石原知事記者会見

平成21年11月12日更新

石原知事定例記者会見録

平成21(2009)年11月6日(金)
15:00〜15:21

知事冒頭発言

1 今後の税収見通しと予算編成等について

【知事】きょうは冒頭、2つ、私から申し上げることあります。

 1つは、この景気の状態ですけども、今後の税収の見通しと予算編成についてでありますが、今年度の都の税収は、急激な企業収益の悪化によりまして、前年度に比べて1兆円以上、過去最大の減収となる見通しとなりました。もとより、国とは違いまして、都は財政の健全化をなし遂げていますので、直ちにどうこうというわけではありませんが、今年度、そして来年度も、都財政は大変厳しい環境の下に置かれるのではないかと思います。そのために、今年度については、もう一遍、歳入、歳出の両面にわたって徹底した洗い直しを全庁挙げて行います。都民サービスに直接影響を与えないことを前提に、予算執行の点検、見直しをするように指示いたしました。

 一方、来年度は、まだ予算要求の段階でありますけれども、今の税収動向を前提としますと、このままでは、6,000億円もの財源不足が見込まれる状態でありまして、今後、編成作業が本格化しますが、相当、知恵を出して、相当、汗をかかなくてはならないと覚悟してます。それにつけても、福田(康夫)内閣のころでしたか、国が、法人事業税の分割基準を一方的に変えまして、3,000億円を、暫定としながら2年度にわたって、言ってみれば子供の財布に親が手突っ込んで持っていくような話ですけれども、これは極めて不当なものですが、裁判もしようもないし、そのかわり、しっかりと、何といってもコストアンドベネフィット(費用対便益)の指数の高い外環だけはやってくれということを申しましたが、これも何だか危なくなってきたみたいだけども。当時、国会の質問調べますと、民主党は3人ほどの議員が、こういうやり方はよくないと。地方の主権を侵害するもので、地方分権の時代に全く時代錯誤、そのとおりですな。とにかく、反対の質問をしているわけでありまして、それにのっとって、民主党は、今度の政権は、政権政党として、これを即時撤廃してもらいたいと思っています。

 実は、このことを、先日、菅(直人)副総理に、あの人、民主党の都連の会長ですし、何といっても都出身の有力な代議士ですから、菅さんにお目にかかって話をしました。菅さん、「わかった」といってメモをとってくれてましたけど、どうなりますか。いずれにしろ、あの時代に財務省のやった暴挙を、民主党は良識を持って反対したわけですから、それを踏まえて、こういったものは即時撤回してもらいたいと思います。そうすると、東京都も助かるし、都民も助かるわけですけれど。

 また、来年の予算や税制改正をめぐる論議を聞いてますと、またぞろ地方への負担のつけ回しの話が出ているようですけども、国策がための財源は、全額国が責任を持つ、それが国家の責任というものだと思います。公約は、政権政党として、国政の選挙の中で唱えられたものですから、それを実現するのに、地方がそれを担うということは、これは妙な話だと思います。いずれにしろ、環境が厳しいときに、だからこそ都政の底力が活かされるべきだと思ってます。いま一度、気を引き締めて、都民が直面する諸課題に全力で取り組んでいきたいと思ってます。

2 少子高齢時代にふさわしい新たな「すまい」実現プロジェクトチームの検討報告について

 次いで、猪瀬(直樹)副知事を座長とする「少子高齢時代にふさわしい新たな『すまい』実現プロジェクトチーム」が、これまでの議論をまとめた報告書を作成してくれました。

 従来、国や都の住宅部門と福祉部門の縦割りの弊害で、「すまい」に不安を抱えている高齢者への対策が不十分でありましたが、このプロジェクトチームでは、住宅政策と福祉施策の都の現場で横ぐしを通しまして、年金や生活保護で暮らしている高齢者にも安心・安全な「すまい」を提供する「東京モデル」を、国に先駆けて提案しております。この「すまい」では、急病や事故の際に、緊急通報するシステムや食事の配達などの生活支援サービスを一体として提供することで、高齢者が住みなれた地域で自立した生活を継続することを目指してます。また、こうした縦割りを打破する、東京都の取組が霞が関の官僚機構に変化を促していくことを期待しております。

