石原知事記者会見

平成21年7月23日更新

石原知事定例記者会見録

平成21(2009)年7月17日(金)
15:01〜15:34

知事冒頭発言

1 「東京湾水質改善プロジェクトチーム」の設置について

【知事】冒頭、私から2つほど申し上げます。

 1つはですね、菅原(秀夫)副知事を座長としてですね、「東京湾水質改善プロジェクトチーム」を設置することにしました。東京都はですね、周辺の自治体に先駆けて、区部の下水道整備率は100%になりましたが、ゆえにもですね、昭和40年代には悪臭を放って黒く濁っていたあの隅田川も、魚がですね、泳ぐまでに回復をしました。花火大会も復活して、江戸の文化を今に伝える夏の風物詩にもなっております。

 一方ですね、下流の東京湾の水質改善にまだまだ至っておりません。かつて東京湾はですね、江戸城の間近でありながら、そうですね、今の外務省に下っていくですね、あの坂道は潮見坂といって、あそこのすぐ下はもう海だったんですね。新鮮な「江戸前」の魚介類が豊富にとれて、大森や羽田の海水浴場もですね、賑わっていたもんですが、今日、赤潮の発生が年間90日に及ぶという状況で、長きにわたって堆積したヘドロに加えてですね、日々、流れ込む窒素やリンは赤潮の発生原因になってまして、東京湾自身の自然浄化を阻害しているわけです。

 東京湾の水質改善はですね、東京都だけでは限界がありまして、これですね、国というよりもですね、やっぱり東京湾という非常に代表的な大きな閉鎖水域を囲んでいる千葉県ですね、それから、神奈川県、それから埼玉県、海はありませんが、埼玉県を通っている川はですね、東京湾に流れ込んでいるわけですから、こういった他の自治体のですね、下水の普及率というものもやっぱりこの問題を左右してくるわけです。せっかくですね、今まで一種の広域行政としてディーゼル車の排気対策や、災害のためのアライアンス(提携)、あるいは、東京湾の中のですね、東京、横浜、川崎の3港の一体化というようなものも進んでおりますから、この問題はですね、やっぱり東京湾に関わりがある、首都圏の4(都)県がもっと積極的に取り組むべき問題ではないかと思います。

 昔は、私たちもね、昭和30年代に、私が20代のころは東京湾でもヨットレースしましてね。そのころはスナメリなんていうね、ちっちゃなクジラも東京湾にいたんですけど、もう完全に姿を消しましたな。それから、その東京湾だけじゃなしに、日本の近海のですね、海も非常に汚れが進んで、東京湾ひとりがじたばたしてもね、埒(らち)が明かないんですが、これはやっぱり大陸方面から来るですね、汚れた海流みたいのもあったり、いろんな問題が絡んでますけどね。とにかく目の前の東京湾、やっぱりもう少し由緒のあるものにしようということで、庁内横断をしたですね、プロジェクトチームをつくりまして、「10年後の東京」で掲げた水質改善策をさらに加速させていきたいと思ってます。東京湾全域をですね、俯瞰(ふかん)して、水質改善の筋道を示す、いわゆるロードマップをですね、作成していきたいと思ってます。

 もう1つ、その前にね、これ、やっぱり国もですね、関与してるんですよ。こういうね、閉鎖水域、日本の代表的な閉鎖水域というのは東京湾とね、あと錦江湾で、鹿児島のね。もう1つは青森県の陸奥湾でしょう。ただ、やっぱりこの首都圏のね、東京湾とね、ほかの2つはかなり条件が違いましてね、例えば、お台場辺りにね、週末ですね、ほんとに何十杯も出てくる屋形船ね。こういったもののトイレがどうなってるかというとね、これ、溜めて帰ってね、バキュームしてると、私はとても思えない。調べたらわかると思うんだけども。結局今のね、航海法(海洋汚染防止法)というんでしょうかね、これはね、ルールからいくと、お台場を過ぎて外へ出たら、あそこで垂れ流していいんですよ。

