石原知事記者会見

平成21年12月3日更新

石原知事定例記者会見録

平成21(2009)年11月27日(金)
15時03分〜15時23分

知事冒頭発言

1 「キャップ&トレードの全国導入についての提言」について

【知事】冒頭、1つ、私から申し上げます。

 キャップ&トレード(※温室効果ガスの「排出量の総量削減義務(キャップ)」と「排出量取引(トレード)」を組み合わせた制度のこと。東京都は、平成20年度に東京都環境確保条例を改正し、世界の都市で初めて、オフィスビルなど大規模事業所に対してキャップ・アンド・トレードを導入することを決めた。)の全国導入についての提言でありますけども、鳩山(由紀夫)総理が、2020年までにCO2排出量を25%削減するという意欲的な目標を掲げましたが、これを受けて、国は11月に副大臣級による「国内排出量取引プロジェクトチーム」を設置して、キャップ&トレードの制度導入の検討を開始しました。東京都は、もう既にキャップ&トレード制度の導入を決めておりまして、4月からの実施に向けて着実に準備を進めております。

 全国導入へ向けた国の取組を評価するとともに、国の制度が東京都の経験を活かして、真に実効性のあるものとなるように、これまでの実績を踏まえた提言を国に向かってすることにしました。

 この提言で、都は、新たに導入すべき制度は、自主参加型のものではなくて、排出総量の削減を明確に義務づけるとともに、義務違反に対する罰則を導入するなど、国際的にも通用する制度とすべきことを求めております。

 現に、東京はこの制度を発表したために、ICAP(国際炭素行動パートナーシップ)に、都市として世界で唯一参加をする資格を得ていますが、国が直接執行する「国家キャップ&トレード制度」と、都道府県、政令指定都市が運営する「地域キャップ&トレード制度」の2つを、国と地方がともにその積極的な役割を果たす制度とすることを提案しているわけであります。

 都は、今後、今回の提言に基づきまして、地方自治体やNGO(非政府組織)、先駆的企業などと意見交換を進めて、制度案を充実強化し、真に実効性のある制度が実現するように国に積極的に協力していく考えであります。

 詳細については、この後、環境局から説明をいたします。

 私から申し上げるのは以上です。その他、質問があったらどうぞ。

 はい、どうぞ。

質疑応答

【記者】今週に入って、為替相場で円高が振れていることについて伺いたいのですが、円高が進行いたしますと、輸出企業の業績悪化で都税収入が減少したり、下請で入っている中小企業の業績悪化につながる可能性もありますが、今の足元の円高について、知事はどう見ていらっしゃるか伺えればと思います。

【知事】私、そっちの専門家じゃありませんから、相対的なことしか申せませんけど、日本の経済産業の形態というのは、輸出依存というのは比重が非常に大きいわけですから、そういうことになれば、当然、国全体に大きな支障を来すのは自明のことでして。一方、それに相対してテレビなんかでも、これから海外へ出かける旅行客が円高の問題聞かれて、これを機会に買い物いっぱいしてきますとかはしゃいで言ってるけども、これは、本当に、経済の流動の中で微々たるポーション(部分)しかありませんし、これで政府が政府としてどういう形で介入するのかしないのか、これから日銀(日本銀行)を含めて政府が決めることでありましょうけども、いずれにしろ、おっしゃったとおり、日本の経済産業の本質的な形態からしても、円高は決して歓迎すべきことじゃないということは自明だと思います。それが直接、東京都の財政に響いてくることも間違いないと思います。