 東京都は、東京という、この非常に地価も高いですし、しかも可住面積が乏しくなってる状況の中で、従来の国の規範でいうと、認可保育所というのは、ある大きさのあそびを子供のために持たなきゃならんということでしたが、そんなこと、とても賄えないんで、駅前の、かつての国鉄が持ってた資産を活用するような形で、幾つか認証保育所を始めましたが、最初、2つ、3つやったんですが、非常に人気が出まして、今も、これが東京都の1つの保育行政の要になってますけども、相変わらず、国は、こういったものを認可の対象にしないんです。認可されれば、国からの補助も受けられるんですけども、やっとこのごろ、大都市に限って、その状況を見て、こういった待機児童の多い、保育園、保育所の規格について考え直そうという気運が出てきたようですけども、ここまで来るのに時間がかかり過ぎたといううらみがありますが、こうした東京都の新しい取組が国の行政にいい影響を与えるということを、私は期待しております。

 今後、都は、今回のプロジェクトチームの報告に基づきまして、少子高齢時代にふさわしい「すまい」を実現していくことを、都民が安心して東京に住み続けることができるよう、都が持てる力と知恵を結集して取り組んでいきたいと思っております。

 私から申し上げることは以上です。質問があったら、どうぞ。はい、どうぞ。

質疑応答

【記者】予算要求の中で、八ツ場ダムに37億円、外環道に25億円というふうな予算要求が出ているようですけれども、これは、実現するかどうかわからないけれども、東京都の1つの姿勢を見せておこうというふうな意味で、一応予算要求として出されているもんなんでしょうか。

【知事】それって、当然じゃないですか。論拠がない、そんなものを出すわけないですし。

【記者】感触としては…

【知事】これは、わかりません。東京都は、東京の主張というのを、予算の要求でするわけですから、それを国がどう反応して、どう裁断するかは、これまた国側の問題でしょう。はい。どうぞ。

【記者】先ほど、歳入歳出の洗い直しを指示されたということで、今年度の予算であれば5,000億、あるいは来年度でいえば、知事おっしゃっている6,000億というと、足して単純計算すれば1兆円ぐらいお金が足りなくなるということなんですが、財調基金等、基金も、今、1兆4,000億程度、今年度末で、大分、こう使い切ったとしても、かなり減ってしまう。これ、なかなか洗い直しレベルでは、こう、どうでしょうか。

【知事】それは今まで、東京は東京なりに仕分けをしてきましたけど、これは、またもう1回徹底してやり直す以外ないでしょう。いきなり、シーリングかぶせてというのは乱暴な方法ですから、やっぱり相対的に、物事のプライオリティー(優先順位)を定めて、場合によったら都民にも少し我慢していただく、これがこの不況がいつまで続くかわかりませんし、やっぱり経済界、産業界では二番底を打つんじゃないかという、嫌な憶測もありますし、それがいつごろになりますか。早ければ来年の春、年度がわりのあたりかなという人もいますけども、なかなかそういう予測のつかない問題ですけども。そういったものは、予測、覚悟しながら、今のうちから手綱引き締めていかないと、だらだら垂れ流して、貯金使ってしまって土俵割っちゃうんじゃしようがないと思いますから。ほんとに難しいかじ取りになりました。国は国でどうするんですかね。

 私、あるコラムに書いたけども、バラマキという言い方は失礼かもしれないが、ただ、その福祉ですね。一種の生活の保護も、高速道路の無料化にしろ、あるいは高校生も含めて、授業料ただにするとか、それは受ける方はうれしいでしょう。ただ、それに見合う負担というものを、国全体、国民全体がしませんと。だから、この間、オリンピックで行ったデンマークなんか、聞いてびっくりしたんだけど、物価は非常に高いんですが、消費税は25%ですよ。所得税は、何と60%ですよ。デイニッシュ・ドリーム(デンマークにおける夢の体現)があるのかなと言ったら、それはそれなりにあるんだということだったけども、そのおかげで、小学校から大学まで、厳しい受験はあるらしいけども、授業料は全部ただでしょう。あそこへ滞在している外国人まで医療費がただという、そういう福祉国家ですが、聞いてみれば、それに対する高負担を国民がしているわけで。その覚悟がないと、なかなか、今言っているマニフェストか公約か知らんけども、ああいったものを、実際に運営していくお金の財源っていうのは、とっても難しいんじゃないかと思うし。

