石原知事記者会見

平成21年10月16日更新

石原知事定例記者会見録

平成21(2009)年10月9日(金)
15:00〜15:39

知事冒頭発言

1 地方分権改革推進委員会の第3次勧告について

【知事】はい。冒頭、私から2つ。まず第1に、地方分権改革推進委員会の第3次勧告についてでありますけれども、昨日、10月8日、地方分権改革推進委員会から、地方の組織や仕事を細かく縛っている国の関与の見直しなどについての第3次勧告が出されました。国の義務付けや枠付けの廃止は、至極もっともなことでありまして、こんなものは早急に廃止すべきだと思います。ただし、今後も新たに地方への義務付けをしようとすることもあり得ますから、それを地方がどうきちっとチェックできるかが大事だと思います。

 今日も、臨時全国知事会がありますけれども、そこでどういう意見が出るかわかりませんが、こういう、変革といいましょうか、動乱の時代ですから、我々がやっぱり守るべき地方の権利、自治というものをきちっと増幅して維持していく努力をすべきだと思います。その意味では、今回の勧告では、「国と地方の協議の場」の法制化についても示されましたが、こういうものが、もっと早くできていれば、都としても、もっともっと「もの」が言えたと思います。

 特に、地方に財政的な負担を求めるようなものについては、必ず事前協議を守るべきだと思います。福田(康夫)内閣のころ、ご承知のように、暫定措置ということで、国が財政多端になったものだから、税収のいい地方自治体から法人事業税の分割基準を勝手に変えて、いわば子供の財布から親がお金を抜いてくみたいなことを決めた。都から一方的に3,000億もの財源を奪うことになりました。今度、政権が変わりましたけれども、福田時代の国会の記録を見ますと、民主党は従来からこの措置は自主財源を拡充する地方分権に逆行するという立場でありまして、平成20年の2月の衆議院本会議では、「地方法人税の一部国税化は断じて容認できるものではない」と、民主党の多くの議員が、反対の質問を行っております。

 本来なら、このような問題についても、都として主張できる場があれば、大いに主張したんですが、一方的に負担を強いられたわけで、中央官僚の全国支配の極端なあらわれだけれども、こんなものが分権の時代にまかり通るのかなと思って、弁護士に相談しましたが、負けるのは間違いないということなんで、それでも訴訟を起こそうかと思ったけども、3,000億奪われてたまるかという訴訟を起こしますと、印紙を3億円貼らなくちゃいけないそうで、それ考えてやめました。いずれにしろ、政府は国と地方の協議の場の法制化を早く実現してもらいたいと思ってます。

2 東京外かく環状道路事業の推進について

 次いで、補正予算絡みの東京外かく環状道路の推進についてですけれども、現在、新政権では、平成21年度補正(予算)の見直しをしておりますが、補正予算で事業化がされた外環道は、ひとり東京のためだけではなくて、これは、国全体に便益が及ぶ重要な道路です。前から申し上げてきたけど、これ、いわば東京は、ハブ・アンド・スポーク(拠点を軸に、自転車のスポークのように地方に放射線状に広がっているネットワークのこと)のハブ(拠点)になっているわけですから。東京に回り込んでる仕事の車、トラックも含めてですけれども、6割は、実は東京そのものに用事がなくて、バイパスがあれば、抜けて、千葉なり、東北、あるいは中央道方面にも行く車が、(バイパスが)ないために、東京へ紛れ込んでくるわけで、東京の致命的な欠点である渋滞が誘発されているわけですけれども。そういう点でも、これは国土交通省も、歴代、認知しておりまして、たびたび申してきましたけれども、コスト・アンド・ベネフィット(費用対便益)という方程式で計算しますと、日本で予定されている公共事業(※本年5月に整備計画に格上げされた4路線)の中で、一番指数の高い2.9という、全国でトップの事業の有効性が証明されているプロジェクトでありますから、まさに、東京だけじゃなしに、これ、日本全体にとって必要な道路なんです。そもそも日本の首都・東京ぐらいの先進国の大都市で、環状線がいまだにこれだけ不整備な街は、ほかにはないです。東京だけです。そういうことでも、従来、政府がこれを怠ってきたそのものに責任があると思いますけれども、扇さん(扇千景 元国土交通大臣)の時代に、凍結解除してもらって、推進を決めたんですが、その後、そういう政変で、この問題が棚上げになることを、国民のためにも私は恐れています。

