石原知事記者会見

平成21年1月15日更新

石原知事定例記者会見録

平成21(2009)年1月9日(金)
15:01〜15:15

知事冒頭発言

夕張市への職員派遣について

【知事】今年初めての会見ですな。おめでとうございますと言いたいけど、なかなかこれね、厄介な年ですね。

 私から申し上げることはありませんが、さっき猪瀬さん(猪瀬直樹副知事)に頼まれたのでね、皆さんもうお耳に伝わっていると思いますけども、例の夕張に、今、都の職員が正式に派遣されて、暮れにも6人が行って、非常にいい体験したと言ってくれてましてね。

 猪瀬副知事から、大阪府の橋下(徹)知事にも呼びかけて、大阪もこれに応じて2名、広島市の秋葉(忠利)市長もこれに応じて2名、人を派遣して、一種の研修というんでしょうかね。それはやっぱり行政の失敗でほとんど破綻してしまった町ですから、そこへ行って、一種の原体験というんでしょうかね、状況を見てね、特に若いスタッフが自分の将来のために、そういう行政がもたらした一種のマイナスの極限状況のような自治体の実態を見るということは非常に勉強になると思いますしね。これは猪瀬さんの言い出したプロジェクトだけど、大変結構だと思います。それに大阪府、広島市が呼応してくれたというのは、新しい地方自治体の協力の体制のパターンができたんじゃないかと思って、とっても私も喜んでますけども。

 前も、入管(東京入国管理局)の事務所の手が足りないというのでね、15人かな。それから、警察はやっぱり手が足りないというので、100人。応募者があまり多過ぎたので、上司の局長なり部長がちょっと困っちゃったという話があるんだけど、よほど退屈してたんだね。

 行って帰ってきた連中の話を聞いたらね、特に入管の事務所に行った連中の指摘ったらものすごく正しくてね。「何でこんなことやってるんでしょうか。都庁にいるスタッフの常識としても考えられません」という報告で、たまたまそのとき(内閣)危機管理監になっていた元警視総監の野田(健)君にその話をしましたらね、早速、大変いい報告でしたというので、幾つかの問題が改良されたと思いますけど、今度もまあ、もっと深刻なゼロ状態の地方自治体に若いスタッフが行くことで、非常に大きなものをつかんで帰ってきてくれると思うので、猪瀬案にも感謝してます。

 何か質問があったらどうぞ。

質疑応答

【記者】今、冒頭お話がありましたように、内憂外患、大変なまた1年間が始まろうとしておりますけれども、年越し派遣村というところで、大勢の人がつらい年越しを過ごされました。そうした対応に、東京都も、また国も、それがしのなにがしかの対応をすぐにしたということは、とてもよかったのではないかというふうに思います。

【知事】国は大したことしてないんだよね。講堂貸したぐらいで。とにかく現場感覚がないんだから、あの連中は。地方自治体の責任ですよ、これをやることはね。

【記者】それと同時に、お互いに言い合うだけではなくて、お互いにいいことはやり合おうというようなことで前向きに進められることが、住民のことを考える自治体とか国とか、あるべき姿だと思います。これからも前向きに進められることと思いますし、もう1つは、本人たちの自助努力といいますか、本人たちの努力がなければ前へ進まないであろうというふうに思います。

 これはやっぱり、年がスタートしたばっかりなんですが、もうしばらく続きそうなんですが、知事はこれをどういうふうに見ておられますか。

【知事】これはね、法律の体系の整備みたいなのが必要でしょうね。派遣会社専属の派遣社員というのはごく限られた高等技術を持った人、例えば通訳とかですね、かなりの、要するに経験を踏んだ技を持っている、そういう人に限られているようで、一般の派遣社員というのは、まあ仕方なしにそうなった人もいるし、これ、ちょっと大事なところなんですがね。

 この間、何か問題を起こした政務官の言い分(※)も、多分それを踏まえてのことだと思うんだけども、自分の判断、自分の生活、人生観、価値観でですね、正規の社員をむしろ忌避して、あえて派遣社員になった人もいるんですよ、これね。これはね、その人の人生観を聞いてみるとね、企業の中でがんじがらめになってね、上役にいつも気を遣って生きるのは嫌だという形でね。これは非常に実存主義的な考え方だな。自分の個性というものを忖度(そんたく)して、それを企業の、何というのかな、ルーチン(日常の仕事)の中で縛られるのは嫌だと。仕事だけ果たして給料をもらえばそれでいいので、企業の中で出世を考えておらんと。しかし、将来、ずっとそれで一生通すつもりかどうか知りませんけど、若い人ほどそういう価値観の人もいますからね。

※1月5日、総務省の仕事始めの挨拶で、坂本哲志総務政務官は、日比谷公園に設置されていた年越し派遣村について、「本当にまじめに働こうとしている人たちが集まっているのか」などと発言し、その後、撤回した。

 そういう人はまた別だろうけども、しかし、そういう人にしても、なお企業というのは浮き沈みがあるんでね。こういう波が来ることも予測され得るんだし、今度のは本当にまさに津波級の波だけども。だから、今後A社がだめならB社へ移る、そういう気構えの人もいたんでしょうけどね、今度の場合は超弩級(ちょうどきゅう)の波がかぶったわけですから被害者がたくさんふえて、おぼれる寸前ということで、最低限の努力を都もしたわけですけども。

 やっぱり、その就業時間というか、要するに期間の長さにもよるでしょうが、派遣会社に属している派遣社員は論外だけども、その会社が失業保険の面倒を見るんでしょうが、これからそういう価値観というのが蔓延していって、おれはとにかく正規の社員は嫌だという人もいるわけだから、そういう人生の選択のためにも、それを保証する派遣社員のための、何というんでしょうかね、雇用保険のようなものを制度をきちんと作るべきだと私は思いますけども。