 やっぱりね、プレジャーボートね、私もヨットやってますけどね、ヨットやモーターボートのトイレというのは「ヘッド」というんだけど、これはですね、とてもそんなところ、水洗なんかすることできないから、海水を使ってですね、揚水ポンプでね、洗浄する形になると。これもつまり外海へ出たら許される。ただ、マリーナの中ではですね、これはもう厳禁されてますけど。ですからね、自分の船泊めてるね、ヨットクラブのマリーナの中で垂れ流しするやつはいないんだけども、外へ出たら、これね、法律で許されてるんですね。これはね、もっと大きな船になるとね、そこのところ、もう1回、つまびらかにしますけども、例えば、クイーンエリザベスとかね、クリスタルハーモニーとか、ああいう大きなですね、客船が日本にも来るわけですけど、東京に。こういったもののトイレの排水の規制がどうなってるかというのは、もう1回、確かめなくちゃいけません。おそらく同じでしょう。ほかのプレジャーボートと同じ。これだとね、東京湾、たまったもんじゃない。
 (※海洋汚染防止法により、国際航海の16人以上又は400トン以上の船舶は、領海から12海里以上離れて排出するなど、領海内ではし尿排出はできない。)

 昔、タンカーがですね、日本に来て、油を揚げて、空になったときにですね、バラスト(船体の安定を目的として船底に積む砂利などの重量物)をですね、海水を入れるんですが、それもね、ついでにタンクの中に溜まった、廃油ですね。スラッジ(汚泥)をね、海水入れて洗ってですね、それで、ある程度の水をですね、ためて走っていって、それがね、非常にひどくてですな。大分前ですけども、伊豆七島などへ行きますとね、もう海岸にですね、その廃油ボールが流れ着いてて、足がどろどろになる時代があった。これは規制してですね、取り締まってね、上からもヘリコプターで監視したりして、これ、禁止したんですが。せっかくね、東京湾の水質というものをもっと良くして、あそこでも昔みたいに海水浴できるにしようと思うと、これやっぱり、かなりのことをしなくちゃいけないと思いますね。

 下水道局が頑張ってね、お台場に関して言うと、すぐ後ろの施設から真水に再生してですね、もちろん飲料水にはなりませんが、非常にきれいな水をあそこに、日々、注いでいる。皆さんいらしたらわかるけども、あのお台場の海岸でですな、1キロぐらいの海岸は海水浴(場)になってるわけですね。しかしね、せっかくそういうものを努力しても、外側に行ってね、お台場過ぎたら垂れ流しというようなことだったら、これやっぱり全然というのかな、そういう努力も報いられないし、晴れてね、安心して、あそこの海岸でも泳ぐというわけにいかんでしょう。できればね、やっぱり東京湾のどこでも昔みたいに海水浴場があるというのは、そういうのが目的とするならば、今言ったようにですね、条例なり法律でも変えて、これを取り締まらないと、駄目でしょうね。

2 大阪府からの派遣職員の受け入れについて

 もう1つ、大阪府から派遣職員を受け入れることになりました。この度、東京都が大阪府と協定を結びまして、職員採用試験の問題の独自作成を目指す大阪府に対してですね、全面的に協力をすることにしました。8月から来年の2月まで職員2名をですね、人事委員会が受け入れまして、東京都が持っているノウハウを提供します。

 東京は、いわゆる国の、キャリア、ノンキャリアという、あの非常にいびつな制度に比べて、都庁の試験を受けて入ってですね、その後、2回の試験があって、それによってですね、上級職へ進むという資格が保証されるわけですが、これは非常に私は公平だと思いますね。こういったものをね、大阪も参考にしたいということで、全国の自治体の中で自前の採用試験問題を使って職員を採用してるのはですね、わずかに東京都と特別区だけであります。他はそろってですね、国の外郭団体、これは「日本人事試験研究センター」なるものから試験問題の提供受けてね、やってますけども。道府県や政令市などは毎年一斉に職員採用試験を実施しているのが、実態ですけども。橋下知事(橋下徹 大阪府知事)はですね、「たとえ、コストがかかっても、国の外郭団体を潰すほうがメリットがある」ということでね、都の知恵をかりて、自前の試験問題を作成するために協力を求めてきました。ということで、東京もこれ、歓迎してですね、協力することにしました。

 いずれにしろ、自治体が知恵を絞って、独自の試験制度による、有為な人材を、その地域性にも応じて確保するというのは、地方分権をですね、推進する上でも非常に大事な意味があることだと思います。

