石原知事記者会見

平成21年10月29日更新

石原知事定例記者会見録

平成21(2009)年10月23日(金)
15:01〜15:21

知事冒頭発言

1 八ッ場ダム建設事業の現地視察について

【知事】冒頭、2つほど申し上げますが、例の八ッ場ダム建設事業について、この間も5人の知事と、関連の知事として、現場へ行ってきました。

 ヘリコプターで、まず上空から鳥瞰(ちょうかん)図的な全体状況を把握するとともに、むしろ、非常に狭量な、険峻(けんしゅん)な峡谷ですから、部分、部分を見るよりも、まず、ヘリコプターで見ると、逆に、その地上を歩いてみて、ちっちゃな部分の意味合いっていうのはよくわかりましたけども、事業の進捗状況をつぶさに見てまいりました。

 一部には「完成にほど遠い」などという報道もありますけども、仮排水のトンネルも完成しておりまして、橋などほとんどでき上がってまして、あとは、橋梁(きょうりょう)を渡したり舗装をかけるだけの状況があちこちありました。

 建設反対派の言い分の1つは、個々のプロジェクトに関して、「進捗状況ゼロ」というような報告がありまして、これは、全く反対のためのレトリック(修辞)でありまして、言われてるところを見てきましたら、橋はできてました。あと、舗装するだけよという、これ、まだ人が渡れないんで、進捗状況ゼロということでしょうけども、これは、ちょっと事実に違う表現で、これは国民が、こういう報道、レトリックに惑わされて、あの事業を評価するというのは、非常に危険だという気が改めていたしました。

 地球温暖化が進んで、異常気象が頻発しているこの時代に、これから、近い将来、どのような渇水、あるいは洪水が起こるかわかりません。ここまでできているダムは、当然、完成されるべきだと思いますし、必要な公共事業は継続しなきゃならないと思います。

 長い時間かけた国の働きかけによって、下流都県のために、ダム建設を受け入れた地元の方々の生の声を聴きまして、「1日も早くダム湖を完成させて生活再建を進めたい」という切実な思いには、非常に心を打たれた次第でありました。

 政権交代後の国による突然の中止宣言が、いかに地元の感情を踏みにじって、生活再建の夢を打ち砕くものがあるというのを痛感しましたが、こうした状況にもかかわらず、国は共同事業者であります1都5県に対して、今日まで中止の理由を一切示しておりません。前原大臣(前原誠司 国土交通大臣)からは、「ダムに代わる治水、利水対策を早急にまとめたい」と、「コンクリートを使わずに、山紫水明の国土をつくりたい」と、これは言葉としてきれいですけど、必要な事業はしなくちゃいけないと思いますし、無駄な事業は省いてよろしいが、過去にも、確かに、国がやった事業で、私から見れば、長良川の河口堰とか諫早湾の干拓なんていう、ほんとうに気でも狂ったかと思えた馬鹿げた公共事業もありましたけど、これは、現に、利根川水域の6都県、ごく最近、これ大事なことですけど、平成8年には1年間に117日、取水制限されたんです。これは、大変な、我々にとっての苦渋でありまして、仮にあのときに八ッ場ダムが完成したならば、117日の取水制限というのは、何と17日で済んでいたというデータもあります。

 繰り返して申しましたけども、ダムの建設にはいろいろな意見がありますが、東京にとって、今、もう欠かすことのできない小河内ダム、あれつくったときも、反対があった。それで、できたときも、あんなもんが役に立つかと。しょうがないダムだと。「小河内」を読み直すと、確かに「しょうがない」と読めるんで、そういう声もあったけど、その次の年に渇水がありまして、やっぱりあのダムつくっといてよかったということで、みんなほっとしたんですが、過去の治水の必要性、カスリーン台風(昭和22年に発生し、関東地方や東北地方に大きな被害をもたらした台風)のときに、いろんな被害が起こったようですけど、そんな昔とらなくても、逆に今度の利水ということでの、平成に入ってから、数年前の平成8年に、年に3分の1近く取水制限された。家庭も困ったでしょうけども、企業も困った。東京では、アサヒビールともう一つ大きなビール会社が、操業を少しトーンダウンするみたいなこともありましたし、渇水期に、学校のプールが使えずに子供たちも困ったと、そういう事例もありました。