 先日、超党派で構成される都議会東京外かく環状道路建設促進議員連盟から、「平成21年度の補正予算の満額執行」と「来年度の予算確保」について、国に要請していただいたことは、まことに、これは時機を得たものと、ありがたく思ってます。前原(誠司)国土交通大臣も外環道の必要性を十分理解して、国幹会議(国土開発幹線自動車道建設会議)で決まったものは尊重していくと発言されたと聞いております。なお、国と約束した外環道路の用地取得の協力については、都としては、役割を十分に果たしてまいります。

 また、来年度、ガソリン税などの暫定税率が廃止されることになれば、国全体で、約2.5兆円の減収となるわけで、外環道だけでなく、東京全体の道路整備に大きな影響も及ぼす可能性があると思います。これは、いろいろ論があるようですが、これからの経過を待ちたいと思いますけれども。私には、環境問題も含めて、社会全体のアクセスというロジスティック、モノの運搬、流通というものの便益ということ考えれば、この間も参りましたヨーロッパなども、非常に高い税率のガソリンを売っているわけですけれども、私は、ごくそれは妥当な姿ではないかという感じはしました。

 こんな懸念からも、私としても、「10年後の東京」計画の実現に向けて、外環道をはじめとした道路整備に必要な予算確保を、引き続き、国に強く求めていくつもりであります。

 私から申し上げることは以上。質問があったらどうぞ。

質疑応答

【記者】オリンピック招致のことで伺いたいんですけれども、改めまして、知事の責任と敗因について、どういうふうにお考えになっていらっしゃるでしょうか。

【知事】責任というのはどういうことですか。

【記者】150億円(※うち都の税金は100億円)の都税を使った責任という意味なんですけれども。

【知事】それは、しかし、勝敗は兵家の常で、勝負には勝った、負けたあるわけですから。負けたことは残念でありますが、私たちはその予算を有効に使って、最善のプレゼンテーションをしたと思っております。終わった後、私、ホテルに帰っていませんでしたが、セバスチャン・コー(2012年ロンドンオリンピック招致委員会委員長)という、ロンドンのオリンピックの代表の、非常に見識の高い、ある意味で厄介な男ですが、これがわざわざ来てくれまして、うちの事務総長(河野一郎 東京オリンピック・パラリンピック招致委員会事務総長)をつかまえて、「自分だけではなしに、これ、1票持っている人じゃない。そのオリンピック関係のIOC(国際オリンピック委員会)のほかの委員も同じことを言ってるが、東京の準備態勢、プレゼンテーションは最高だった」と、「しかるにこの結果になった」と言って、帰ってくれたそうで、私は非常にうれしく思ってます。

 150億円というのは、大層なお金だと聞かれますが、あなたは東京の財政というのは知ってますか。

【記者】規模ってことですか。

【知事】いえいえ、財政がどういうふうに変化してきたか。私が就任したときは、東京の貯金、積立金というのは200億円しかなかった。もうまさに土俵を割りそうで、東京は、国から援助をもらわなかったら立っていけない交付団体に転落する寸前でしたが、人員の整理をし、歳費をカットして、これは組合も議会も全面協力してくれまして、10年間で1兆を超す積立金をつくりました。その金利だけでも、これ、今、金利低い時代ですけども、数百億はあるでしょう。そして、これは、何もその、福祉とか教育とか、それは十分やってますから、人によって評価はあるかもしらないけれども、オリンピックであるとか、あるいは、これからやってくるだろう悪性のインフルエンザの猖獗(しょうけつ)、あるいは異常気象における災害、地震といった、行政の枠を外れたものに対する準備金なんです。それを使っただけでありまして、あなたがご存じかどうか、ロンドンの準備費に比べて、東京は高いじゃないかという。これは事情を知らない人間の言うことで、2016年のオリンピックから、ローザンヌで、今度のコペンハーゲンの前に、前回は、ロンドンに決まったときは、シンガポールで決まった。その前の6月に、かなり大がかりなプレゼンテーションをやらざるを得なくなった。これはやっぱり膨大な経費がかかるんです。そういったものを加えると、150億円使わざるを得なかった。

