石原知事記者会見

平成20年11月6日更新

石原知事定例記者会見録

平成20(2008)年10月31日(金)
15:01〜15:19

知事冒頭発言

「東京緊急対策2」について

【知事】冒頭、私から1つ申し上げます。「東京緊急対策2」であります。

 アメリカ発の金融危機は、我々がかつて経験したことのない大きなものでありまして、今後、実体経済にも波及し、国民生活にさらに甚大な影響をもたらすということも明白になってきました。影響がどこまで長期化、深刻化するか予測できないだけに、このまま政治が手をこまねいていれば、国民の心理的な不安がさらに高まり、経済や社会の混乱に拍車をかけることにもなりかねません。

 どうも、メディアも含めて、風評、世評というのは何か、大変だ、大変だと言うだけでね、あまり、例えば円高なら円高というものを踏まえてね、日本がもう少しポジティブ(積極的)に、オフェンシブ(攻撃的)に戦略を立てるなんてことには全然言及されないで、いたずらに時間が費やされている感じがしてなりませんが。

 景気対策は一義的には国の責任でありますけれども、日本の中枢をなしている東京都の都政にかかわる者としては、都民のこうした不安を正面から受けとめ、現場に即した具体的な手立てを早急に講ずることが必要と判断して、9月以来実施している緊急対策に続いて第2弾の対策を実施することにいたしました。

 主な対策の柱を申し上げますと、厳しい経営状況にある中小企業の懸命な努力を支えるために、資金繰りの支援や連鎖倒産の防止対策に取り組むとともに、道路、公園などの機能回復事業などで緊急な雇用確保対策を実施していきたいと思っています。

 ちなみに、9月のデータを調べますと、例年に比べて(中)小零細企業の倒産(件数の増加率)が大体3倍になっておりますね。これはやっぱり非常に重大なイニシャル(数値)だと思いますけども。

 次に、生活の困難に直面している都民の自立支援策として、再就職を目指す離職者に対する緊急融資制度を創設するとともに、社会福祉施設の安全・安心対策として施設の耐震化や特別融資を実施いたします。

 また、医師の確保は、本来、国の責任でありますが、先日の墨東病院での痛ましい事案を重く受けとめまして、東京都周産期医療協議会を開催するとともに、現時点で都として緊急になすべき対策を迅速に実施いたしてまいります。

 さらに、中小企業の力を活用して都市インフラの整備を進めることとし、発注方法の工夫によりまして、年度内契約の工事を増やすなど、中小企業の受注機会の増加に向けた積極的な対策を講じていきたいと思っています。今回の対策は、20、21年度にわたって実施いたします。事業規模の目標はおおむね2,000億円でありまして、このうち早期に予算措置を必要とするものについては、第4回定例会に補正予算として提案すべく、早急に作業を進めるように、今日指示をいたしました。また、昨日、国が「生活対策」を発表しましたが、内容を精査した上で、国が責任を持ってなすべきことについて、必要に応じて緊急提案も行っていきたいと思っております。詳細については後ほど関係局より説明をいたします。私から申し上げることは以上であります。質問があったらどうぞ。

質疑応答

【記者】新銀行東京に関連してお尋ねします。国会で審議中の金融機能強化法で新銀行東京を資本注入の対象にするべきではないという意見も出ているようですが、そうした意見に対する知事の見解をお願いいたします。

【知事】その前に申し上げますけどね、あなた方、この間ね、新銀行東京に関連した記事というのは、ニュースソース(取材源)はあなた方の立場じゃ明かせないだろうけども、およそ根拠のないものでしてね、これからそれがガサの記事だったということが証明されますが、そのときに、銀行はこれを非常に深刻に受け取ってますからね、あなた方もやっぱり覚悟しておいたほうがいいと思いますよ。書きっ放しで済むってもんじゃない。それが非常に大きな風評被害になってね、銀行は迷惑してるんだから。

 今のご質問ですけどね、これからどんな法律をつくろうとしているか、つまびらかにしません、大体予想はつきますけども。それに関してね、民主党はこの問題を来年の都議会の選挙を構えて政局にしようと思っているのは見え見えな感じがいたしますがね。

 これもね、政党として仕方ないと言えば仕方ない、あり得ることかもしれないけども、やっぱりこういう経済状況の中でね、それを深くも斟酌せずに、上っ面のことでね、しかも国会に持ち込んでですね、新銀行東京に限らず、もう1つ、2つ名前が挙がったようだけども、とにかく特定のセクターの名前を出してね、法律ができる前に、できるべき法律はこのセクターに該当する、しないということを議論するというのは、これはどうもあんまり健全な論議とは言えませんな。できるべき法律が逆にゆがめられる節もあるので、私はああいう国会の傾向に非常に憂慮しております。あなた方も憂慮していただきたい、メディアとして。

【記者】冒頭のお話なんですけれども、補正予算を組まれるということになると、かなり異例のことになるかと思うんですけれども、その辺についてはいかがお考えなんでしょうか。