 いずれにしろ、最初に公約があった、マニフェストがあった。マニフェストは、何もそんな新しい言葉じゃなくて、みんなびっくりしてるけども、あんなものは、戦後すぐ間もなくはやった、実存主義のときのはやり言葉で、久しぶりに復活したんだなと。もっと前から、マニフェストって言葉はありましたが、初めに言葉ありきということが、すべてを決めるんだったら、これは人間の信仰、神様、仏様を信じる信仰、それにのっとった宗教と同じですな。

 しかし、行政は、初めに言葉ありきじゃ済まないと思います。そういったものも、新政権は反省して公共事業っていうものを冷静に分析してプライオリティー(優先順位)をつけてもらいたいと思いますけども。まず大臣が国会会期前に各都県を回って、説明責任を果たすべきだと私は思います。

 視察当日は、こうした内容を盛り込んだ1都5県の知事による「共同声明」を発表しまして、八ッ場ダム建設中止の撤回を強く申し入れました。この中では、地元住民が安心して正月を迎えられるように12月28日までに、つまり、御用納めになるまでに、住民に納得の得られるよう、国が責任を持って対処することも求めております。国は、1都5県及び地元住民の切なる願いに、早急、かつ真摯にこたえるべきだと思います。

 もう一つ、あのダムがいかに不要であるということの証左として、反対派は、長く時間がかかり過ぎたという。これは、この間、テレビ見てたら、群馬出身の前の(自民党の)総務会長の笹川堯君が非常に暗示的なことを言ったけども、あの選挙区は、中選挙区のとき、あの地域は、自民党の金城湯池だったんです。あそこを出た議員っていうのはみんな有力で、福田赳夫、中曽根康弘、小渕恵三、3人とも総理大臣ですわ。もう1人の社会党の山口鶴男さんも、有力な社会党議員で、その状況の中で、何がこのプロジェクトの進展を遅らせたかというと、住民をおもんばかってのことなんでしょう、土地収用だけはやめろという圧力があったんです。それで、とにかく時間をかけても、お金で解決しろってことで、時間がいたずらにかかったけども。実情はそういうことで、有力な自民党の3人も総理になった人だから、この人たちが、どういう意向か知りませんが、土地収用というものをさせずに、違う方法でことを遂行したということで、時間がかかったという訳で、なるほどなという納得をしました。

2 環七地下調節池の効果について

 もう一つ、環七の地下の調節池の効果ですけども、この一方で、都民の生活、生命と財産を守るための、都の都なりの治水への取組ですけども、今月8日、2年ぶりに本土に上陸した台風18号が、日本各地で100名を超える死傷者を出すなど、大きな被害をもたらしましたが、東京での河川からの溢水(いっすい)は全くありませんでした。

 東京の降雨については、ほぼ全域で、総雨量100ミリ以上の降雨がありました。時間雨量、最大雨量で56ミリの豪雨を記録しましたが、溢水がなかったのは、護岸の整備とあわせて、都内全域にある28箇所の貯水池のうちで、20箇所で洪水を貯留した効果があったためであります。

 特に、環状7号線の地下調節池は、総貯留量の94%に当たる、約51万立方メートルを貯留して、神田川流域の浸水被害を未然に防止したことになります。

 これは、地下の池がなかったら、(パネル図で説明しながら)この、これが境界線ですけど、これだけの水が川からあふれて、家屋が浸水をしたと思うんですけども、そのおかげで、とにかく何とか事なきを得たわけであります。そういう点で、都は都なりに、洪水という災害対策も神経を払ってますけども、さらに、それを上回るどういう災害が起こるかわからない。東京の場合には、むしろ災害対策、治水というよりも、利水という点で、八ッ場のことも考える必要があるんじゃないかと、私は思ってます。