 しかし、これは我々が苦労してやってきた財政再建の1つの余剰の分でありまして、これやることで東京の財政は痛くもかゆくもありません。そういうものは、ちょっと冷静に眺めた上で、150億円の支出についての云々(うんぬん)をしてもらいたい。

 それから、敗因は、これはやっぱり、日本が総力戦ができなかったということです。それから、JOC(日本オリンピック委員会)にとっても、まして東京にとっても初めての経験でありますが、私たちにしてみれば、やっぱりIOCが言ってること、JOCの取り次いでくること、そのまま信じて事を遂行せざるを得ない。だから、そういう意味では、IOCが言った幾つかの条件を完全に東京は満たしたと思います。半径8キロ以内に、9割を超す競技場の施設があるというコンパクトな条件、これは選手にとっての最大の条件です。それから、治安。ミュンヘンのようなことがあっては困るから、この治安は、今、ある意味で、いろんな事件あっても、なお、世界で一番安全な国とされている。食事も豊富だし、ミシュランが一番高い評価している。それから、ホスピタリティー(心のこもったもてなし)については、はかりがあるわけじゃ、わかりませんが、それも、私は1人、議員のころから外人の記者クラブのメンバーでいますけども、日本にやってきて1年ぐらいたった外国の駐在員(記者)に、日本はどうかと言ったら、みんな褒めてくれる。ご存じかどうか知らないが、「モノクル」という、イギリスで出てる、最も権威のある都市問題の雑誌は、去年もことしも、最も世界で住みやすい都市の第3位に東京をそうやって、これはコペンハーゲンやミュンヘンに比べてですが、1番、2番のそういう街は、かなり小さな街でして、東京のようなメガロポリス(巨大都市)で、これだけの条件を備えてる街はないと。この間も、その編集長が来て、実質的には、大都市ということだったら東京が1番ですよと言ってくれました。そういう整備の上で私たち、このオリンピックに臨んだんですがね。ただやっぱり、この選考というものは、私たちが考えたように、IOCが言っている選手のための条件整備だけでは、判定が下ったとは思われない。まさにセバスチャン・コーがやってきて、肩をたたいて、肩をすくめて帰っていったそうだけど、私が体験した限りでは、かっての自民党の総裁選挙みたいなものだった。日本は、その中で非常に孤独な戦いをしたと思います。

 それから、何かこれが問題になったかどうか知らんけど、ブラジルの大統領がやってきて、投票の2日前ですか、昼飯会か晩飯会やって、そこでブラジルは、20億の拠金を、参加してる国のスポーツ振興に拠出する準備があると言った。これは、ファウルじゃないんですよ。彼としては当然のことを言ったんでしょう。実際、また、するでしょう。しかし、日本は、それはできなかった。その余裕もなかった。また、そういうことが可能だということも知ってか知らないか知りませんが、JOCからもそういう要請なかったし、鳩山(由紀夫)総理も来ていただきましたが、鳩山さんにそういうことをぜひ言ってもらいたいというオファーもJOCからありませんでした。そういう点で、私たちは、やっぱり総力戦をすることができなかったという恨みはあると思います。そういうことです。

 はい、ほかにどうぞ。

【記者】新型インフルエンザの件なんですけれども、ワクチン接種が今月下旬にも始まりますが、国は低所得者への負担軽減ということで地方にも負担を求めておりますが、国は今日、特別交付税も使わないということで、あくまで地方で財源を確保してくれということですが、この点について、いかがお考えでしょうか。

【知事】人の命のことですから、その新しいワクチンがどれだけ効力あるかわからんけども、これはやっぱり、いずれにしろ、被害を防ぐためにも、地方は地方なりに努力しなくちゃいけないと思います。ただ、これやっぱり、国家全体の問題だと思うので、全部地方に財政的に物事を押しつけるというのは、いかがなものかと思います。しかし、東京は、そのワクチンじゃありませんけど、タミフルが足りなくちゃいけないから、かなりお金を出して、これも無駄と言う人がいるかもしらんけど、400万人分のタミフルは準備(※現在、タミフルとリレンザをあわせて400万人分を備蓄)してますし、また、それを増やそうとしてます。ただ、ワクチンはもうできたんですか、ほんとに今度のためのワクチン。

【記者】順次、出荷が始まってると。

【知事】何人分ぐらいで、いつまでに供給されるの?