 ただ、私は、今振り返ってみると、美濃部(亮吉)都知事のときの、非常に徹底したバラマキ、あの福祉政策というものは、福祉という名前はきれいだけども、東京の財政をめちゃくちゃにした。この美濃部都政の全国版にならなきゃいいなと思ってますけれど。あのときは、12年間、みんな呻吟(しんぎん)したわけだけども、今度はもっと早くいろんな結果が出るでしょう。そういう中で、東京はまだまだ、財政再建を一応したから、まだ、土俵までの距離があるかも知れないけども、ほかの自治体は、裕福なところもありますが、全体的には非常に苦しいし、まして、その公約の履行のためのつけ回しを地方の財政にかぶせてきたら、これはもうとんでもないことになると思います。はい。

【記者】今おっしゃった、国が、要するに、つけ回しと。つまり、例えば子ども手当とか公立高校の無償化とか、交付税の不交付団体である東京都の場合は、交付税で面倒を見るというような仕組みに入らないことを指していらっしゃるのかなということでよろしいんでしょうか。

【知事】そうです。土俵を割ってまで、交付団体になるつもりもないし、それで、都政が健全になるとも思わないし、これはほんとに難しい選択を東京都も強いられると思います、これから。

【記者】歳出歳入の点検という中で、昨年度であれば、おそらく都民生活に直結しないということで、広報関連の予算とかを大分詰められたっていうことがあったようですけども、昨年度の実績でいえば。

【知事】とにかく、出させてみたら、もう、だれも読まないような紙がいっぱいあるんだ、毎月。こんなものは、もう要らないんじゃないか。これは、しかし、金目としたら、それほど大きなもんじゃないでしょうけれど。

【記者】今年度については、例えば、まだ未執行の部分の事業そのものを何とか、途中でやめにするとか、やめてしまうとか、そこまでいく…。

【知事】それも、これからのやっぱり研究課題、討論の課題だと思います。はい。

【記者】はい、わかりました。

【知事】どうぞ。

【記者】はい。きょう、原告を新銀行東京として、元行員を被告とする民事訴訟裁判の和解というのが行われたんですが、この件について、幾つか伺いたいんですけど…。

【知事】それは、当事者に聞いてください。両者が和解したんなら、それは結構じゃないですか。それ以上のことは、私は言えません。

【記者】じゃ、そうすると、知事としては、この件については、発言できないということになりますか。監督する側ですよね。

【知事】監督するたって、株主の立場の限界がありますから。

【記者】ええ。

【知事】これは、こういったものを監督っていうのは、直接には、取締役会だったり、上司・下司の関係があるわけでしょうから。和解したのは結構じゃないですか。和解は和解なんですから、それで、どんな問題が起こるか、これからの問題であると思いますけども。

【記者】ただ、一方で、1,000万円の損害賠償請求、全部、新銀行東京側が取り下げてるんです。これを見ると、実質的に、新銀行東京の全面敗訴という形になるんだろうと思うんですが。

【知事】それは、あなたの判断であって、それについて、私のコメントはできません、はい。

【記者】この裁判のもう一つの意味としまして、幾つか、私もこの会見で伺ったことがあるんですが、例のブリーフィングメモの存在なんですが、その信憑(しんぴょう)性について、異議があるというふうに、都知事はおっしゃっていたはずなんですが、それを、元行員のほうから、新銀行が取り戻したということが、これ、和解条件に入ってるんですけども、このブリーフィングメモそのものが、つまり、マスタープランを、東京都が新銀行に押しつけてたとするマスタープランがあって、そのことを示したブリーフィングメモなんですけれども、その存在が立証されたことになるんでしょうけども、これについては、どのようにお考えですか。

【知事】それは、あなたの、幾つかの事物をつなげての、レトリック(修辞)とは言いませんけど、物の考え方で、そのマスタープランというのは、随分、問題になりました。で、これをつくる過程で、しかし、それは、何も絶対的憲法でもないんで、経営者の感覚でいったら、それが現実にそぐわなかったら、それを変えて運用するのが、経営能力ということじゃないんですか。

【記者】じゃ、そうすると、そのマスタープランがあったことは事実なんでしょうか。存在したことについては。

【知事】あったんじゃないですか。

【記者】あ、ブリーフィングメモ。ブリーフィングメモのこと。

【知事】それは知りません、私は詳しく。もう一回、調べてみますけども、どういう質問で、どういう答弁したか、定かに覚えてませんから。ブリーフィングって、例えば、どんなものなの?

