石原知事記者会見

平成19年12月6日更新

石原知事定例記者会見録

平成19(2007)年11月30日(金)
15:01〜15:20

知事冒頭発言

1.アジア大都市ネットワーク21のマニラ総会に出席して

【知事】冒頭、私から2つ申し上げることがあります。

 先般、マニラでのアジア大都市ネットワーク21の総会に出席してきました。これが年ごとに充実してきたことは、非常に世界に対してのアジアの存在感を示すもので、大変結構だと思います。

 総会はですね、むしろルーティーン化してきて、その中でいくつか報告がありましたけども、それぞれの個々の問題、治安対策とか、新しい疫病対策とか、あるいは災害対策とか、そういったもので頻繁に専門家の会合が持たれていまして、それが非常に充実してきているのは大変結構だと思います。

 やはり1つの特徴として、この間のニューヨークでの会議でも感じましたけども、やっぱりそれぞれの主要の都市が、国そのものよりも問題意識を先鋭に持っていて、積極的に取り組もうとしているというのは大変結構だと思います。

 今回の主なテーマは、やっぱり、特にマニラのようにやたらに人が増えて、都市の中でのいろんな市民の格差ができてきて、それが非常に摩擦を生んでいるようですけども、それをどうしようかという問題。これは東京にも違った形ではありますが。

 もう1つは、やはり地球温暖化についてどう対処するかということでありまして、東京もですね、ニューヨークで感じましたけども、アメリカやヨーロッパの大都市に比べて進んだ対策をしていますし、そういった問題についての具体的な姿勢を紹介しました。

 そのマニラ宣言のジョイントコミュニケの中で、「地球温暖化は自然と人類の生存を脅かす深刻な環境問題であり、アジアの都市が協力して温暖化ガス排出削減に取り組んでいく」ということを確認しました。

 また、共同事業として、都市と地球の環境問題の取り組みをさらに具体化するために、来年2月に東京で環境技術の実務者会議を開催することにいたしました。

 地球の温暖化の問題というのは、かつてのですね、私も環境問題、閣僚として取り組みましたけども、あの頃の水俣病とか四日市の非常に過激なぜんそくといった問題とまた違って、あの場合にはですね、経済効果とね、要するに、そういった環境問題のトレードオフがきいたんですけども、この温暖化の問題はですね、つまり、取り替えっこ、トレードオフがきかないところまで深刻になっていると思いますね。

 この間の、西澤潤一先生(首都大学東京学長)が会長をしている世界の工業技術の先端技術の国際会議(国際工学アカデミー連合)でも、やっぱり5年ぐらいのうちに相当なことをしないと、もうポイント・オブ・ノーリターンを過ぎてしまう、そういう認識は、特にヨーロッパの学者たちに強かったようですけども、妥当なことだと私も思います。

2.「味の素スタジアム」ネーミングライツ契約更新について

【知事】次は、味の素スタジアムのネーミングライツの契約を更新します。日本の公共施設で初めて、味の素スタジアムに導入した命名権、いわゆるネーミングライツについてですけども、来年2月に5年間の期限を迎えるために、今度、株式会社東京スタジアムと味の素株式会社の間で、さらに6年間の契約更新をいたしました。

 この会見の後に両社は記者発表を行いますので、詳しい内容については、そこで聞いていただきたいと思います。私も出席しますが。

 私から申し上げることは以上であります。その他、質問がありましたら、どうぞ。

質疑応答

【記者】先ほどもおっしゃったように、知事、都市の環境問題というか、温暖化対策に非常に力を入れていらっしゃるんですが、それを掲げてオリンピックも勝ち抜こうとしているんですけれども、一方で、ほかの開催都市も環境重視ということを多分うたってくると思うんですが、その点で東京らしさというか、東京が環境の面でどういうふうにして勝ち抜いていくのかということは、改めて自信のほどをちょっと伺いたいんですけれども。

【知事】いや、自信、自信というものは、これは相対的な問題ですから。やっぱり実態が何であるかということを、IOC(国際オリンピック委員会)の委員が良識を踏まえて見比べてくれれば、自ずと判断がついてくると思います。それは東京はですね、ほかの開催都市に比べて進んでいるところ、遅れているところもあるでしょう。

 ただ、やっぱり10年先のことですから、まあ9年になりましたけども。オリンピックの主催に関係なしにですね、ワン・ディケードというものを想定しての「10年後の東京」というマスタープランをつくりましたから、それをオリンピックがあろうがなかろうが、粛々として進めていく以外にないんじゃないんでしょうか。

 環境が良くなることは、誰もが望むことですしね。それをIOCの委員たちがどう評価するかということは、あとはその判断を待つしかないと思いますけども、やるべきことはやるということが大事だと思いますね。

【記者】法人2税についてなんですが、政府のほうがですね、東京都のほうから3000億円ほどの拠出を考えているというような話が出ておりますが、それについて知事のご所感を伺いたいんですけれども。

【知事】このところ何か揣摩憶測(しまおくそく)というか、いろんな、我々から見ると流言飛語(りゅうげんひご)に近い記事がね、あなた方の責任なんだろうけど、新聞に出ますけどね。どういう裏を取っての報道か知らないけどもね。私、東京都として、そんなことを聞いてもいませんし、考えてもいませんね。

【記者】ふるさと納税についても、導入というような話もちょっと出始めているようですが。

【知事】また?1回消えたお化けが、また出てくるの?それは要するに、税法というものの原理にもとった話ですから。受益者負担ということで、みんな税金を納める訳でね。揮発油税もそうですし、住民税もそうですし。