【知事】まあ、異例のことでしょうけどね、やっぱり世界で起こってる事態が異例のことですからね。

 かつてのアメリカのフーヴァー(第31代アメリカ合衆国大統領)のときに大混乱があって、ルーズベルト(第32代アメリカ合衆国大統領)がニューディール(世界恐慌時にルーズベルト大統領が行った経済政策)という形で出てきましたが、あのニューディールそのものが、あれが成功したとはにわかに言いがたいので。歴史を振り返ってみるとね、結局、戦争が皮肉なことに経済を持ち上げる引き金になったというのが大体専門家の通念だけども。

 いずれにしろ、この非常に異例な事態にやっぱり異例なケースを設けて対処しないと、国民、都民というのはやっぱり被害をますます被ると思いますので、その決心をいたしました。

【記者】先ほどお話もあったんですが、きのう、麻生(太郎)総理が会見で新たな経済対策を発表されたわけですけれども、これの中身について知事はどのように思われますでしょうか。

【知事】私、テレビで会見を見ただけですからね、文章として精査してませんけども、やっぱり人によっていろんな評価、批判があるでしょう。しかし、この時期、政府が政局に引きずられて解散して空白をつくって、その間に事がもうどんどん進んでいくのに政治がノータッチでいる。官僚に任せたって、それはなかなか徹底的にはできませんからね、政治家の判断、議会がそのためにあるわけですから。

 ですからね、これはごく妥当な措置だと思うし、足りない部分はこれからも補っていくことになるでしょうけども、なかなか事態が深刻ですから、焼け石に水にならないように、運用そのものを思い切っていろいろやってもらいたいと思ってますけども。

【記者】あともう1点、認証保育所のことでちょっとお聞きしたいんですが、東京都が今年の9月1日に認証保育所としたハッピースマイルという保育所が今日付で閉鎖することになりまして、東京都が認証を与えてからわずか2カ月で破綻というか、事業ができなくなったということで、認証保育所の基準というか、これが甘いんじゃないかというような声も利用者の方にはあるようなんですけれども、これについてはどのように思われますでしょうか。

【知事】これはね、原則的に言って、保護者に説明もなしにね、経営者の一方的な都合で、突然とにかく閉鎖するというのは論外な話でね。この設立の過程でどういう評価をしたか、当局に聞いてみますけどね、これは決してあってはならないことだと思いますし、今いる子どもたちが次の施設に移れるまで、責任を持って保育をしろということを指導させております。

【記者】陸上のマラソンの高橋尚子選手が引退表明して、東京はオリンピック招致に向けていろいろとスポーツ界からご協力をいただいているようなことがありますけど、今後、高橋選手、国民的人気も高いというところで、何かお願いするようなことは考えておられますか。

【知事】ああ、ここは非常にいいサゼスチョン(示唆)でね、私も同じことを考えてましたけども、関係当局と相談して、是非ああいうすばらしいタレントをね、走らなくてもですな、これから走る者のために活用させていただきたいと思っています。

 あれはどうなのかね、小出(義雄 マラソン指導者)さんという名博労(めいばくろう・人の能力を見抜き、引き出すのが上手な人)の下にいたからで、なかなかやっぱりチームプレーと、自分のグループでやるのと難しいところがあるんだろうけども。

 うーん、まあしかし、残念だったですな。ただやっぱり彼女の練習ぶりなんか見てると、人間よくあそこまで体酷使してやってきたものだと思って。それは決心したからにはゆっくり休まれてですね、いい指導者になってもらいたいと思いますね。

【記者】まだまだ、高橋選手は引退ということになりましたけども、外部では、今、知事がおっしゃられたように、もったいないという声もあるみたいですけども。

【知事】人材というのは、いろんな才能持っているからあそこまでいけるんでね。それはQちゃん(高橋尚子選手の愛称)はこれからQちゃんとしてね、今まで以上に個性、能力を発揮して活躍する世界があると思いますよ。

【記者】五輪の関連で伺いたいんですが、基本計画の中でプレスセンターを築地に予定してましたけども、豊洲の土壌汚染問題がかなり長期化するような状況になってきましたけれども、現時点でこの計画を見直す考えはあるのかどうか、ちょっと1点確認したいんですが。

【知事】これ、今日も実はね、その協議をしたんですが、報告を聞きながらね。あれ、やっぱり、内々ですけど、ビッグサイト(東京ビッグサイト 国際展示場)にプレスセンターを移したほうがいいと思ってます。それはね、オリンピック、何ていうんでしょうね、北京も眺めましたしね、ロンドンの計画見てもね、高層というかね、今の構想だと数階建てのものになるんですけど、これは便利なようで便利じゃなくてね。やっぱり平屋に近い大きな建物で動かしたほうが機能としても活用できますし、そういう北京とかロンドンの計画を参考にして、しかもアクセスの点からもはるかにビッグサイトを使ったほうが便利なんで、その方向に転じようと思っております。