 その後、鳩山総理が言っている、アジアの連帯の中での統一通貨なんていうことなど、いろんな問題が出過ぎて、そうにわかに簡単になるものじゃないと思いますが。

 こんな問題に付随して思い出すのは、かつて、何年前になりますか、日本が東南アジアの経営にどんどん乗り出して、東南アジア全体の経済が非常に発展して、日本の傘下におさまるんじゃないかという懸念で、アメリカは非常に戦略を立てて、ヘッジファンドのソロス(ジョージ・ソロス 著名な投資家)なんかが暗躍して、東南アジアの経済をつぶしました、為替の問題で。あのときに、台湾とマレーシアだけが固定相場維持して、変動の為替の中でのダメージを食いとめたのを思い出しますけど、私はそっちの専門家じゃありませんから、これから国がこの問題にどういうふうに介入していくのか。ただ、今度の政権だけじゃなしに、むしろそれは期待してますけど、過去の政権というのは、何か大きな戦略というのは立てられなかったですね。国家の意思がどこにあるかわからない、それを踏まえて、大きな戦略展開というものをつくり得なかった、その場その場の場当たりでしのいできて、結果、国全体が疲弊してきたわけですけども。特に日本は、こういうリセッション(景気後退)の中で、今度、これはあくまでも見なきゃわからんことですけど、来年度の予算がどういう形で編成されるか、それによったら、支出されるお金が還流しにくいような形で使われると、ばらまきでしょうね。ばらまきというのは還流しませんから、下手をすると二番底が来るんじゃないかという懸念、これは当然危惧(きぐ)されるんじゃないかという気がします。はい。

【記者】今おっしゃったように、過去の政権が戦略をという話ですけども、今、鳩山政権が科学技術立国という言葉と反するようにというか、事業仕分けの段階ですけれども、スーパーコンピューターの予算だったりとか、廃止とか見直しという言葉が出ていて、かなり著名な学者さんとか研究者さんから異論が相次いでまして、知事は今、予算見てみないとわからないということだと思うんですけど、現段階で、そういう科学技術の振興への予算に対して、事業仕分けの段階ですけども、そういった判断が出てることについて、どういうふうに思われますでしょうか。

【知事】これは、本当に大事な大事な、極めて本質的な問題だと思います。私、仕分けの実態を眺めてて、思い出したのは、何年前ですかね、どういうテレビで見たのか覚えてないけども、どういう立場の人なんだろう、かなり年配の人が出てきて、アナウンサーですが、日本の将来を危惧して、非常に悲観的な、日本のメディアというのは非常にマゾヒスティックだから、自虐的で、「もう日本はだめなんじゃないですか」という言い方をしたら、その人にしかられた。「日本は大丈夫だ、絶対大丈夫だ」と言い切るから、「どうしてそんな自信がおありなんですか」と言ったら、「技術だ、日本がどんどん新しい技術を開発していけば、絶対国はもつ、ばかにもされない、国力は維持される」と。まさにそのとおりです。人間の文明の進歩というのは全部新しい技術がもたらしたもので、人間が火を得てから、石器時代、銅器時代、鉄器時代が来て、中世で磁石使った大航海技術、それが彼らの植民地をヨーロッパにもたらした。それから、グーテンベルク(ヨハネス・グーテンベルク 活版印刷術を発明)の印刷術、そして火薬。これは、長く続いた中世を終わらせて近世をもたらして、近代に来て、その最後の私たちの現代に至って、原子力とか、宇宙遊泳の技術とか、それからOA機器、コンピューター含めて、そういった3つの非常に中世を変えた技術に酷似した技術によって現代が今進みつつあるわけだけれども、さらにそれが、どんどん進化してるわけですけれど。そういう点から、歴史の文明工学というところから眺めて、技術というのは絶対に必要だし、これは大事なもんなんです。それを、何か知らんけど、だれかが、「スーパーコンピューター、どうして1位じゃなきゃだめなんですか、2位でいいじゃない。」2位はないんだ。スーパーコンピューターは2位はないの、1位しかないの。その1位を、とにかく獲得して続けようと思ってるときに、ああいう、もう全く文明工学的に白痴的な、だれがどう言ったか覚えてませんけれど、新聞の報道読むと、そのスーパーコンピューターが何で2位でいいのか、2位はないんですよ。先端技術というのは2位はないんですよ。これを、歴史の原理というものを知らずに、ああいうただ金目を減らせばいいということだけで、国家の本当の原動力というものを阻害するような予算組まれたら、これはこの国はもたないと私は思います。それはやっぱり、ノーベル賞をもらった日本の超一流の学者さんたちだけじゃなしに、この間、遺伝子に関する発見もした、京都大学の山中君(山中伸弥 京都大学物質−細胞統合システム拠点iPS細胞研究センター長)。彼なんかも出てきて言ってますが、それは、継続を失ったら技術は全然そこでぷつんと切れて挫折するんでね。これはもうノーベル賞の学者たちが本当に血相を変えて出てきて、政府に物を言ったのはもうごく当たり前のことだし、それを斟酌(しんしゃく)しなかったら、この日本はつぶれるね。政府がつぶれるだけじゃない。日本がつぶれますよ。と思います。