【記者】そのマスタープランの存在について、東京都側と新銀行東京側でやりとりをしていると。その中で、これを守ってくれと、これを実行してくれという形で、東京都側が、新銀行東京に、そのマスタープランの実行を押しつけたとされる…。

【知事】東京側って言ったって、私は当事者じゃありませんけど、その担当の、例えば局長なり副知事が銀行へ出向いて行って、都の意思として、そういうものを伝えることはあり得ないと思います。また、やっちゃいけないことだと思います、それは。銀行法にもとりますから。はい。

【記者】そこに問題があるんじゃなくてですね…。

【知事】ですから、それは、あくまでも取締役会の責任の問題じゃないですか。

【記者】ええ。そこに問題があるわけじゃなくて、じゃ、そのブリーフィングメモそのものが、信憑性のあるものだったということは、認めてよろしいんでしょうか。

【知事】わかりません、それは。私、それについて詳しく読んでもいませんし、それについての質問を受けた記憶はありますけども、それがどのようなものだか知りません、私は。

【記者】東京都の定例会でも、都知事は、その存在について否定されてますよね、異議を差し込んでますけども。

【知事】いや、ちょっと、私、それ、定かに覚えてません。その、別に逃げるわけでも何でもないんですが、その、もしあれだったら、ブリーフィングメモを見してくださいよ。それ、もう一回。これからの裁判の過程でも、いろんな事象の論拠にもなるし、ならないかも知れない。それ、だれがつくったものなんですか。その人がつくったもの?

【記者】新銀行東京側がつくったものです。

【知事】それはちょっと、当事者に聞いてもらえませんか。担当の副知事なり局長に。はい。

【記者】すいません、1点だけいいですか。

【知事】はい、どうぞ。

【記者】今回、損害賠償請求を、全額放棄しました、新銀行側は。

【知事】だから、それはなぜ放棄したかの報告を受けてません、私は。

【記者】その裁判について、新銀行は、ここ数年、もうけを出してませんので、税金が使われたと思われます。そういうような損害賠償請求自体を、途中でやめてしまうような裁判だとすると、何のために裁判を起こしたというのが、普通の発想だと思うんですが、知事は、この裁判が何のために行われたと考えていらっしゃいますか。

【知事】それは、銀行は銀行の所存があったんでしょう。私、それ聞いてませんから。なぜその両者が和解したかは、これから聞く話ですから、まず、銀行の当事者に聞いてください、それは、あなた。それが道筋ってもんじゃないですか。いきなり、ここへ来て、私に聞いたって、それは筋違いじゃないかな。はい、どうぞ。

【記者】決算の委員会などで、民主党とか共産党が、オリンピックムーブメント共同推進事業について、各自治体に配ったお金にむだがあったんじゃないかという指摘がありましたけれども、それについての知事の見解をお願いします。

【知事】いや、それは、その、持ち場持ち場、つかさつかさがあるんで、私にいきなりそういうこと聞かれてもわかりません。私、その委員会に出たわけじゃありませんから。担当の局長なり、その部署に聞いて、あるいはJOC(日本オリンピック委員会)に聞いてください、それは。

【記者】むだがあったか、なかったかの検証っていうのが、どの程度まで進んでるのかっていうのは、報告はありませんか。

【知事】それも当事者に聞いてください。しかし、私、この間、担当の新聞記者の諸君の対談も見ましたけど、例えば電通が、このビディングゲーム、招致運動のために雇った学生の時給が4,000円、こんなべらぼうな時給を払う組織ってないね。そういった問題は、これから、私たち、電通にたださなくちゃいけない問題だと思ってます。はい。

(テキスト版文責 知事本局政策部政策課)