 口早ですけど、申し上げることはそれだけで、質問があったら、どうぞ。

質疑応答

【記者】今、お話の中で(前原)大臣が各県を回って、説明すべきというお話で…。

【知事】回らなくても、一堂に会してもいいですから、各県知事、こちらからも申し上げることがいっぱいありますし、現に、森田君(森田健作 千葉県知事)なんかは千葉県代表して、ハブ空港の問題で面会してるわけですから、役人には会わないらしいけど、それは地方自治体の長が、都民、県民代表して意見を申し上げるのは当然のことで、それは聞くべきだと私は思いますけども。

【記者】今の会見の中では、日程的に臨時国会の前には回ってというお話でしたけど、ちょっと日程的になかなか厳しいようですが。

【知事】そのほうが、政権のためにいいんじゃないかと思いますけど。振り上げたこぶし、どこに下ろしていいかわからなくなってるんじゃないかという気がしないでもないけども、つまり、初めに言葉ありきということでは、行政は国民の納得の得られるフルーツ(結果)を得ることはできないと思います。

【記者】ちょっと話それますけど、きょう珍しくパネルが2枚そばに出てきたんですけども…。
あれは何か、ほかの県の知事さんとかだと、わりとたまに使ってらっしゃるんですけど、知事はあまりそういうパネルを使っての説明というのは今までなかったと思うんですけど、これは何かあったんでしょうか。

【知事】いや、別にありませんけど。(笑)

【記者】ないですか。

【知事】事務局が用意したから。

【記者】そうですか。わかりました。

【知事】あるものは使っただけで。

【記者】なるほど。はい。わかりました。ありがとうございます。

【知事】はい、どうぞ。

【記者】私も今夜、竹芝桟橋を発って三宅島へ向かうわけなんですが、あしたとあさって、三宅島復興に向けての一環としてイベントが予定されております。知事もご出席されるということで、今回の三宅におけるイベントに、どのようにあってほしいか、そして現在の火山災害、噴火災害によるものなんですが、どういうふうになってほしいか、お考えをお聞かせいただければと思うんですが。

【知事】最初、非常に難しい道路事情なんですけど、あそこでむしろレースやったらいいんじゃないかと、素人なりに考えたら、メーカーが、それはもう危険だからだめだということで反対になりましたが、それからいろいろ、陰に陽に交渉しまして、メーカーも非常に協力的になって、今度も、財政の上でも援助してくれますが、私はあそこでオートバイ眺めても、島民の人は見飽きちゃうと思うので、東京から人が押しかけて、何かハラハラしてレースを見守る、そういうイベントにしないと、とてもじゃないけど長続きしないと思うので。その公道を使うことは問題ありますから、この間の爆発で半ばついえてしまった内輪山、外輪山のある間の峡谷、あそこをモトクロスというんでしょうか、そういう種類の自動2輪で、賞金をかけたレースをするということならば、非常にエキサイティングだし、住民にも迷惑かけずに済みますんで、そういう研究をちょっと、今度現場へ行って実際にあそこを走るだろう専門のライダーたちとも現場を見て、来年には、みんなに手に汗を握って見てもらうみたいなレースを、公道を使わずに、最初に考えたマン島のレースとはちょっと形が違ってくるかもしれませんけども、やりたいなと。それじゃないと、なかなか人も集まらないし、イベントも長続きしないんじゃないかと思います。

 賞金は、そんなにたくさん要らないらしくて、二輪のレースの賞金レースというのはめったにないらしいし、F1なんかのレースと違って、モトクロスですから、レース上のインフラの整備をそんなに金がかからずに、むしろ何かある意味じゃ、我々素人から見ると怖いなと思うような、そういうモトクロスのレースのほうが眺める者にとって刺激的で人気を呼ぶんじゃないかなと思ってます。