 これまでも、東京都は新たな公会計システムを開発して地方に提供するなど、国に先駆けた取組で、国の統治制度に風穴を開けてきました。おかげでね、東京都もそうですけど、これを採用した自治体はきちっとした財務諸表が出るようになったわけだから、監査にしてもですね、いかに税金が無駄に使われているか、使われていないかということを把握しやすくなったわけで、今回の大都市間の協力を通じてですね、大阪府を強力にバックアップすることで、全国の自治体が人材戦略面でも国からの自立性を高めていくと、そういう一里塚にしたいと思っております。

 私から申し上げることはそれだけです。質問があったらどうぞ。

質疑応答

【記者】今の、橋下知事のお話もありましたけれども、本日、お話しになられる機会があったようなんですけれども、その後に、橋下知事が、全国知事会が主要政党の公約を採点するということに対して、石原知事にも、採点するメンバーに入ってほしいと…。

【知事】何制度?

【記者】えー、各党のマニフェストですね。

【知事】ああ。

【記者】知事会が採点を、点づけしましょうという話、三重県で行われた知事会で話があったようですけど、その採点するメンバーにですね、石原知事にも参加してほしいというようなことを、報道陣に対しては、橋下知事が今日おっしゃったんですけれども…。

【知事】それは、請(こ)われたら喜んで協力しますよ。ただね、それによってね、どの政党をね、どの県が支持するというね、そういうその宣言を誰がするのか、しないのかわかりません。私は、それはちょっと、色んな問題があると思いますね。その都道府県におけるね、衆議院の、何ていうんでしょうな、選挙区での事情、色々な問題勘案しますからね、それがね、何か、思いがけない引き金になってね、結果が違ってくるというのは、私は、ちょっと問題があると思う。

 だからね、それは、私はそういう姿勢をとりませんけれども、評価をするのはですね、やぶさかじゃありませんから喜んで参加します。

【記者】もう1つ、話が変わりますが、もう既に都議選の結果については色々とコメントされていますけど…。

【知事】いや、コメントしてもしてもし切れないね、馬鹿馬鹿しくて。

【記者】えー…。

【知事】だってね、愚痴言うわけじゃないけどね、2日前に公認した人間が通っちゃうとかだね、内田さん(内田茂 千代田区選出前自民党都議)のとこなんかだってさ、9日か10日前に立候補してね、最年少ということだけで、何ていうのかな、あれだけのベテランで見識のある人が吹き飛ばされちゃったら、これやっぱり、この選挙の実態というかさ、今の風潮というのは非常に浮薄でね、危険ですよ、これは。何ていうのかな、僕はやっぱり、怖い気がするし、あなた方メディアにも責任があるんじゃないのかね。

 選挙戦はね、互いに議論のための議論というか、そのね、選挙のためのキャンペーンというのはちょっと、議会での討論とは質が違うから、それはしようがないなと思うけども、やっぱり、あくまでも都民に対する利益というものをね、考えるのが議会の責任ですからね、これはやっぱり、どんな問題でも是々非々でね、今までと同じような姿勢で、政党の配分が違ってもですね、今までと同じような議論をしていくべきだと私は思っていますけども。

【記者】あの、質問する前に答えが殆ど出てしまったんですが、あえて伺いますが、民主党がですね、第1党になりましたということで、言葉がいいかどうか、つき合い方というかですね、これまでとまたちょっと、知事のほうからですね、説明を尽くすなり、あるいはその、もともと知事が、今までも自民や公明にわざわざ議案の説明に行かれていないと思いますけれども、手順といいましょうかですね、そういったところを何か、現段階で対議会のつき合い方といいましょうか、考えるところがもしありましたら。

【知事】今までもね、そのね、諸派も含めてですな、均等にですね、予算なら予算の説明してきましたしね、担当の局長もそれはやってきたと思うんですけど、それはやっぱり、民主党が第1党になったらですね、その存在感というのは今までと違ってくるわけですからね、これはね、それなりの礼を尽くすというか、要するに、それを心得てですね、説明なり説得というものをすべきだと、それは思います、当然。ただやっぱり、冷静な議論をね、そのね、開かれたね、冷静な議論をしてもらいたいのと、どの問題についてどういう反対論が出てくるか知らないけど、やっぱり代案を示して、議論することが必要なんじゃないでしょうか、どんな問題についても。反対、賛成となるならば、と、私は思います。

