石原知事記者会見

平成21年9月29日更新

石原知事定例記者会見録

平成21(2009)年9月18日(金)
14:58〜15:21

知事冒頭発言

1 小笠原諸島の世界自然遺産登録について

【知事】冒頭、2つ、私から申し上げます。

 最初は、小笠原諸島の世界自然遺産登録でありますが、この登録に向けて、ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)に正式にエントリーをします。

 小笠原諸島は海洋プレートの沈み込みと火山活動によって形成された島々が、発生の初期段階から順々に完成させて、これは私も知らなかったんですけども、上のほうの聟島(むこじま)列島から、兄島、父島へ来て、母島列島まで、だんだんだんだんできていったんですね。それで、その発生の初期段階から順に視察ができる、海洋プレートが火山活動をどういうふうに増幅していったかってよくわかる世界で唯一の場所でして、地質学的にも非常に貴重なところです。

 特にボニナイトと呼ばれる、マグマが固まった岩石がまとまって露出しているのも、この世界で小笠原諸島だけだそうでありまして、また、このいわゆる大洋(オーシャン)の中にある島で、1度も大陸と地続きになったことのない島なもんですから、独自の進化を遂げてきた生態系や多くの固有動植物が見られる、非常に貴重なところです。

 それで、このたび固有植物に危害を加えるノヤギを、これ、どんどん増えていくんですけれども、兄島で根絶するなど、貴重な自然を保全する取組が整ったことから、世界遺産登録の機が熟したと判断して手続きに入りました。東京が誇る小笠原の自然を人類共通の貴重な遺産として広く世界にアピールしていきたいと思ってます。

 このボニナイトといいますのは、ボニンアイランドという(小笠原諸島の)英語名からきたんだそうですが、そもそも、その外国人が、あそこに来たのは捕鯨のために来たアメリカ人でしょうけども、何であの島をボニンアイランドというか、私知らなかったんですが、日本人が、あそこ無人島、無人、無人と言っている無人を、彼らが聞き間違えて、ボニンと呼ぶようになって、それがさらに岩の名前に転換されたということのようであります。

2 「開催決定応援大パレード」について

 それから、もう一つ、いよいよオリンピックの招致運動の最後の正念場になりましたが、連休の最終日となる23日に、正午から4時まで、原宿、表参道で東京の開催決定を応援する大パレードを行います。吹奏楽、チアリーディング、地元のおみこしなどのほか、日本全国から東京招致を応援する人々が参加してくださいまして、よさこいやエイサーなど、日本の祭りのパフォーマンスの予定をしております。私も参加いたしますが、都民の皆さんもぜひ会場に足を運んで、東京の熱意を世界に向けて大いにアピールしていただきたいと思います。

 私から申し上げるのは以上であります。質問があったらどうぞ。

質疑応答

【記者】政権交代に伴って、ちょっと出てきたお話なんですが、農林水産大臣に就任した赤松(広隆)さんが、安全性が確認されなければ、築地(市場)のあの豊洲移転は許可しないということをおっしゃっておりまして、前任の石破(茂)さんも、同じような趣旨のことをおっしゃってたんですが、今回の場合、ちょっと赤松さん、個人的な思いもやや加わってるようで。

【知事】個人的な思い、というのはどういうの?

【記者】個人的な思いがというのをちょっと会見の中でおっしゃっているんで、その詳しいところはわかりませんが、ややハードルが上がったように思うんですけれども、知事としてはどのようにお考えですか。

【知事】そうは思いません。これ、公式な手続きからいったって、農水省(農林水産省)の許可がおりなかったら、ああいうものの移転はできませんから。

 ただ、安全確保するために、こちらも繰り返して申し上げてるけど、あそこでああいう基準値を数万倍上回る数値が出たとか、仰天したわけですよ。で、いろいろ、あちこちの意見を聞いたら、日本の技術ってのはかなり進んで、いろんな経験重ねてるんでね。まあ、海外でもそういう経験をした会社もあるみたいで、そういう技術を、たしか200ぐらい、とにかく提供してもらって、それで首都大学東京の原島(文雄)学長を座長とする、第一線の専門家に討議というか審査してもらいまして、これならいいだろうと、間違いないという技術を選んで、それなら対処できるということなんですから。だからその、赤松大臣が現場を視察するということなんで、その前に、ちゃんとその資料を届けて、レジュメも要するに添えて、それを精読していただきたいと。政治家ですから技術のことわからないなら、しかるべき専門家にリファー(照会)して、原島リポートなるものを、真価というものを問うた上で判断してもらいたいと思います。

