石原知事記者会見

平成20年1月31日更新

石原知事定例記者会見録

平成20(2008)年1月25日(金)
15:05〜15:23

知事冒頭発言

【知事】ちょっと都合で遅くなりまして、失礼しました。

 冒頭、私から申し上げることは何もございませんから、質問があったらどうぞ。

質疑応答

【記者】築地市場の移転問題の関連で、2月から豊洲で詳しい土壌調査が始まる関連で改めてお尋ねなんですが、今後の土壌調査の結果いかんで移転中止ということが考えられるのかどうかという点と、もう1つは、こうした問題が長引いている中で、豊洲に最終決定として選んだことについて、知事はどのようにお考えかというのをお尋ねしたいんですが。

【知事】選んだというのは、私が選んだというよりも、前任者が選んで決まったんでしょうけども、調印というのは私がしましたがね。何れにしろね、私もね、何かいろいろまだ反対する人もいる段階でね、今度の結果がわかる前ですけどね、ほかに環状線が完備したというものを想定してね、内陸にも空き地があるから、そういう所にしたらどうだと言ったら、業者が、水揚げということがあるから、やっぱり絶対ウォーターフロントでなきゃ困るということがあったんだ。ということで考えますとね、もうあそこしかスペースないんですよ、どこ探してもね。あそこでね、要するに、農産物も扱っていますが、主にやっぱり水産物でありますからね。

 そういう点でね、結局、調査にもコストがかかりますし、その結果によってはですね、きちっとした護岸をする、そういうインフラをきちっと整備をすれば、コストもかかるでしょうけど、やっぱりそうせざるを得ないでしょうね。立地ということを考えて。

 今の場所を継続する、しないの問題、よく出てくるけどね、狭過ぎるし、危険だし、あまり清潔でもない、率直に言って。アスベストの問題なんかもありますからね。

 ですから、まあね、オリンピックのために強引にあそこへ移すんじゃないかという、そういうトンチンカンなことを言う人がいるけど、絶対そういうことじゃなくてね、やっぱり都民の台所を賄うための現代的な施設としてね、あるもっと大きなスペースも要りますし、今までにない機能も必要ですからね。そういう点ではね、立地ということを考えれば、ちょっとあそこ以外にないでしょうな。

【記者】逆に、移転をすることで、築地でこれまであったものがなくなるんじゃないか。そういう小さいお店が生き残れないんじゃないかというような声も出ているんですが、知事はそれはどのようにお考えですか。

【知事】これはまあ、あそこに付帯してできた、何というんでしょうかね、1つのまちづくりでありましてね。そういうことを考えたらね、これは何もできないんじゃないですか。やっぱりそれに対応してですね、移るスペースもあり得るし、新しいスペースも設けていますからね。

 ただ、やっぱり人間というのは保守的なものだし、動きたくないという人と、それから、やっぱり移転すればですね、それに付随したまちに移る人だってコストがかかりますからね。そういうことでみんな要するに躊躇というか、反対の声もあるでしょうけど、これは仕方がないと思いますね。

【記者】救急医療についてなんですけれども、2月1日に救急医療対策協議会が開催されますけれども、大阪などでは救急車が病院に搬送を拒否されるというケースが相次いだりしていますが、東京都としては、救急医療体制についてどのような方向性で見直しを進めていこうというお考えなのかをお聞かせいただきたいんですが。

【知事】まあですね、救急車を必要としないようなケースの要望がたくさんありましてね、そういったものをトリアージ、つまり、現場へ行ってですね、これはあなた、自分で病院へ行ってくださいというふうな形で処置もしていますけど。

 しかしね、統計を聞きましたらね、やっぱり消防庁のデータではですね、要するに、非常に多い、需要の中でね、病院の連絡が1回、2回でめどがついて運んだ計数というのは、統計では84%以上あるんですよ。これはやっぱりかなりの数字だと思いますがね。