【記者】最後にすいません。今おっしゃった話は、おそらく、築地なり、新銀行なりのことを視野に入れていらっしゃると思うんですけれども、例えば民主党のマニフェストをよく読むと、強引な移転は反対という、「強引な」という形容詞がついたりとかしてですね、ちょっと解釈に幅がね、つまり、じゃあ、スムーズだったらいいのかとか、いろんな見方があると思うんですよね。そのあたりを、知事から正直、議会審議で民主党に質問する場面というのがあるかどうかわからないんですけれども、どうやって民主党のですね、本音というか、「お前、どう考えているんだ」みたいな話は聞き出されるおつもりでしょうか。

【知事】銀行はね、落ちついてきたんでね、このままね、上昇していくことを望みますし、また、この間も申し上げたようにですね、外国の、金融機関というもののオファーもありますからね、セカンドステージ、もうちょっと早く来るはずだったんですけど、ちょっと遅れましたが、例のリセッション(景気後退)で。

 このね、市場の問題は、やっぱり、一番やっかいというかね、私自身が、他の考え持ってました。外環道が整備されるとね、別にそのね、あそこの、今、築地でやっている人たちは一種のノスタルジーか何か、要するに、過去の経験踏まえての、何ていうんでしょう、物の考え方でしょうけどね。やっぱり扱っているのは海産物だから、海から直に揚がらなきゃおかしいと言われるけどね。もう今、流通の制度というか機能が変わってきましてね、インターネットだとかそんなものを通じるとですね、外国の進んだ先進国の市場なんか行ってみたら、直でそこで物を扱っている市場って、そんなべらぼうに大きなものはないですよ。

 でね、それはね、私も1回ね、外環ができたことを想定して、内陸でもいいんじゃないかと言ったらものすごい反撃食った、今の築地の人たちに。やっぱり海のそばだということでね。そうしたら、あそこでね、あのべらぼうな数値が出てきて、こっちも腰抜かしたんですがね。これはこれでね、それを前提として、首都大学東京の学長の原島(文雄)さんにも(技術会議の)座長になってもらって、いろんな専門家の意見聞きましたが、これ、選挙でも言ってきたことだけども、日本のゼネコンというのはね、世界中でやっかいな仕事してんですな。これに類した仕事もやっていましてね、それで、そういうものの除去とか解消というものにね、非常に進んだ技術を持っていて、原島学長がね、私はちょっと分野が違うんで、しかし学者ですからね、冷静に聞いてみて感心しましたと言われて、ある案が採用されてね、それにしようということで、予算もですね、今までの想定の8割ぐらいで済むということになったんですが。やっぱり新しい技術に対するね、人間の、その、何ていうの、保守性というのはなかなか難しくてね、万万万が一って考えるとね、やっぱりということ。

 ただね、これはタブーになってるのかなってないのか私わからんけど、今の築地はね、合計3万3,000平米、とにかくアスベストが使われているんですよ。それで、これはね、まさに糊塗(こと)されているわけだ、塗り込まれてね。それでね、塗り込まれているだけじゃなくてね、それについて触れることも糊塗されている。これはね、やっぱり、私は危険だと思いますな。だから一刻も早くね、移さなくちゃいかんなと思っていました。地震はいつ来るかわからないから。仮に例えば、今日明日、激しい地震が来て、それほど堅固な建物じゃないから、一部が崩落したりするとね、あの市場は次の日から使えなくなりますからね、そういう危険があるからね、新しい日本人の英知で開発した技術というものを踏まえて、考えたんだけど。

 しかし、外国の事例なんかを見るとね、もっと素晴らしい、つまり、代案。例えばね、これからできるであろう環状線のどこかにですね、そういうものを設けるとか、例えばパリにしたってマドリードにしたって、一国の首都ですけど、集散地ではありますけど、海はありませんからね。そういう事例というものを踏まえてね、しかも、そこはどういう流通でね、国民の需要を満たしているかとか、そういうものを研究し直すと、私は次の、もっと違う案が出てくるかもしれない。