 もともと、移るつもりでいたんだから。ところがああいうもんが出てきて、こちらも腰抜かして、大変だということで。それはだれが考えたって数万倍の数値っていうのは異常ですよ。で、これをどう処理するかということを、日本の先端技術を使えばできるということで、こちらが判断したわけですから、都議会でもこれが問題になるでしょうけど、ぜひ、そういったものを、その専門家の意見を添えて、審査してもらいたいということです。

 どうぞ。

【記者】昨日、五輪招致の出陣式で、鳩山(由紀夫)首相から、かなり意欲的かなと思われるようなメッセージ、招致のために全力を尽くしたい、というようなメッセージがありましたが、あのメッセージについて、知事はどう思われてますでしょうか。

【知事】いや、これからやっぱり詰めていかなくちゃいうことですから。ただ、この間もブラッターさん(ジョセフ・ゼップ・ブラッター 国際サッカー連盟会長)の叙勲のお祝いの式で、新総理になる前です。鳩山さんと立ち話で長いこと話しました、いろんな問題。彼は非常にそういうところクールで、意欲的で、私は非常に強い感触を得ました。

【記者】一方で、ライバル都市のシカゴでは、オバマ大統領がどうもコペンハーゲンに行かないということで、代わりにミシェル夫人が行かれると。で、今、鳩山首相の奥さん、幸夫人が海外からはオカルトな言動で注目を集めてまして、そういう意味ではご夫婦そろって、連れていくことで、例えば、招致にプラスになるのか、マイナスになるのか、幸夫人に対する海外メディアの…。

【知事】それは僕は、ご夫人の言動詳しく知りませんが、UFOに乗って金星行ったなんて、冗談でおもしろいじゃないの。僕はそれは、ウイット(機知)でとらえればいいんで、本気で行ったか行かないかなんて、ありっこないんだ、そんなものは。彼女のイマジネーション(想像力)の問題なんだからさ。僕はおもしろい人がファーストレディーになったなと思ってるけれど。私も小説家ですから。はい。

【記者】あ、すいません。もう一つ、きのうは、酒井法子被告、のりピーという、割と…。

【知事】僕知らないんだ。もう。

【記者】というお話でしたが。

【知事】若い人のこと、若いタレント知らないんだ。この間、ちょっといい男がいたんで、「君はキムタクか」と言ったら、「とんでもない、私じゃございません」と言われたんだけど。

【記者】最近、覚せい剤に限らず、大麻だとか合成麻薬だとか、大学生、都内の若い人たちにも、随分と蔓延していて、ある意味、芸能人ということで著名なのりピーが逮捕されて、こういうことになっていることで、1つその、薬物犯罪の歯どめになるというか、話題が増しているところなんですが。

【知事】いや、これは、この間の本会議でも幾つか質問出ましたが、やっぱり、つまり毒性ってのが立証されてる限り、自分の人生考えたって、そういうものは使うべきじゃないと思いますよ。

 ただ、いつかも渋谷を視察したときに、そのうちばれちゃって、何か大名行列になって途中でやめたんだけど、知らん顔してのぞいてたって、大道で、何か合成した薬を売ってるんだな。それで売ってるやつが、「これ、来週、来月になったら違法になるよ。買うなら今だよ」って言い方してるわけ。ああいうものは、どういうふうに簡単につくれるか知りませんが、サリンだって、そういう情報があったらすぐつくれる、爆発物も簡単につくれる、そういう時代になって、特に、ああいうかなりの値段で売れる毒性のある薬をどういう人がつくってるか知らないけど、素人でも簡単につくるような時代になったんでしょう。これはやっぱり怖いね。やっぱり人間は弱くなったのかな。ああいうものに依存するっていうのは。

 しかし、お酒だって一種の、人に言わせるとあれは毒だという人もいるし、たばこもそういうことかもしらないけども、単なる中毒(アディクション)にとどまらずに、精神までがむしばまれていくというような薬というものは絶対に使用すべきじゃないと思うし、その怖さというものを、やっぱり知らしめるために、もうちょっとこう印象にとまる劇的な情報の提供というんでしょうか、警告というものが必要なんじゃないでしょうか。

 中国なんかは、ああいうものを扱った人の罪、非常に重いでしょう。シンガポールなんかでも(一定量以上の)麻薬持ったら死刑だよ。それはいいか悪いかわからないけども、そこまで行き過ぎかどうか。

 ただ、他人の人生を損なって、その利益で要するに食っていくというのは、そういうのはやっぱり人間として許されないと思うし、刑法(法律)の問題もあるんでしょうけども、強い警告(ウォーニング)というのはやっぱり必要だと思う。試しにやってみたらずるずるといっちゃうんだということを、もうちょっと徹底して教えるというのでしょうか、警告する必要があるんじゃないでしょうかな。