【記者】そういう意味では、最終的に予算の段階ではきちっとした予算を計上すべきだというふうに…。

【知事】もちろんそうです。ほかのもの削るのはたくさんあるけれど。それから、いろいろ問題は出てるけれど。ついでに言うと、自衛隊の装備の問題なんかも、これは、日本の軍事産業と防衛庁の癒着というのはいろいろありますぞ。私はかつて、佐藤(栄作)内閣のとき、中曽根(康弘)さんが防衛庁長官だったな。イスラエルの武官と知り合って、第三次中東戦争、非常に参考になったんで、いろんなこと調べてみたら、一種のアメリカとロシアの代理戦争でしたから、そこで使われた通常兵器、日本の自衛隊も使ってる兵器の性能を比べてみても、格段に違うんだね。それを指摘して、数字を上げてやろうと思ったら、まずやめてくれという意見が来た、防衛庁から。それから、頼みもしないのに、防衛庁に日本製の製品を納めてる企業から、後援会に入りますって言ってきた。ああ、これは大変なもんだなと思いました。

 それは、またさっきの(科学)技術の問題関係ありませんけど、ああいった問題によく、日本の中の産業と役所の癒着というのはありますよ。そういったものは今度の政権はどんどん暴いていったらいいと思うけど、技術に関しては、もうあの発言は論外だと私は思います。

 はい、どうぞ。

【記者】今の事業仕分けに関連してなんですけれども、もう1つ、スポーツの予算でも削減ということで、事業仕分けされましたが、2020年の五輪も視野にあるということで、その辺はどうとらえましたでしょうか。

【知事】これは、人間の価値観の問題で、スポーツに対する予算の執行というのも、そうすぐには還流してこないでしょう。公共事業と違って。そこら辺をどうとらえるかで、ただ、時期が時期ですから、こういう不景気の、またその来年度の本予算の執行の形が変わってきて、さっき言ったみたいに、二番底が来るようなことになると、これはえらいと思うんで、私はそういう意味で還流性の少ない、スポーツに対する投資もそうでしょう。しかし、それは、その民族の繁栄、国家の繁栄、これからこの国を担っていく若い世代というものを心身ともに鍛えて、健全な姿に置くということのためには、スポーツの行政というのは欠かすことできないと思うから、どういう形のプライオリティー(優先順位)を予算が組んでいくか、刮目(かつもく)しなくちゃいけない。今の段階では、まずできた予算を見ないとわからない。

【記者】あと、その事業仕分け自体、国民に非常に目に見える形だということで、賛否両論あるんでしょうけど、どちらかというとわかりやすいとういう声がどうも多いみたいなんですが、知事はどう思われますか。

【知事】やってることは、目に見えるところでやって、役人をつるし上げて、みんな国民は快哉(かいさい)叫ぶだろうさ。ただ、それはまたみんな観客が立ち見まで出るって、満員になるぐらい眺めてるってのも、ある意味じゃ結構だけど、ある意味じゃちょっと怖い気もするね。それは何か、今まで勝手なことした役人をとっちめて、人民裁判みたいになってしまって、それで、国民がいかに溜飲を下げても、できてくる予算が実は執行されるときにこの国を狂わせてしまったらえらいことになりますから、そこら辺のところは時期も時期だし、いろんなことを考えて、それは自民党がずっと政権続いたら、相変わらずだらだら国債を発行してとかになったか知らんけども、今度の内閣、言ったことの手前、なかなか予算編成というのは苦しいし、難しいと思います。別にシニック(皮肉的)に言ってるわけじゃないんだ。私は期待するところは期待してるから。