【記者】きょう、118万回分と。

【知事】それで、かかる人が若い年代に限られてるから、やっぱり日本の将来を託す彼らに被害があっちゃいけないんで、これは、東京としても、地方自治体によって条件は違うでしょう。東京は、できるだけのことを一生懸命やります。ただ、国がとにかく地方でやれと言い切るということは、私はちょっと違うと思う、それは。どうぞ。

【記者】2つ質問あります。先日、日本サッカー協会が、2018年と2022年のワールドカップの招致をするという会見を開いたんですが、つい先日なんですが、その際に、東京オリンピックの誘致が前提として準備してきたということもありまして、今回の招致の失敗について、これからやっていくに当たって、1つの懸念材料になるというようなことを会見で話したみたいなんですが、それについて、受けとめといいますか。

【知事】しかし、規模が違いますよ、オリンピック。FIFA(国際サッカー連盟)というのは、その1つの所属団体でしかないんでね。サッカー連盟が決めるということになれば、日本の国力、条件をもってすれば、有効な戦いできると思うし、残念ながらオリンピックは招致に失敗しましたけども、それが決定的なマイナス要因になるとは私は思いません。

【記者】じゃあ、頑張ってほしいという…。

【知事】それは頑張ってほしいと思います。

【記者】もう1点なんですが、知事が帰国してからの会見で、オリンピックの選考に当たって政治的な動きがあったといった話をされて、アフリカの票がリオ…、先ほどもおっしゃった話なんですけども、裏取引があったのではないかといった話で…。

【知事】いや、裏じゃないでしょう。だって、ブラジルの大統領が、正面切って言ったんだから。これは私たち、裏と呼べないでしょう、それは。

【記者】何らかの取引があったということで、一時、リオデジャネイロの招致委員会が、東京に対しての抗議文をIOCに出すといった話もあったんですが…。

【知事】抗議されるもされないも、だって実際のことで、私はそれを悪いと言ってるわけじゃないんだから。ただ日本ができなかっただけのことでしてね。スペインなんかだってやっぱり国王が来て、推薦の演説だけじゃなしに何をされたかよくわかりませんが、残念ながら、日本はそういう意味での総力戦はできなかった。それから、言いたいのは、外務省なんかはやっぱり、JICA(国際協力機構)とか何か、いろんな援助をアフリカにしてるんですよ。これはかなりなものですよ。そういったものを、やっぱりこういう、オリンピックのビディングという、イベント招致の運動の中で、外務省はこれをもっと有効に使うことはできたと思うんだけども、そういう動きはちょっと遅れたというか、なかなか、日本人にとっては苦手なのか知りませんけど、これはこれ、あれはあれで、相変わらずの縦割り行政で、そういったものを総合的に、重層的に束ねて戦うということはなかった。やっぱり、これは、いい経験したと思います。これは、ほんとに何十年ぶりのことですから、今のJOCにとっても、まして東京にとって初めてのことでして、かつての、東京の記録が残ってるわけでもないし、世界の情勢も違いますけども、そういう状況の中で、一種の処女体験として、手さぐりでやった。その結果、私はやっぱりいろんなものを得たと思います。その結果失敗に終わった、それにかかった経費も、かなりのものといえば、かなりのものだ。そういうこともあらんと思うから、こっちは一生懸命になって、議会も一緒になって財政再建やってきたんで、その余剰の部分で、こういう夢を見ようということでやったのは私は決して間違いじゃないと思うし、それを、ただ支出というものが無駄に終わったという形で咎(とが)めれば、日本中でこれからオリンピック言い出す国は、街はないよ。日本は、そのまま何かしおったれていくよ、スポーツのあれでも。それでいいのかね。僕は、自分が出してる新聞のコラムに書きました。来週の月曜に出るけど。やっぱり世界で失笑を買いながら、そのことで夢を持てない民族、国家の行く末というのは知れてるね。はい、どうぞ。

【記者】今の話の、リオデジャネイロの件の続きなんですけれども、IOCで、猪谷(千春)副会長が、知事の発言をめぐって、IOCのロゲ会長やリオデジャネイロの招致委員の幹部のほうに知事の発言を謝罪したということなんですけど、知事はその受けとめを…。