 そういう案を提示されるなら、私は歓迎しますな、これは、うん。何も、海のそばでね、いつもね、魚扱うのが能じゃないんだよ。だってね、遠くから、トラックがクール便で運んでくるわけでしょう。そういったものはね、もう、もっと細分化されて、非常に流通の構造が変わってきているときにね、私は、あんな大きなものをまた違うところへ大きく移すということそのものがね、古いのかもしれない。これはやっぱりあれに反対する人だったら、代案の一つとして専門家に知恵を出してもらって、良い案をつくってくれたら、多少ね、計画の進行は遅れるかもしれないけど、私は後世に対しての責任はより果たせるんじゃないかと思いますよ。はい。

【記者】最後にすいません、今、知事がおっしゃってるのは、やっぱり今の築地は危ないという認識でいらっしゃって、その移す先としては、今ベストは多分豊洲と考えてらっしゃると思うんですけども、仮に民主党なり、ほかの勢力が良い案を示すんであれば、話は聞くよと。

【知事】もちろんそうですね。うん。私は元々ね、何もね、海のそばに移さんでだね、これだけね、何というのかな、流通というのが変わってきた、それからやっぱりね、私の懸案である、これは首都のためというよりもね、日本全体の交通の便宜のために、ハブになってる東京のね、外環っていうのも完成する必要があると思ってますが、やっと端緒につきましたけども。そういったものの、何ていうのかな、進行状況というものとこう、並行して考えたらね、私は今でも思うけど、日本みたいな機能的な国家でね、山の真ん中に大きなね、魚の市場があったってちっともおかしくないと思うね。

 ただやっぱりそのね、アクセスというかインフラをどうやって整備するかの問題で、それから用地もやっぱり要るでしょう。またそれに、用地に、何か、賛成反対も出てくるだろうが、それは、どれぐらい時間かけて、どれだけ合理的にね、吸収してくかということも先の問題だと思いますけども。 どうぞ。

【記者】橋下知事がですね、外環道が格上げされたのであれば、新名神の凍結は解除するべきだと、先ほどの昼食会の後、おっしゃってたんですが、新名神に対する知事のお考えをお聞きしたいと。

【知事】わかりません、他人のことは。

【記者】猪瀬(直樹)副知事はですね、新名神については道路公団民営化のときに凍結して、直轄事業負担金、大阪府の負担にないからといって造るのは安易だと、自民党の旧態依然としたばらまきにつながるという批判をされてるんですが、石原知事の…。

【知事】これはね、猪瀬さんのほうが、よっぽど私よりそれこそ専門家でね、彼の言ってることは私、いつも信用して、この問題については、私、わかりません。ただね、大きな道路計画というのもやっぱりコスト・アンド・ベネフィット(費用対便益)でね、ちゃんとね、数式が出てるんですよ。それでね、東京の外環はですね、一番高い数値でですね、これはもう絶対、ほかの計画に比べるとプライオリティー(優先度)が高いの。これ、今までよくほったらかしたもんだと思って、国の役人がね、あきれ果てるんだけどね。まあね、政治家の責任もあるでしょう。ですからね、私はあなたの言ってる、関西の、猪瀬さんのほうの道路の、コスト・アンド・ベネフィットの、計算方式で出た数値がね、幾らかわかりませんから、やっぱりそれによって決めたらいいんじゃないですか。はい。

【記者】道路公団民営化のときには、そういうBバイC(費用対便益)を検討した結果凍結したということになってるんですが、要は…。

【知事】道路公団、国土交通省行って聞いてくれよ、そんなもん。

【記者】じゃ、直轄事業負担金の問題について橋下知事は廃止すればいいというお考えなんですが、知事のお考えをお聞きしますと必要な道路であれば地元も若干負担するべきではないかと。

【知事】それは私の昔からの持論です。あなたこれはね、全廃したとしたらね、誰が決めるかということになったらね、国で一方的に決められたら、またね、政府の形態も変わっていくか、議会の形態も変わっていくかしらないけど、いわゆる道路族なるものがばっこしてですね、非常に一方的なもので、形で物が決まります。地方の意思というのは忖度(そんたく)されませんよ。だからね、その分担金をすべて廃止するというのは、私は非常に危険な罠だと思う。聞こえはいいけども。