【記者】これから計画そのものを見直されていくことになると思うんですけど。

【知事】これはしかしまあ人間のやることでね、他人のやってる…。

【記者】内容面で変更があるということなんですけど、今後の招致へのプレゼンだとか、そういうことへの影響というのは。

【知事】むしろこのほうが良かったんじゃないでしょうかね。それは、私たちも久しぶりのことですからね、最初の東京オリンピックと違って、世界の状況は変わってくる、いろいろオリンピックのニーズも変わってきて、その中で、やっぱり北京の例とかですね、ロンドンの計画見ても、数階建ての建物よりも平たい建物のほうがずっと便利なようですし、それから足りない部分はですね、隣にも増設していいと思いますしね、その予定もあります。

 これはオリンピックが終われば、今、ビッグサイトというのはほとんど100%近い回転をしてますんで、オリンピックが終わった後も新しい都民のためのレガシー(遺産)となるためにも、まあ増設も含めてビッグサイトに移そうと思っています。これは豊洲の問題と関係ありませんから。

【記者】新銀行東京なんですけれども、このたび、行員の不祥事が出てきましたけれども、これに関して都知事の所感と、それともう1点は、都議会の議員が融資に関して口利きをやっているというふうな話もちらほら出ているようですけれども、このことについては何か考えるところがあるならば教えてください。

【知事】後のほうの問題は当たり前じゃないですかね。東京がつくった施設にですね、自分の、支持者であろうがなかろうが、選挙区の、例えば他党の支援者であろうと、金融で困っている人がせっかくできた銀行を活用しようと思ったら、その口利きをするのは、それこそやっぱり政治家の仕事の1つじゃないですか。

 それから、前半の今度の不正融資、これはまあね、陰に元暴力団がいたとかね、しかもそれからですな、つまり何かコミッション(成果報酬)もらった、これはもう論外な話でしてね。

 ただね、こういう問題が起こるたびに、これからも言われるでしょうけども、マスタープランで立てたスコアリングモデルというもののせいだというけど、これはね、ていのいい言いわけですよ。それはね、憲法じゃないんだからね。刑法、法律じゃないんだからね。

 例えばですね、あの中にできるだけ無担保で物を貸したほうがいいと。それは担保の持ってない人はたくさんいるし、担保なんかとても持てない状況の人がアップアップしながら、しかしいい仕事を続けるために融資を願っているんでね。ですからね、無担保で貸すということなら、非常にそういう難しい状況を踏まえてなお貸すほうが物を精査しなくちゃいけない。

 ですからね、議会でもスコアリングモデルというんですか、マスタープランというものを引き合いに出して、そのせいだ、そのせいだという言いわけがまかり通るが、これは専門家が分析すればわかることですけどね。それはね、マスタープランはただのマスタープランであって、その運用をいかにするかというのは経営の問題ですね。今度のこれは論外です、これは。要するに一種の犯罪ですから。ゆえに逮捕されて、警視庁もこれを問題にしているわけでね。これはあってはならないことです。

 ただやっぱり、その犯罪者の言い分までがマスタープランを持ち出すのは笑止千万の話ね。マスタープランに引きずられて自分たち犯罪したんですか。100万円のキックバック(手数料)もらっているわけでしょう。そんなの放置して、しかもこの人間にですね、経営の管理が行き届かずに賞与金まで出したという。これは何もこの問題だけが引き金になって銀行がこういうていたらくになったわけじゃないけども、しかしこの事例を踏まえていって、またここでマスタープランが出てくるというのは、これはやっぱり世間に通らない理屈だと思いますよ。

【記者】今のお話でもあるんですけども、審査が3日間で、3営業日で融資の可否を決めるというのが当初からの前提でやってきていたということで、今回の事件の報道を見ていると、にせものの現場の写真を使って融資を実行させていたようなことの背景に、審査期間が非常に短かったというのがあると思うのですけれども、これを調べていくと、銀行側は審査は3日ではできないと言っていたときがあったんですけれども、東京都側が3営業日内にやるのが銀行というかこの新銀行のねらいなんだということで、説得というか、都側の意向がかなり反映してた部分がかなりあると思うんですが。

【知事】いや、それは、もうちょっと精査しないとわかりませんね。それは金融の融資は早いにこしたことはないけどね、現場にも行かずに、写真なりそんなものを眺めて融資するばかはどこにもいないわけでね。やっぱり経営する人間、金融の業務をする人間の常識を外れた判断だと思いますよ。それを無視してまで融資しろなんてことは、東京は、都も指導するわけはないし、あってはならないことと思います、私は。

【記者】もちろん指導するわけではないんでしょうけど、その背景に、3営業日内に答えを出すという、いわゆる東京都の言ってた足かせがあったんじゃないかなと思うんですけど。

【知事】いや、その足かせが、3〜4日以内にという具体的な時間を制限したものであったかどうか、私、つまびらかにしませんがね。

※「東京緊急対策2」の数字の正しい表記はローマ数字です。

(テキスト版文責 知事本局政策部政策課)