 どうぞ。

【記者】政権交代に関連して改めてお尋ねします。総理、国土交通大臣ともに、八ツ場ダムの事業中止について改めて言及されてますが、総理、大臣ともに発言されたことを受けて、今の知事のご所見、改めてお願いします。あと、今後の国との交渉や協議について、流域の他県との連携についてどうお考えか、教えてください。

【知事】私は基本的に反対に反対。つまり、あそこまでできたものを、事実上、要するに、現場へ行けばもっとはっきりわかるでしょうけど、10月の末に関東知事会ありますので、その前に、関係の5都県、つまり東京と埼玉、千葉、群馬、栃木の知事さんたちと一緒に、やっぱり現場をもう一回見て、そこで意見統合していきたいと思っています。

  どうぞ。

【記者】新政権になって、補正予算についても今日、国の補正予算ですが、一時、執行を見合わせるようにという指示が出ているんですが、それに伴って、東京外環道などは影響を受けることになると思うんですが、そちらについてはどのように。

【知事】ですから、補正をどういうふうに修正するか、それ具体的に結論が出なければ、今はにわかに言えないことですが。やっぱり社会工学的に見ても、世界の首都というものと比べてみて、東京の唯一というか、幾つか欠点もあるかもしらんけども、最大の致命の欠点というのはやっぱり渋滞ですよ。その非能率ですよ。その経済性の欠如ですよ。

 そういったものを指数で計算すれば、幾つでしたかな、ちょっと忘れましたけども、コスト・アンド・ベネフィット(費用対便益)の指数が(本年5月に整備計画に格上げされた4路線の中で)一番高い、工学的に言って需要の高いプロジェクトですから。これは、私はやっぱりこれだけ集中、集積の進んだ東京の発展、つまりひいては国の発展のために不可欠のプロジェクトだと思います。

 それを、新政権がどういうふうに勘案して評価するかわかりませんけども、とにかく、正確な数値はちょっと失念しましたが、6割強の車が必要なしに東京(都心)へ紛れ込んでくるわけでしょう。外環ができたら、みんなバイパスしていくわけですから。

 そういった点でも、私は都内の環境問題ということだけじゃなくて、国全体の能率ということから言っても、このプロジェクトはやっぱり、今まで凍結してきてしっ放しにしてきた主に自民党の責任だと思います。それを新政権がどう評価してどう修正するか、見物でしょうけども、具体的な指針が示されてからまたコメントします。

【記者】八ツ場ダムの話にちょっと戻りますが、前原(誠司)大臣は、23日に八ツ場のほうに行かれるということですが、知事、前原国交大臣とですね、八ツ場や外環道、いろいろあると思うんですが、直接お話しするようなご予定とか、あるいは、お考えなんていうのはいかがでしょうか。

【知事】いや、ですから、私一人じゃなくて、関係5都県の知事と一緒に見て、それで認識というものを統一して、国に文句言う、別にそんな拙速にするものじゃないと思いますから。

 公約というのは大事かもしれないけど、しかし、まあ、要するに勢いというものがあって、これを修正するのがやっぱり一つの政治の見識だと私は思います。現地の人のあの痛ましい声見ても、しかも7割もできてるプロジェクトをここでやめるということの持つ意味合いというのは、私はちょっと感覚的に理解できないから。それだけじゃないんで、現場見て、直接かかわりのある5つの知事さんとで話し合って決めます。

 はい、どうぞ。

【記者】個別の新政権に対する案件の質問あったと思うんですけど、全体としてかなり急いで改革を進めているような民主党政権の印象があるんですけれども、この全般の立て続けにいろんな政策を打ち出している鳩山内閣について、知事のご所見をお聞きしたいんですが。

【知事】僕は、基本的に非常に期待してるのがあるんです。それは、やっぱり官僚の支配というものは、前から申し上げているけど、司馬遼太郎さんもしげしげ言ったけども、太政官制度のころから変わってないわけ。そういう意味じゃ、日本は、ある意味で成功した社会主義の国だったと思いますよ、官僚統制のね。

 しかし、これはもうやっぱり時代にそぐわないし、非常に能率が悪くなってきたし。年金の問題一つ見たってそうじゃないですか。これは、何だかんだ言っても、威勢のいい厚生(労働)大臣もいたけど、結局、めどがつかずに、今度、長妻君(長妻昭 厚生労働大臣)が引き受けるわけでしょう。

 これ、僕は、ヨーロッパの先進国、例えば、フランスとかドイツとかイギリスなんかだったら、この問題がこうやって露呈してきたら、もう政治の党派を超えた市民運動というのかな、ものすごい大きなデモが起こったと思う。社会全体がパニックになったと。日本人はそこんとこ鈍感なのかおとなしいのか、我慢強いのか、コメントを求められれば、お年寄りが一人一人愚痴は言われるけど、これはやっぱり、西欧の先進国だったらこんなことじゃ済まなかったと思いますよ。ほとんどめどついてないんだから。