 それじゃ、あとの十数%をどうするかということなんでね。これは現場でのトリアージ、それから、やっぱり都民の方々にね、非常に何というのか、繁雑で難しい作業をしているんで、限られたメンバーで。だから、やっぱりそう何でもかんでもね、とにかく救急車を呼ぶというような、そういう習慣というのはやっぱり考えてもらってね、自分で正当な判断をしてもらいたいという、そういう情報というんでしょうかね、そういう啓蒙といいましょうかね、これからやっぱりする必要があるなということで考えています。

【記者】消防と医療機関との連携の強化という面では、何かこうしていきたいというような方向性というのはありますでしょうか。

【知事】いや、ですからね、消防は消防なりにそのノウハウといいますかな、要するに、病院の配置というものについて知識を持っていますからね。だから、そこで連絡してですね、1回、2回で事が済んだというケースが8割以上ある訳ですからね。これはかなりの成績だと思いますよ。しかし、それでもなおそこからこぼれる十数%の人たちをどうするかの問題ね。これはね、ちょっと電話1本ですぐ来てくれると簡単に考えられると困るんでね。みんな税金で支えている作業ですから。

 話が転換する訳じゃないけども、私が言い出して初めてER、エマージェンシー・ルーム(救急室)をつくったときもね、来る患者というのは全部、乳飲み子なんだな。親が無知だからね、おばあちゃん、おじいちゃんと一緒なら助かるんだろうけども、2人で住んでるので、子どもができる、熱が出るともうアップセット(狼狽)してね、もうとにかくおろおろしながら、100何番ですか、救急車を呼ぶという形でね。結局、ERでも、深夜にやってくる急患というのは、必ず、そういう人が多かったものだから、入口でトリアージするようにしましたけどね。

 そういったケースが多々あるんでね、これはやっぱり都民の良識というか、自分の判断で冷静にものを判断してもらいたいという一種の啓蒙は、これからもする必要があると思っています。

【記者】国会で焦点となっている道路特定財源の暫定税率の問題なんですが、仮に廃止となった場合に、東京に与える影響というのはどのぐらいというふうに見込んでいらっしゃるんでしょうか。

【知事】それは、東京は3000億ふんだくられてね、そのかわり今、東京都限りのシステムつくってね、道路に限らず、必要な整備というものをしていく約束をしてますけどね。でも、それはやっぱり政府なら政府の財源あってのことですから、その多くの部分が、道路に関しての財源が消耗するということは、やっぱり東京にいろんな影響が出てくると思いますね。

【記者】東京都の建設局の試算で、臨時交付金も入れて、区市町村分も含めて、東京全体で1675億円の減少となるというふうに試算しているんですが、その場合、どのような対応策をとるようにお考えでしょうか。

【知事】対応策も何も、国道にしたって、要するに、今の法律の体系の中で地方自治体が分担する部分はある訳ですからね、その財源が消耗していけば、これはやっぱり、国がオファーしてきても地方が協力できないというケースだって出てくると思うし、東京だって、その問題は埒(らち)外じゃないと思いますよ。

 ですから、やっぱり基本的に、私は日本のガソリンの税率はそれほど高いと思わないし、外国に比べればむしろ低いほうですからね、これはやっぱり日本全体のインフラの整備というものの需要から見ても、あれをネグってしまうということは、私はやっぱり好ましくないと思っています。

 だから、そういう大会にも出ましたしね。この間も、何か、与党も野党も一緒になった大会にぜひ出てくれと言うので、都知事の立場で出ていって、反対を表明してきました。

【記者】今後、さらに、維持に向けての動きで考えていらっしゃることはございますか。

【知事】それは結果が出てみなきゃわからんからね。まず最初にやるべきことは、こういう一種のポピュリズムをね、税制の改正というものに反対するということが基本姿勢で、その結果を見てからのことだと思いますけども。

【記者】同じく暫定税率の話なんですけれども、今、道路特定財源が、公務員の宿舎ですとかレクリエーションの道具にも使われているということが、昨日、今日で問題になりつつあるんですが、この点について知事はどういうふうにお考えですか。

【知事】そういうものがあったら、やっぱり論外だと思いますね。それはすべきことじゃないしね。すべてそういうことではないんでしょうけど、あんまり好ましくない例をとらえて税制そのものを否定されたら、これは本当に元も子もなくなると思うんだよね。だから、そういうものはやっぱり慎むべきだし、きちっとした枠をはめたらいいと思いますよ。