 ちょっと、現場で、村のほうとも、それから専門のライダーたちとも、意見聞いて考えようと思ってますけども。

【記者】雄山の上のほうの牧場がありましたが、これは今でも立入禁止になっておりますし、それから、ちょっと雲が低くなったりすると、もう視界が悪くて、前すらも見えないというようなことで。

 そういうところでのレースはなかなか開催するのは難しいかもしれないことと、ハラハラするようなことをちょっと望みたいというお話もありましたが、そうすると、事故がやっぱり起きやしないかという、事故は絶対に起こしてはならないというお考えもあろうかと思います。10メートルも15メートルもジャンプするようなことを見られるような、それはやっぱり楽しみがありますので、事故がなく、いかに成功させるか、大変なことかと思いますけども、どうでしょう。

【知事】そうですね。ただ、モトクロスもテレビで見ましたけども、日本だったか外国だったか、大きな野球のスタジアムに土敷いて走るみたいな、ちょっと考えられないようなことをやってるわけで、それに耐えるライダーもたくさんいるようですから、ましてその大自然の真ん中で、季節も大事だと思いますけども、11月、10月のように、霧のかからない、そういうわりと晴天の続く季節を選んで、考えた末に実現したいなと思ってます。

【記者】はい、ありがとうございます。

【知事】どうぞ。

【記者】関連の質問なんですが、三宅島なんですけれども、そうすると、ちょっと気が早いんですが、来年も支援を続けるというような感じなんでしょうか。

【知事】そうですね。違った形でレース展開することで、都が呼びかけて、賞金も集めたり、その他この他のことをして、新しい企画をもって臨まないと、私はなかなか長続きはしないし、長続きしなければ三宅島の復興のサポートになりませんから、そういうことです。
  はい、どうぞ。

【記者】はい。オリンピックのことで2点ほどお聞きしたいんですが、1つは招致費を150億もかけて、オリンピックが誘致できないということについては、やはりオリンピックの姿そのものがチェンジしていかなきゃいけない部分というのが相当あるんではないかと思うんです。そのあたりを1つお聞きしたいということと、もう1点は、招致費用の中で背広が1着20万ぐらいのやつが60着分つくられたという話も聞いております。それについては、どういうふうにお考えをお持ちでしょうか。

【知事】150億というのは大変なお金だと思います。ただ、その前に、東京も、議会と一緒になって財政を再建してこなかったら、こんなことはできないんですよ。私が就任したときは、言ってみると、貯金、積立金は200億を切ろうと、まさに土俵を割ろうとした幕内の力士みたいになったわけだけど、これ、みんなで頑張って、組合も賛成してくれまして、歳費を削り、人間も削って、1兆を超える積立金を積めるようになった中から4,000億のオリンピックのための積立金を積んでいるわけですけども、この1兆というお金の積立金の金利っていうのはどれぐらいだと思いますか。金利だけでも、オリンピックできると思ったからやったんですよ。準備を。

 ですから、やっぱり物事は、短絡的というか、局所局所で考えずに、全体の財政の中でよくとらえていただきたい。150億というのは確かに大きな金ですけども、しかし、するべくして使った中には、衣装の問題もあったでしょう。これは、私はよくわかりません。ただ、JOC(日本オリンピック委員会)が過去の事例に踏まえても、フランス(パリ)のデリゲーション(代表団)は結局失敗したのはコスチュームの問題もあったというアドバイザーからの、コンサルタントの意見もあったようですから、そういうことを考えたんでしょうけども。こちらは、初めてのことですから、そういった情報に準じてすべき支出をしたわけでありまして、それが高いか安いかは別にしても、無駄か無駄じゃないかは別にしても、内容ははっきりしてますから、これは。これからも、それを分析して評価もしていただきたいと思いますが、いずれにしろ、とにかく我々が努力した結果で、初めて胸張ってオリンピックの招致に乗り出したわけで、財政再建がなかったらこんなことできなかったんです。それだけは、あなたも、マクロな形で財政というのを考えて、こういうものに対する評価をしていただきたいと思います。

 はい。それじゃ。

(テキスト版文責 知事本局政策部政策課)