【知事】知らない、僕は。彼(猪谷氏)に頼んだこともないし。謝罪するったって僕はほんとのこと言っただけのことで、そのブラジルの大統領が、20億の支出をするといったことが、これ、ガセネタならあれだけど、実際やったんでしょう。私は、それを咎めてるわけじゃない。日本はそういうことはできなかったというだけのことですから。やっぱり総力戦やったわけじゃないですか、ブラジルは。それをひねって、とられることはないと思う。はい。どうぞ。

【記者】さっきの、サッカーのワールドカップの関係なんですけれども、招致委員会のほうは、メインスタジアムを新しくつくりたいという意向を示しているようなんですけれども、その1つの候補地として、東京オリンピックのときのメインスタジアムの晴海の会場というのも挙がってくると思われるんですが、それについて、東京都として協力する考えとか、その辺についてはいかがでしょう。

【知事】まだそういうオファーは受けてませんから。選手村にするようなところ、それからメインスタジアムをつくるつもりだったあの土地をやっぱりこれから有効に使っていかなくちゃいけませんから。特に、今神宮にあるあのスタジアムも、少なくともオリンピックの規格に合わないものになっちゃった。それからサッカーのスタジアムにしても、トラックがあるから、隣接感がなくて、サッカーのファンが本気で興奮するようなこう、物理的な条件を整えてないんだね。だから、仮にオリンピックが実現したら、神宮のスタジアムは改造して、まさに、サッカーの専用のグラウンドにするという、何か、うわさもありましたけども、それはこれからの話です。サッカー協会が何をするかということ、それの相談乗るということ。どうぞ。

【記者】東京都議会の民主党の大沢(昇)幹事長がですね、先ほどの取材で、「新銀行東京の役割はもう終わったと思っているので、店じまい、早期撤退を求めていく、自民、公明の賛成多数で行われた追加出資4,000億円を棄損させないためにも早目に撤退していくことを求めたい」というようなことを発言したんですが。

【知事】追資(追加出資)は4,000億じゃない。400億です。

【記者】あ、400。失礼いたしました。「400億を棄損させないためにも早く撤退していくことを求めたいと。そのかわりに、東京都は制度融資のような政策の幅を広げていくべきだ」というような発言をしたんですが、それに対して都知事はどのような見解を…。

【知事】全く間違ってるね。現状というのを踏まえなくて。とにかく今、四半期の黒字を出して、今年度の単年黒字を出そうと思って努力してる、やっと立ち直った銀行を整理するたってどうするんですか、これ。あなた、どうなるの、それ。大沢君はどういうふうに言ったの?つまりつぶすということでしょう。

【記者】はい。早期撤退をしたいと。

【知事】早期撤退って、どれぐらいの期間でどうやって撤退するんですか。タイムスパンもわからずに、早期ってのは何年間ぐらいかかってやるんですか。

【記者】具体的な明言はなかったんですが。

【知事】ですから、それも大事なことなのよね。やっぱり、1万5,000件の小零細企業に貸してて、家族、従業員入れたら、10万人を超す人たちが路頭に迷うわけでしょう、この時代。そのときに、しかも、預金者には、それを返却するだけじゃない、金利払わなくちゃいけない、そんなこんなでかかるお金ったらべらぼうなもんですよ。そういうことも考えずに、そのどういうのかな、早期撤退って、つまり不安に駆られてか何か知らんけども、そういう論は、もうさんざん出尽くしたし、議会の配分が違ってるときでしたけども、つまり400億の追資をいただいて、それを踏まえて銀行が再建にいそしんで、努力して、血の出る思いをして、やっと黒字を出すようになった。この時期に、その銀行をべらぼうな支出をかけて整理して何になるんですか。あなたも質問するんだったらそういうこと考えてからね、学校じゃないんだ、ここは。はい。

【記者】ちょっとオリンピックの発言の真意というか、確認だけさせてください。先ほどからリオデジャネイロの抗議云々という話が出ていまして、今知事のお話ですと、帰国時の会見で発言されたその意味は、その、つまり、ブラジルとかフランスのことを批判するというトーンではなく、日本が…。

