西日本新聞でも偉くなったんじゃないか。やめた後、大宅壮一さん(作家・社会評論家)の一門の評論家になったあの人が東京支局時代、近くに住んでたんで、よく誘われて、記者席に行きましたが、記者席というのは、審査員のとにかくすぐ後ろなんだよ。土俵で組んでて、だれとは言わないけど、もう凋落(ちょうらく)の横綱が八百長で、八百長受けたほうが「早く押せ、押せ、早く押せ、押せ」と言って、うんうんとうなって、押せないんだ。記者はげらげら笑って見てたよ。そういう先の延長に、あの出来事があったんだと、私は協会をとがめて非難して、大変だったんだけども。あのときもいろんな人からいろんな忠告受けたし、相撲協会の実態、力士の実態も聞きましたが。

 国技であり、国技である限り文化であるなら、きちっと様式を守らない人間は、それは破壊する人間だから、野放図にコマーシャリズムで、外国人を受け入れるのは結構であるし、私は思わしくないと思うところがあるけども、その人間たちが、文化というものを理解できずに、ただ強いということだけで文化の様式を壊すなら、さっさとやめてもらったほうがいいと私は思います。私は日本の文化愛してますから、物の哀れ愛してますから。日本の独特の文化の様式って、何も相撲に限らないけど好きですから。

 それを否定する人間が強いということだけでまかり通って、日本人に一目も二目を置かれるのは私はやり切れないし、かなわないなということです。

【記者】今、不愉快、不透明というようなお話ありましたけども、刑事的には、きのうの段階では不起訴ということになったんですけども、小沢さん、幹事長を続投されるという判断、あるいはそれに対する民主党内の反応や何かをごらんになっていて。

【知事】これは常に問題というのは、選挙の成果というものの可否を占うことでの、党内、特に民主党党内の意見だろうけども、これは彼ら自身のことで、私も有権者の1人であります。だけど、例えばこの間の島の川島さん(川島忠一 元都議会議長)の後継者の(都議会議員補欠)選挙1つ見ても、あそこは自民党の金城湯池ではあったけども、川島さんの陣頭で築いてきた地盤であったけども、あの一連の不透明な出来事があったということは、僕は影響はなかったと言えないと思います。それは国民の率直な心情じゃないでしょうか。だから、私たちが一生かかったって使い切れない金の問題が不透明にさらされてる。しかも、それが非常識な説明でまかり通ろうとしていることに、言った人間が総理大臣でなかろうが、幹事長でなかろうが、国民はそれは反発しますよ。一議員の問題じゃないと思う。だからそれを心得て、検察審査会は、ものを判断してもらいたいと思う。

【記者】その続投云々というのは、国民が後はどう判断するかということですか。続投の判断という。

【知事】判断するのはやっぱり民主党が判断するんじゃないですか。自分たちの功利計算で、それはだれだって間近の選挙を考えるだろうから。はい、どうぞ。

【記者】高速道路の無料化の件について伺いたいと思います。国が先日、高速道路無料化の社会化実験の路線を発表いたしまして、東京都内は八王子バイパスのみで、ほとんど影響はないかと思われますが、改めて、この高速道路無料化というものについてのお考えと、あと、仮に、来年、再来年度以降、無料化の対象区域が拡大していった場合に、東京都内の高速道路は無料化にされるべきかどうか、お考えを伺えればと思います。

【知事】まず、後段のものはされるべきじゃない。それは、いろんな混乱が起こってくる。それから、私は高速道路、あんまり専門家じゃないんですよ。東京近辺の、とにかく首都圏における高速道路について非常に強い関心を持っていますが、全国ということになると、これは、副知事になってもらった猪瀬(直樹)さんが非常に詳しいんで、実際にその審議会(道路関係四公団民営化推進委員会)にも入ってらしたけども。さっき、彼とも話したんですが、18%云々という数字は、ただ距離の問題で、ああいったものがもたらす財政的な影響というのは、ほとんど4、5%だろうと言ってました。それをもってどう判断するかということですけれど。いろんな思惑があって、地方に偏じて無料化をするということは、ある人に言わせりゃ、選挙目当てだという人もいるし、財政的にもあまり効果がないんじゃないかという人もいるし、いろいろこれから問題があるでしょう。だけど、結果がそれを知らしめることでね。

 しかし、ただになった地域に住んでいる人は便利に違いないよ、これは。果たして一つ、全国的な視野で見て、政治そのものがもたらす国家的な恩恵になるかならないかって、また別の問題だと思いますけども。はい、どうぞ。