 私が、自民党には愛想尽かす、ある時点で代議士やめたのも、司馬遼太郎さんの言葉のとおりだよ。太政官制度以来ずっと官僚統制国家が続いてきたんだから、これ、このままいくのかなと思ったら、こういう時代になった。自民党だって、何か言い分いろいろあるだろうけども、役人に牛耳られて、勝手なことさせてきた、自業自得ですよ。あの年金の問題なんかだって、長妻君(長妻昭 厚生労働大臣)随分苦労してるみたいだけど、厚生労働省、もっといろんな問題あるけども、イギリスとかフランスという国だったら、年金の問題でもう政党に関係なしに、抗議の大デモが起こってると思う。日本人はそれやらなかった。ぶつぶつ断片的にその不満拾われていたけれども。しかし、結果としてその大きな波が選挙で来て、政変、政権交代になったけど、何といってもその引き金、僕は年金だと思います。これをあのまま放置してきた、役人に勝手なことさせてきた。特にやっぱり厚生(労働)省というのはかつての経世会でいろいろ因縁がありまして、こういった問題も、とにかくいろんな形で露呈してきた。(元厚生事務)次官と奥さん殺した犯人も何を考えているかよくわからんけども、余計な予断、推断しませんし、これから裁判が行われるんでしょうが、不思議な事件だったけども。しかし、彼はどれほどの確信を持って何をしたか、言ってることのとおりかどうかわからないけども、やっぱり一省の事務次官が老人を食い物にして裁判官みたいな、こういう退廃、堕落というのは、厚生(労働)省自身の問題でも、それをずっと放置してきた政権の問題だと思いますよ。それが今度白日にさらされるということは結構だけども、ただ、結果、できてくる予算がどんな形になるか、これは本当にもうこれからの問題だから、私も皆さんと一緒に刮目したいと思いますけども。

 はい、どうぞ。

【記者】道路予算のことなんですけれども、何か25日に、東京都のほうに国土交通省のほうから国道6号の拡幅など11事業で凍結の可能性があるということを何か示してきたということなんですけれども、その中に、当然圏央道の問題と外環道の問題が入っていると思うんですが、前から都知事からもいろいろ費用対効果の関係では外環道は絶対必要だということは聞いているんですけれども、大分情勢も、いろいろ当時と変わってきてるんじゃないかと思いますけれども、都知事の現在のお考えはどんなものなんでしょうか。

【知事】それはもう再三同じことを言ってるわけで、予算ができ上がってみなきゃ言えませんが、ただ、日本のモータリゼーション(車社会化)の時代に、何かほかの案件として新幹線のほうが高速道路よりプライオリティーが高いの?今度の政権では。これはちょっと面妖(めんよう)な話で、同じことを何度も言ってきたんだけども、三木(武夫)内閣のときに、当時の国鉄がやっちゃいけないストライキのための権利を獲得するのに、10日間の国鉄ストをやった。スト権スト。社会党と共産党が熱烈に支持した。彼らのねらいは、これによって国に一矢報いて、流通が止まって、物価が上がるだろうと思ったら、全然影響なくて、とにかく、東名(高速道路)が通ってたために、トラックによる輸送で全然物価に響かなかった。そういう歴史の近くの事例がありまして、日本のようなこの社会状況の中で、トラックの運送、それに活用される高速道路というのはいかに重要かということが分かったわけですから、そういったその歴史の事実というものを踏まえて、私は公共事業に対する優先順位を決めるべきだと思っております。

 はい、それじゃ。

(テキスト版文責 知事本局政策部政策課)