【知事】フランスの場合は、オリンピックは平和と協調を目指しているそのイベントの中で、大統領がいって、戦争になれば人殺しに使う、ジェット戦闘機を買ってくれたら支持をする、これは、ちょっと論外というか、滑稽(こっけい)というか、まあ、やっぱり、だれもそれは本気に取り合いませんよ。だけど、ブラジルの大統領は、大統領の権限で、国費を使って、それだけの援助をするから頼むぞというのは、これはやっぱり総合、総戦力戦としては当然のことだと思うし、やられたなという感じしました、僕はほんとに。

【記者】つまり、何ていうんですか、それがいろいろ報道を通じてリオの抗議につながるというとすれば、それは要するに誤解であるという意味ですか。

【知事】ああ、そうです。誤解というか、私の言ったことを正しく理解されてないと思います。

【記者】その上で質問なんですけども、東京が次いつ手を挙げるかのかみたいな話も、焦点になるかと思うんですが、その総力戦という話ですけれども、もし次に、東京が出るとした場合に、もっとこう、事前に、国あるいはJOCと一緒に、例えば、今回であれば東京から頼んで総理に来てもらったり、頼んで国会決議をつけてもらったりと、ちょっと、お願いベースの動きがたくさんあったと思うんですけども、そういう戦い方じゃなく、もっと事前に一緒になってやるような戦い、体制をつくるべきじゃないかなと。

【知事】まさにそうです。それは、この準備期間、長いようで短かったと思うけど、その間、日本の政治も変動してきましたし、主権者だった自民党も地に足がついてなかった。それで、ちょうど大事な時期に政権の交代があった云々がありまして、なかなか、要するに総力戦というものを編成していく余裕がなかったと思いますし、それからやっぱり、日本人全体の意識の問題も、私たちも努力してキャンペーンしてきたら、投票のあった頃には81%という形になってましたけども、それまでは、日本人もぜいたくになれて、やるならやったらいいじゃないかと、何かこう、半分よそを向いたような感じで、それは残念だったと思います。

 ただ、だんだん意識が盛り上がったきたのは、手ごたえとして感じてましたが、やっぱりこういった1回の挫折というもので、みんながまた発奮して、よし、もっと大きな夢を見ようという気持ちになってくれれば、政権の姿が何であろうと、国全体で、よし、やろうじゃないかと、日本のプレゼンテーションというのを世界にしようと、その機会にオリンピックやろうということになってくれると私は思いますけども。これはやっぱり、それが、その次のオリンピック、次の次、ロンドンの次のオリンピックになるかならないか、その先になるかということは、これ、わかりません。やっぱり日本人の意識の流れというか、国の変動した先のあり方、そういったものが、こう、国民全体が1つにまとまる媒体としての、オリンピックを考えるか考えないか、これはもう時間の推移を見なきゃわからんと思いますけど、いずれにしろ、総力戦をやらなかったらだめです。どうぞ。

【記者】コペンハーゲンから戻られて初めての定例記者会見という形がこの席になるわけなんですが、お帰りになったときに会見で、この教訓は絶対残さなければいけない、今後のためにも。そしてつまびらかに会計報告などを、速やかに、やっぱり発表しなければいけないと、こうおっしゃってました。その報告というのは、今度の都議会定例会とか、そういった期間、いつごろをお考えになっているのかという点が1つと、もう1つは、先ほど、やっぱり余剰の部分で夢を見ようと思ったということで、若者たちは、やっぱり結果的に達成感を得られるのは、東京に招致ができたことが、きっと達成感を得られたことになったかもしれない。そういう点では今回はもう、実に残念な結果だったんですが、このまま終わってしまうと、みんなが夢を見た、見ようと思った、若者たちが、やっぱりこう、何となく尻つぼみになってしまいますので、このまんまでは終わらないということですよね。

【知事】終えたくないですな。だからこの先、日本にも東京にも、その、どんな強力なリーダーが出てくるかわからないけど、そういう人たちが力を合わせて、国も東京も一緒になって、挙国体制というと大げさになるけど、総力戦で、日本に、日本のどっかの街にオリンピック引っ張ってこようじゃないかということで、IOCに出向いてるJOCのスタッフも、人材を選んで、もっとこう、プッシングな(押しの強い)人間を送り込んでやらないと、私はなかなか難しいと思う。そういう人はいっぱいいますよ、もっともっと若い世代にね。