【記者】杉並区立の和田中学校で塾と連携した授業をするという話が、杉並区の教育委員会と東京都の教育委員会でいくつかやりとりをした後に、明日から始めるということになりましたが、それに関して、まず知事の所見を。

【知事】僕、前から言っているように、基本的に結構だと思います。賛成ですから。しかもね、生徒の意見を聞いたって、自分の通ってる塾に行くよりも近いし、行き慣れている学校のほうがずっと楽だと。それから、やっぱりコストも安いということだったら、大体、日本の学力そのものが低下しているときにね、そういう今までなかった新しい方法でそれを補てんする努力をするということは大変結構じゃないでしょうか。

【記者】和田中に限らずですが、公立の学校で塾と連携している所はいくつかありまして、そういったことが行われている背景には、学校教育の質的な劣化があるのではというような指摘もあるのですが…。

【知事】正にそうじゃないですか。この頃の先生見たって、実に拙劣だし、教え方は下手くそだし、訳のわからない先生になってね、黒板ばっかり見て、生徒の顔を見られない教師までいるんだから。これはやっぱり、教師そのものの能力も落ちてるしね。かといって、親がうちで宿題を手伝うほど、お父さん、お母さん、余裕があるかどうか知りませんが、お父さん、お母さんの水準だって落ちてるしね。子どもはたまったもんじゃないと思うよ、これは本当に。

【記者】今後、こういった塾との連携のような取組みというのは、恐らく増えていくと思われるんですが、知事はどうお考えですか

【知事】さあ、それはあなた方の推測で、私は結構なことだが、効果があったら日本中、敷衍(ふえん)していくんじゃないの。ということは、やっぱり、学校というものの沽券から考えれば、情けない話だよね、これは本当に。

 しかも、この頃ワイルドペアレント(学校に対して自己中心的で理不尽な要求を繰り返す保護者。モンスターペアレント)も出てきたり、授業の最中でも、子どもを叱ると何かひんしゅくを買ったりだね。

 私、この前も話したと思うけど、もうリタイアした私の友人がね、キャリアがある商社の社長をしたり、メーカーの重役をやってたような連中が生きた英語を使ってるから、知ってるから、ただで教えますと言ったら、地元の中学へ行ったら感謝されたけど、最初の日、校長が何を言ったかというと、どうか授業中、生徒を叱らないでください。こんなものでね、教育なんてできる訳ねえよ、本当に。校長そのものがどうかしてるよ、そんなやつは。

【記者】昨日から猪瀬(直樹)副知事がダボスの方に行かれて、現地で都市関係のセッションにも参加されるようですが、猪瀬副知事に今回の出席で期待されることというのは、どのような…。

【知事】僕が本当は行くつもりだったんですけどね、風邪こじらせましてね、体調もよくないので、自信がなかったんで行ってもらったんですが、まああの人はね、博覧強記の人だしね、都市問題を理解しているから、レトリックもある人ですしね、頑張ってきてもらいたいと思います。帰ってきての報告楽しみにしていますから。

【記者】何か具体的に、行くに当たって指示されたこととかあるでしょうか。

【知事】場所もヨーロッパですからね、環境問題に対するスタンスというのは、アメリカや中国やオーストラリアと大分違う。そういう中で東京がやっている努力というものはね、相対的に評価され得ると思うし、そういうことを猪瀬さんが東京を代弁して言ってもらうことに期待していますけども。

【記者】ありがとうございます。

【知事】ついでに申しますとね、リビングストン(ケン・リビングストン)という大ロンドンの市長がこの問題に関心を持っていて、ロンドンで最初の会議をやった。どうもあまり充実しない。東京の実情を聞いたら、東京にもぜひ来てくれと言うので(昨年)ニューヨークに行きましたけども、お話ししたように全然役に立たなかった。言うことは言っているけど、何もやっていないんだよね。東京にとっては参考になるもの1つもなかったけども。2年先にソウルに次の会議が決まったけど、ちょっとやっぱり世界の状況はそんなものじゃ済まない。2年ごとにやって追いつくような問題じゃなくなってきたんでね。東京が一番専門性が高いから、東京で高度な専門性のある会議をやってくれと言うんで、私は引き受けましたがね。