【記者】都政になりますけども、先日府中に総合医療センター(東京都立多摩総合医療センター・東京都立小児総合医療センター)が完成しました。開院式には知事も出席され、ごあいさつの中で、「いい施設ができたことをきっかけに、いろいろな問題を考える機会にしなければいけない」というお話がありましたけども、東京の医療ということで、現在、知事のご念頭にあることをお願いします。

【知事】東京の医療じゃない。日本の医療そのものが問題あると思って、その一端の問題。今、東京は、ある意味じゃ非常に、人口も多いですけど、進んだ形で医療のインフラ等の整備をしてるし、いろんなサービスも提供してると思いますが、それは、国の医療行政の一端でしかなくて。あそこで申し上げたけど、平均寿命の進展というのは、それは明かしてるわけだけども、国民皆保険、大変結構だ。しかもそれが、高福祉というのをもたらしてるけど、それを負担する人間たちの負担率というのは、格段に低いじゃないですか。高福祉・低負担になったらだれが考えたって、あなた、自分自身の家の家計考えたって、成り立たないことですよ。それがまかり通ってる。

 病院も整理するのは結構だけど、今の病院も残せと。じゃ、その運営費どうするのか。そこで働くお医者さんどうするのかということは、全然。お医者さんが少ないといったら、1つの何か、非難が上がってるようだけども。そのお医者さんの給料、特に都立病院っていうのは非常に給料が安くて。だから、私は、1つのサービスとして、お医者さんの給料上げました。でも、それは、普通の私立の病院並にはなかなかいかない。財政的に考えても。

 医者は、給料が安くても働け、休まずに働け。私の一人の息子の奥さんも勤務医だったけど、子供を産んで、産休が2週間しかないみたいな働き方はだれもやっていく人がいないと思う、もう。そういう状況を考えもせずに、だんだん、モンスターペイシェント(理不尽な要求をする患者)が出てきて、ちょっと医者に不手際があったら訴訟を起こす、医者はおどおどしてものはできない、はっきり言えない。こういう状況というのは、事が命の問題で、教育の問題もそうだと思いますけど、私、そこに日本人の心の荒廃がもう露骨に出てると思う。

 だから、病院できて結構でしょう。大変なサービスが行えると思うけど、じゃ、一体これを維持していくにはどうしたらいいかというのを考えたらいいの、みんなで。と思います。

 はい、どうぞ。

【記者】大阪府の橋下(徹)知事のことでお尋ねします。大阪府と大阪市の権限を集約して、都市の競争力を増したいということで、大阪市の範囲を広げて、23区のような特別区に分ける構想を明らかにしているんですけれども、このことについて知事のご所見…。

【知事】わからない、これは。大阪は大阪の事情が。ただ、大阪見てみると、気の毒だなと思う。隣の神奈川県もそうだな。埼玉県はいいでしょうけど、政令指定都市という制度は、知事にとってみるとかなり厄介で、大阪に限ってみると、大阪市議会のほうがよっぽど威張ってるね、力があって。府議会のほうが力ない。たまたま、大阪府議会出身と市議会出身の中山兄弟、2人とも親しかったけど、お兄さんも(中山太郎 前衆議院議員)、弟さん(中山正暉 元衆議院議員)も、両方ともすぐれた政治家でありましたが、どうも、彼らが地方議員でいるとき見ていると、市議会議員の弟が威張ってたね。これは、不思議な現象で、はあと思ったけれど。

 非常にやりにくいでしょう、知事さんとしては。ああいう制度(政令指定都市)というのは、基本的にこれから見直されてくるんじゃないのかしら。特に、隣の神奈川県なんて、川崎と横浜があって、今度相模原までが政令指定都市となると、知事の権限一体どういうふうにどこに及ぶかということになったら、なかなか大変だと思います。幸いにして、東京は、23区という特別区の制度で、そういうことなく済んでますけど。もし、23区が独立するようなことになったら、政令指定都市の資格持っている、人口の上で。そういう都市がたくさんできてきちゃうんで、これ、また、ゆゆしき問題だけど。その兆候はありませんが。

 大阪、なかなか大変だと思うんです。とにかく、日本の両輪であるべき大阪という、大阪圏が、行政の力が存分に発揮し切れない、知事と首相の比較をするつもりは毛頭ないけども、役人出身じゃないんで、橋下さんみたいな、非常にプロミネントな(卓越した)、行動力のある政治家が出てきても、いろんなバリア(障壁)が行政区分であって、大変だなと思います。はい。

 はい、それじゃ。

(テキスト版文責 知事本局政策部政策課)