【記者】報告の時期というのは。

【知事】それは、要請があったらいつでもいたします。ただ、議会などで、担当の局長が数字挙げて、あげつらって答弁をするだけじゃなくて、大事な問題って、これは次に響いていく問題ですから、外部監査という方法もありますから、そういう人たちに、この次の外部監査の主題の1つにしてもらって、綿密に目を通していただくことも、私は万民を納得させる有効なすべだと思います。どうぞ。

【記者】オリンピックが招致できなかったということで、逆に晴海とかの土地が空くということになるんですけれども、今現在、豊洲のほうの移転を考えていらっしゃる、(築地)卸売市場の移転先として考えたりということは、お考えでしょうか。

【知事】これは、そんなこともあるかなと思ったけど、ちょっと、面積が狭いみたいです。ただ、私の前の前の代からこの問題、20年かかってやってきたことで、とにかく、いかにも今の築地は狭くて、古くて、危険で、あんまり清潔とも言えない。とにかく、生ものを運ぶ途中のアクセスが完全に冷凍が効かないところがありますから。ですから、それを完璧にするために豊洲ということは、結論になったんでしょうけど、あの問題が出てきて、こっちも腰抜かしたわけだけども、考えてみるとパリとかマドリードなんかも、首都ではあるけれども、海なんか全然ないんですよ。それで、環状線というのは、完備していれば、こう言うとまた物議醸すかもしれないけど、私は内陸に置いたっていいんじゃないかと。それだけは言わないでくれということで、口をそれっきりつぐんだんだけど、特にインターネットがこれだけ活発に作動する時代になって、あそこで大量の魚を運び込んで、生鮮食品を運び込んで、競売にかけるという、そういうシステムというのも、もっと合理化されて、集約されることもできるんじゃないかなという気がしないでもないです。これからの問題でしょう。それは議会で討論したらいいと思います。

 ただやっぱり豊洲に限って言っても、日本の先端技術というものは信じなかったら、これ、世界が評価してるものですから、そのエキスパート(専門家)たちが画期的な案を出してくれて、私たちの予想を裏切って、予定したよりもはるかに安価な移転ができるということも、そういう技術というものについても、やっぱり、専門家を含めた検討というのを議会がしてもらったらと思います。

【記者】わかりました。

【知事】はい、それじゃ。どうぞ。

【記者】オリンピック招致に関連しまして、今、知事のほうから、国を挙げての招致に持ち込めなかったというお話があったんですけど、そのことに関して1点、ちょっと確認させていただきたいんですけど、7月に、招致委員会の幹部が、宮内庁のほうに皇太子ご夫妻のIOC総会への参加を要請していた件で、知事の出発直前の会見では、まだ希望を持っているというようなお話があったと思うんですが、最終的に、今後、やっぱり国を挙げての招致ということになると、どうしても皇室のご協力というのは、話に挙がってくるかと思うんですが、最終的に今回は、宮内庁からはどういうような回答があったものだったのでしょうか。

【知事】宮内庁も、その微妙な判断を強いられたんだと思います。やっぱり政権が変わる、まさにそのプロセスの間でしたから。これはやっぱり、時の総理大臣、政府から正式な依頼があって、初めて宮内庁がそれを皇太子殿下に取り次ぐという手続きのようでして、それにしてはちょっと時間がショートノーティス(短期間)過ぎた。皇太子殿下にも、ほかのご予定が入ってしまったようでして、残念ながら実現しませんでしたけども、やっぱりヨーロッパというのは、そのモナーキー、皇族というのを非常に斟酌(しんしゃく)しますし、それは皇太子殿下にも、お出ましいただいてたら、もっと効果があったかなと思いますけど、その前にやっぱり、皇太子殿下においでいただくならいただくなりの、それをこう複合的に束ねていく、戦略、戦術というものを構えませんと、私はおぼつかないと、今度改めて思いました。

 だから、次の時代の、どの都市が、だれが首相で、オリンピックの招致ビディングに乗り出すかわかりませんけど、そのとき、私が生きていれば、私の体験、吐露して、招致陣は万全な体制をひいて迎えればなという気がします。

【記者】そうすると、今回の皇室の対応については、知事としては、この政治情勢等をかんがみて、仕方がなかったのかなという…。

【知事】そうですね。仕方がなかったと思います。はい、それじゃ。

(テキスト版文責 知事本局政策部政策課)