 ただ、この間みたいにね、何か首長が集まって、大変だ、大変だと言ったってしようがないんでね。「まず、集まるのは結構です、その前に、私たちの責任で世界中の優秀な学者を集めるから、その人たちの話を冷静に聞いてだね、その上で政治家としてその問題をどう受けとめて、どういう責任を履行するかということを考えろ、そういう会議じゃなきゃやらんよ」と言った。その趣旨に則った会議をしたいと思っている、この10月頃。

 本当にこのままでいくとちょっともたないね。地球は本当にチッピングポイントを過ぎた、振り子の揺り戻しの限界点を過ぎつつあるんでね。

 やっぱり人間ていうのはそれなりに責任感持っているからね。自分の目の周り、目の届く範囲の問題には責任感がある、能力のある人は責任の履行に努めるでしょうけど、ちょっとそれじゃ済まなくなってきたですね。私たちが今ね、環境問題に関して果たさなくちゃいけない責任というのは、多分、私なんか相見ることはないだろうけど、25年先に生まれているだろう私の孫の子ども、諸君は若いからあれですがね、しかし、あなた方だって、これから結婚、している人もいるだろうけど、これから若い諸君が孫を持ったときに、その孫たちがね、この地球に一体人間としてどういう形で存在できるかということを考えたら怖いですよ。これ、あと5年でもうポイント・オブ・ノーリターン過ぎるっていうことは、ヨーロッパの学者はすべて言っている訳だから。

 NASA(米国国立航空宇宙局)のジェームズ・ハンセンなんていう学者はですな、とにかくあと18年で北極の氷は全部なくなる。今世紀の終わりには海の水位が5メートル増す。そのままじゃ、あと50年たって、この世紀の半ばに2メートル半増したらどうなりますか。東京、ニューヨーク、シドニー、上海、海に面した大都市は全部水没しますよ。しかも、飢饉がどんどんどんどん進んでいってね。今だって1秒間に0.4人死ぬというから、餓死して、つまり、2.5秒に1人、世界で餓死している人がいる一方、1秒間に2人、人口が増えているんだ。この分でいくと、もう今世紀の半ばには膨大な人口を地球は抱える。一体そのための食料自給というのはどうやるんですか。この、天候異変というのは、もう飢饉にこそつながれ、豊作につながることは今までに絶対ないんだから。

 これ、日本だってね、食料自給率、相当考えなかったら、そのうち大変なことになりますよ。これ、10年、20年先のことなの。北海道はね、コシヒカリ二毛作になるからいいだろうなんてばかなことを言う人がいるけどね、そんなものじゃ済まないですよ。そういうときに、やっぱりどうやって責任を果たすか。だから、私は非常に苦しいんだけども、東京はあまり厳しい規制を環境問題でやったら、オリンピックに金出さないと経済界は言うんだよ。オリンピックはやりたいけどね、経済界の人たち、あなた方それなりの重鎮として、経営者のトップとして誰に対してどういう責任を負うかといったら、企業に対する責任、社員に対する責任を負ったって、その子どもの子どもに対する責任を今のリーダーが負うつもりがあるかないかといったら、それまでの文明史観、あるいは哲学を持っている人は非常に珍しいですな。やっぱりそれはね、学者のほうが鋭敏だからね、そういう指摘をしだしたんだよ。

 あとはね、僕はこの間、福田(康夫)総理にも言ったんですけどね、「日本が原爆なんかつくったりするよりも、あなたはね、ツバル1つ救ってやることのほうが、よっぽど国の、要するにプレステージにかかわりますよ」と。確かにそうだって言うんで、鴨下君(鴨下一郎 環境大臣)を送って、あとは国がどういうふうにするか知らんけど、福田総理がツバルの問題を持ち出して、ダボスで啖呵切ってもらいたいね。

(テキスト版文責 知事本局政策部政策課)