【記者】ありがとうございました。

【知事】どうぞ。

【記者】先ほどの話に戻ってしまうんですが、橋下知事と会談をされたということですが。

【知事】会談じゃない、今日は講師に招いて、私の昼食会やったんでね。

【記者】その前にもお話を多分されていらっしゃると思いますが。講演前に、何十分かお話をされたと思うんですが。

【知事】いや、あんまりお話ししませんでしたね。佐々淳行さん(初代内閣安全保障室長)も同席されてたんでね、やっぱり彼が言ったのはね、たまたまね、ワシントンにいたとき、私、佐々さんと一緒にいたんですが、他の用事があって。「9・11」(アメリカ同時多発テロ事件)が起こった。それで、私はね、アメリカのFEMA(アメリカ合衆国連邦緊急事態管理庁)というのがいかに機能的に動くか感心したんでね、帰ってきて小泉(小泉純一郎 元首相)内閣に建言して、ああいうものを造ったたらどうですかと言ったら、その必要はないということだったんで、それじゃ、こっちでやりますわということで、首都圏のFEMAつくりました。ですからね、何か東京で地震が起きて、一々官邸へかけなくてもね、神奈川県とね、東京都の県境とかそういったときはね、神奈川県と一緒にやりゃいいんだから、当然やっぱりカウンターパート(対応相手)は神奈川県のどこへ電話するかと、電話番号も決まってなかった。それで都がつくったわけよ。そうかと思ったらね、非常に効果が上がってますがね、だから佐々さんのときもやっぱり、大阪でもやったらどうですかと。大阪と京都とね、あとどうですかね、名古屋になるのかな、それから兵庫県、そういったものがね、政令指定都市もたくさんあるわけだ。入れてですね、東京、首都圏も8都県市でやってますから、そういう広域行政のネットワークをつくったらどうですかということでね、建言してました。それで、橋下さんもそりゃいいですな、考えましょうと言ってましたけどね。

【記者】地方分権とか、政党に、マニフェストに点数をつけるといった話を…。

【知事】それはしませんでした、別に。はい。

【記者】あともう1点、また国政の話になってしまうんですが、今…。

【知事】ただ彼が言ったのはね、その前にね、その質問受けますけどね。石原さんが言ったとおりね、お役人というのはまさにコンティニュイティー、コンシステンシー、つまり一貫性と継続性にばっかり固執するけどね、それ、だめだと言って決めたら、途端に次変わると。だからやっぱりね、政治家の決断が必要なんですなと。ね、一貫性、継続性に固執したらろくなもんはできない。だから私は、役人が、右行ったら必ず左という、左行ったら右行くことに決めてます。それでうまくいってますと言ってましたがね、そんなもんじゃねえかな。

【記者】非常に勉強になりますと、先ほど、ぶら下がりでもおっしゃっておりました。

【記者】それと、もう1点、国政のほうで今、両院議員総会をするとかしないとかですね、緊急集会になったといったような、こう、永田町でいろいろと、麻生おろしだ何だと色々とばたばたとしておりますが、それについて知事はどのようにごらんになってらっしゃるでしょうか。

【知事】まあ、非常にすぐれた卓抜な総理大臣をいただくと、いろいろ混乱があるみたいですね。うん。まさにですね、自民党のね、国政の幹事長がだね、都議会に来て陳謝するなんてのは、まさに「ミゾウユウ」なことじゃないですか。

【記者】しばらく混乱が続きそうな様相ですが。

【知事】いや、まあ、そうでしょうね。自民党が混乱するのは仕方ないと思うけどね、うん、国政が混乱すると困るんだけども。やっぱりね、言ってることをね、どこまで民主党が新しい政権でやるのか、やっぱり日本という国家の官僚支配でね、太政官制度時代から続いてる、こういった体制をですね、ぶっ壊すだけの端緒をですね、民主党の政権がつけたら、これはそれなりに歴史的意味があると思う。おそらく、また官僚からの反撃もあるでしょうよ。まあ、それはね、刮目(かつもく)して、私たち見守りたいと思いますけど。どうぞ。

【記者】築地の件で、都議選ではですね、民主党はマニフェストに、現地再整備を再検討するという形で、民主党側から言わせれば、これが1つの代案だという風に言ってるんですけれども、民主党から正式に再検討の要請があった場合は、都庁側、あるいは知事側としては再検討をすることになるんでしょうか。