【記者】たまたまものすごく、自分自身が、自分の理由でもって定職していた企業を辞めてしまったことを今になって反省しているという声を出している人もやっぱりいるくらいで。

【知事】そうでしょうね。

【記者】この時代は先を読むというのはなかなか難しいものですから、反省もしているし、努力をしている人も中にちゃんといるんだということ、これもやっぱりわかっておかなければいけないことだというふうに思います。

【知事】それで、言葉が足りないんです、あの人(坂本哲志総務政務官)もね。あのね、正規の社員は嫌だと、おれの価値観で派遣社員を続ける人生を選ぶんだという人は、何も働く気がないわけじゃないんだ。働く気はあるけれども、働き方の選択の問題だからね。一概に働く気がない人間もいるという言い方は、ちょっと乱暴というか稚拙というか、そういう気がしましたね。

【記者】ありがとうございます。

【知事】それでね、調べてみるとね、正確な数字は忘れましたがね、ある施設に収容して、先のこともあるから、生活保護の問題も出てきているし、今までどういう会社にいて、どういう経歴で来ましたかといっても回答しない人が非常に多いんだね。これも困るんですよ。それはそれなりの理由があるのかもしれない。それ以上はつまびらかにしませんけどね。

【記者】五輪絡みなんですけれども、年末に予定されていた国会の決議のほうが延び延びになっていて、それで立候補ファイルの提出も間近に迫る中で、今後どうなるのかちょっとわからないのですけれども、知事はどういうふうに見ていらっしゃるのでしょうか。

【知事】1月に入ったら採決してくれると思っていますけどね。

【記者】一方で参院側、特に民主党が、今日、知事は午前中の公明党の新年祝賀会でもおっしゃられていましたけれども、民主党が若干、五輪招致に関していろいろと注文をつけ出している状況らしいんですが。

【知事】注文というか、何というのかな、彼らも異論があるというのは聞いていました。この間、正式に田中(良)幹事長ですか、話を聞きましたがね。1つの彼らの理念を反映しているんでしょうけども、例えば広島、長崎である種のスポーツをやったらどうと言う。これはIOC(国際オリンピック委員会)にリファー(照会)してみなくちゃいけませんがね、できるだけコンパクトな、選手の移動が少なくて済むようなオリンピックにしてくれという原則とは抵触するんじゃないかという気もしますけども、一応リファーはしてみますけどね。ただ、やっぱりほかの形で広島、長崎を、平和を念願する祭典としてのオリンピックの中で、広島、長崎の存在というのを改めてとにかくクローズアップしていくということは、ほかの方法もないでもないと思うから。それはまあいろいろ考えてみましょう。

 それからもう1つ、(国立)霞ヶ丘(競技場)、今ある神宮のあのスタジアムを活用しろと、これは非常に強い要望なんだ。これは無理です。時間的に無理だし、地権者の問題もありましてですね。要するに可能な土地の面積の限界からしても、あそこに10トラック、それから10万人収容のスタジアムを作るということはほとんど不可能でしょうな。

【記者】新銀行東京について伺いたいんですが、年末の12月26日に金融庁から業務改善命令が出たんですけれども、この中身が、東京都のほうが旧経営陣を刷新しててこ入れを始めて経営改善を進めた以降のことについても、まだ取り組みが不十分だというふうに読みとれるものだったんですけれども、この命令についての知事の受けとめを伺いたいと思います。

【知事】読み込みの仕方でしょうね。ですから、それは主観の問題になると思いますけども、現経営陣は、3度目になっているわけだけども、それなりに努力してまして。ただね、最初の経営陣から被った被害というのかな、傷があまりにも深いんでね、これはなかなかその余韻から脱するのは大変だと思いますよ。ただ、やっぱり彼らなりに十分の努力をしてくれているし、墜落寸前だけど、かま首もたげてきていてね。プラスアルファのことも考えたんですが、世界の金融情勢がこうなっちゃったんでね。外国のパートナーというものを考えた節もありますけども、そこら辺の問題はこれからの新しい展開というものを期待するということになると思います。

【記者】これから業務改善の計画を新銀行が1月26日までに出していくことになると思うんですけども、これまでの再建計画の内容がかなり厳しい状況、実現が厳しいというようなことでまた見直しを迫られるということにもなるふうにも思えるのですけれども、そのあたり、何か…。

【知事】それはあなたが勝手に思っていればいいじゃないか。結果見てから批判してくれよな。そういうコメントそのものも実は迷惑なんだ、当事者にとってみるとね。つまり、不安をあおる、メディアが足引っ張る。そんなもんで物事は成就していくものじゃないよ。

【記者】給付金について、お伺いしたい。昨日、麻生(太郎)総理が給付そのものの実現に関して、今年度中は難しいのではないかといった話をされたみたいなんですが、これについて、知事のお考えをお願いいたします。

【知事】それはやっぱり政府の当事者に聞いて。私はそれを熱願しているわけでもないしね。もらったら寄付でもしようかと思っているけどね。東京で寄付すると(公職)選挙法違反になるらしいからさ。要するに自分の選挙区でないところで寄付したらよろしいんでね。

 あの太郎さんが何考えているか知らんけども、別にそれを熱願しているわけじゃありませんから、別にここでコメントする筋でもないんじゃないかな。やるなら早くやったほうがいいよ、本当に。さっさとな。

(テキスト版文責 知事本局政策部政策課)