 僕は、ある意味じゃ、自民党は役人に滅ぼされたと思う。それをまた受けて是としてきた官僚出身の政治家も多過ぎるし。

 だから、私は、官僚の、中央官僚のきつい統制ってものが、これで要するに崩壊していくということは、日本の国家の体質も変わるし、政治の体質も変わるし、その点では非常に期待してます、それは。決して新政権におもねるわけじゃない。私、今まで言ってきたことだから。

 私が代議士やめたのの一つ大きな引き金、それですよ。外交にしたって防衛にしたって、結局、役人の言いなりで。その役人が何を自負しているかったら、我々は、コンティニュティーとコンシステンシーだ。継続性と一貫性なんてこの時代には通用しないよね。

 例えば、何だっけな、ゆとりの教育、ばかなこと言い出した文部(科学)省が、結果はどうですか。全然教育の能率が落ちてレベルが下がったのに、あれ、修正するのにどれだけ時間かかりましたか。

 ある意味では朝令暮改したらいいんだ、結果が悪くなったら。それを、先人のやったことを、次の役人が踏襲してって、それを役人の間の一種の黙約された美徳みたいに思われたら、国民がかなわないですもん。

 それを、どういう形で崩して崩れていくか、その結果、プラスもあるしマイナスもあるかもしらないけども、やっぱり選良として選ばれた人間たちはせいぜい勉強して、その勉強も、役人の言うことを聞くことが昔は自民党の勉強だったけど、そんなもんじゃなくて、やっぱり広い見識というものを求めて自分自身を理論武装して、志を遂げてもらいたいですな。要は能率の問題ですよ。

【記者】今、政と官のお話されたんですが、もう一つ、新政権になって、政治家の発言を中心に動かしていくということで、事務次官の会見をなくしたりというような動きもあります。それについてはちょっと批判もあるようなんですが。

【知事】どんな批判?

【記者】情報の、いわゆる我々が質問する機会が失われるという部分とかですね、批判があると。

【知事】君ら次第じゃないか。記者会見なんて、要するに、一々頼るからいけないんだよ。アメリカの記者なんかはやっぱり自分ではいずり回って、いろんな人脈通じて取材してますよ。だから、ほんとのトップ記事が出てきたりするんでね。

 これメディアもメディアで、これを機会に、官製の記者会見なんかは信用せずに、やっぱり自分の見識で取材して正しい報道してもらいたいね。1つの案件について、A社とB社と違う報道があったっていいじゃないですか。私はそういうこと、あり得ると思うし、もっと開かれたメディアであってもらい、開かれたというかな、もともと開かれた社会なのに。うん、僕は、メディアも不勉強なところがあると思いますよ。

 はい。

【記者】五輪招致のことについてなんですけれども、3期目の最大のテーマである五輪招致の節目がもう間もなくということで、この結果の成否が出るタイミングによって、去就を考えるおつもりが知事におありなのかどうか、教えてください。

【知事】いや、これは、首都の行政というのは何もこれだけじゃなくて、いろんな問題あります。銀行の再建もありますし、環境の問題もあるし、十年計画が立ってるわけですから。何もこれだけが最大の政治イシュー(問題)じゃないので。余計なこと言わないでもらいたいな、ほんとに。

 どういうつもりでそういうつまらん質問するのかね。

 はい、ほかに。どうぞ。

【記者】ちょっと内閣の関連で、そもそも今回の顔ぶれをごらんになられて、大臣の、どういう印象、あるいは、亀井静香さん(郵政改革・金融担当大臣)なんかは、知事、たしか羽田の整備等で、連携をされたこともあったりとかして、だれと話しやすいとか、だれとパイプがあるとか、そういったことで何かもしございましたら、教えていただけますか。

【知事】いや、個人的には知らない人ほとんどですよ。自民党と違う政党だと。私も自民党に長くいましたが。

 ただ、そんなこと言ってられないんで。やっぱり、閣僚は閣僚だし、こっちは知事ですから、やっぱり大きな政治案件、互いに抱えてるわけだし、それについてこう意見ぶつけ合って、すり合わせする場合には、その会談が破裂することがあるかもしらないけども、そういう開かれた討論というのはこれからもしやすくなると思うし、今までみたいに、閣僚、知ってる人が多かったけども、言った後で、隣の次官と局長の顔見ながら、伺いながらの話は、本音になかなかならない節があった。

 そういう点では期待するというか、東京は東京の問題を抱えてますから、合理的な話し合い、開かれた話があって、それをさらにメディアが取材し、批判するというのは健全な政治運営につながるんじゃないかと思ってますけども。

 はい、それじゃ。

(テキスト版文責 知事本局政策部政策課)