【知事】それはね、今までのね、都議会の中で散々ね、議論してきたことですよ。それは現実的にできない。例えば、その代替地をどこにするかとか、そんな問題、こんな問題あってですね、ただね、築地の人たちがね、このインターネットの時代にね、ああいう新しい情報のネットワークを活用して、どれだけあの規模を縮小してね、合理的にして、かつですね、消費者たちに都合のいいものにするか、その意思が有るか無いかによって、また変わってくると思うけども。私はまあ、今さらという感じはするけども、必要ならもう一回検討したらいいけど、専門家を入れて、それはね、あそこを再活用する、部分的に補修していくことは極めて難しいと思います。

【記者】あと、もう一点なんですけれども、今回の都議選はですね、民主党が政権交代を中心に訴えて、確かに、大幅に議席を増やしたという一面もあるんですけれども、一方で、議員の中には石原都政を特に批判をしてきた、特に新銀行と築地の移転の話を批判してきて、今回、石原都政への審判という面もあると思うんですけれども。

【知事】私、そう思ってませんね。あのね、ああいう何て言うのかな、うーん、中央の党の醜態がなかったらね、私は過半数は維持できたと思っています。それわかってるから、要するに(自民党の)細田(博之)幹事長は謝りにきたんじゃないの?銀行は立ち直ってきましたよ。じゃ、銀行、これからどうするんですか。それ、逆に聞きたいね。1万社にね、零細な方々にお金融資してる、従業員が5人平均としても働き手は5万人いる。家族入れたらですね、この銀行潰したら、10数万の人がね、要するに塗炭(とたん)の苦しみを味わわされる。だけじゃなしに、3,000億の預金をですね、払い戻すときに利息つけなくちゃいけない。そんなものの支出ってのは膨大なものじゃないですか。こういうことを考えたら、すぐわかることだね。はい。

【記者】ちょっと先ほど国政について、いわゆる空白をつくってはいけないと、まさにもう都民としても、それから国民としてもそう思うんですが、そうした中で石原知事も大変関心をお持ちの、北朝鮮に関する問題でありますとか、そういった法案がですね、廃案になってしまうというような事態が現に起きつつあります。これについて、お考えがあろうかと思うんですが。

【知事】まあ、いや、それはね、北朝鮮は非常にやっかいな存在でね、こういった場合にですね、一番の隣国ですからね、日本がきちっとした対処していかなくちゃいけないのに、その対処の方法なり、基本的な問題についても、その、何ていうのかな、色々異論があったようです。今までの与党・野党の中でね。これはだから、この先、廃案になって、当然、しかし、それはそれっきりで終わるもんじゃなしに、国民の要望といいましょうかね、希求からしても違った形で、もう一回、再燃焼する。要するに、再び論じられなくちゃいけない問題でしょう。そのときに、それがどういう形で決着するかということは、私もほんとに興味がありますし、刮目してますが、とにかく一種の緊急事態ですからね、相手がどう動くかがさっぱりわからないときにね、それに対するこちらの姿勢を決める法律というものをきちっとしていかないとですね、それは国の存在感そのものがなくなりますよ。それは何しろね、国民は許さないと思うしね、だからもう、やる仕事をさっさとやってもらいたいですな、ほんとに。

【記者】これについては空白になるかならないかっていうのは、法案が廃案になるかならないかっていうのは与党ばっかりではなくて、野党にもやっぱり話し合いにね乗るか乗らないかという責任もあろうかと思うんです。そういった意味も含めてなんですね。

【知事】継続審議っていう手続きはとれないんですか。

【記者】ですからね、廃案、もう一回、法案として出し直さなければいけないみたいなんですよ。最初から国会へ。そういうことを考えてみますと、やっぱりきちんとここまで、途中まで来てたら、まあ、法案として成立するまでは何とかこう、期待してる人が多いんではないかとね。

【知事】しかし、継続審議って形で棚上げしたらいいんじゃないでしょうかね。

【記者】ああ、そうですね。その継続審議する時間が、今の国会の中で有るか無いかなんですよね。

【知事】ああ、そうなんですよね、これはほんと。

【記者】解散ですから。

【知事】まあ、だから、誰がどこまでほんとに国家のことを考えてるかの問題になってくるだよね。はい。それじゃ、どうも。

(テキスト版文責 知事本局政策部政策課)