 例えば、今ターゲットになりかかっているらしい、法人事業税、別に、法人住民税だって、つまり、法人としての受益者負担ということで払ってる訳だから、自分がその地域のために、地域で受けてる恩恵のために払ってる税金がだね、ほかへ持っていかれて、どうやって使われたかわからんというのは、これは納税者にとっては許せないことじゃないですか。そんなもの、言い出すほうが間違ってると思いますよ。ふるさと納税も。考えたらわかることだよ。やっぱり財務省はそれをわかってますからね、どうも小首をかしげてそういう論を聞いてるようだけども。

 まあ、法人事業税に関してはね、勝手に今まで、分割基準、一方的に変えられました。これは何か、抵抗する術がないけどね。法人住民税について、つまり、もしそういう暴挙を国があえて行うなら、これは要するに、東京に在住の法人を代表してでも、東京は、そういうことを言うと都庁の中に心配する人がいるけどね、門前払いを食うと。門前払いを食おうが食うまいが、今まで問題提起されなかったことですから、訴訟を起こしたっていいと思いますよ。そう思ってます。

【記者】そうしますと、最初の質問に戻りますが、法人2税についての姿勢は、知事のお考えは変わらないと。

【知事】変わりません。それから、何か訳わからないこと、とにかく東京は儲かってるから何千億か出せみたいな話もね、もっと具体的に、羽田の第4滑走路のあれのためには、先んじて、東京は立て替えて出してますよね。それを全部パーにしてくれみたいな話だけどね、これも乱暴な話でね、じゃ、一体、その代償に東京はあの飛行場にどんな権限を持てるかといったら、あれ、ターミナルビルや何かはオーストラリアが買っちゃったんだよね、全部じゃないけども。かといって、飛行場そのものの運営権というのは、要するに国がやってることですからね、これはやっぱり債権の対象にならないしね。あの論が出てくる、ただ、泣いて1000億とか2000億出してくれっていうのは、こんな虫のいい話はないんじゃないの。そんなもので国の予算が編成されたら、素人にだってできる話ですからね。やってることが非常に乱暴というか粗暴というか、国民、都民の皆さんが良識で考えてくれたら。言ってみれば、ちゃんちゃらおかしい話だと私は思いますよ。

【記者】新銀行東京の中間決算が今発表されていると思うんですが、決算について知事はどのようにお考えでしょうか。

【知事】概略、昨日銀行から聞きました。どう評価するかということの質問なんかもあるんでしょうけども、当期の損失は、経費の削減や経営努力によって計画よりもやや改善したと聞いてますね。3億円ぐらい、とにかく予想よりも効果が上がったと。

 ただ、しかし、やっぱり経営状況というのは非常に厳しいですし、今後とも、デフォルト(債務不履行)の抑制や営業経費の削減など、経営改善の取組みをもっともっとシビアに、着実に進めていく必要があると思います。

 それからね、日本の金融産業が停滞してる中で、私、この銀行に限ってじゃなしに、どうも、日本の国の役所も、それから、民間の金融関係の大企業も、ちょっと、マネーゲームというと言葉は良くないけども、そういうものに関してノウハウというか、知恵が足りないんじゃないかしら。完全に外資に手玉に取られてる感じがしますね。ですから、やっぱりちょっとその気になって出直さないと、本当に食い散らかされて、それで終わりということになりかねない。

 今度の問題というのは、私もこの銀行心配してますけど、それだけじゃなくてね、ほかの金融事情を見てみても、非常にそういう点で不安ですね。

【記者】平成21年度までの黒字化という新中期計画もありますけれども、その計画に向けて今回の決算というのは。

【知事】少しずつでも実績を積み上げていく以外にないでしょうね。起死回生の妙案というのはそうざらにあるものじゃないし、あれば、ほかの企業だってやってるでしょうから。ただ、東京が持ってるいろんなオプションがあると思うんですけど、そういうものが今まで果たして十全に活用されたかというと、そういったものはあまり見受けられないんでね。だから、今度、有能な局長を、銀行の創設にも携わった人ですから、送り込んだ訳ですけどね。

【記者】知事が力を入れて、都民にも好評な、認証保育所の件ですけれども、荒川区のほうで、認証を受ける際、虚偽の職員の名前等を使ったのではないかという疑惑が浮上していますが、これについて知事はどうお考えでしょうか。

【知事】この認証保育所については、報告では、都は既に立入調査しまして、誤った点を指導してると聞いてますけども、何か、一部の政党が、「だから認証保育所はだめだ」みたいな暴論を吐いてるけども、そんなことじゃなくてね、認可保育所であろうと、認証保育所であろうと、つまり、その規格の中で、間違った点があれば、その保育所の性格の区別なしに、これはやっぱり立ち入りもして、きちっと、是正をさせていくのが都の責任だと思いますし、実際にやっております。

【記者】最初2カ所から始まったものが、今およそ400カ所までに広がっていて、働く女性にとっては非常に重要な施設になりつつあるんですが、それのイメージダウンといいますか、そういった影響について何か懸念されていることというのはございますでしょうか。

【知事】いや、何というんですかね、一つでもそういうマイナスのイメージをつくるあれがあると、はたが迷惑しますけどね。だからこそ、やっぱり都が積極的に指導して、とにかくペナルティーも加えて、こういうものをもっと確かな是正に導いていきたいと思っていますけども。

【記者】先ほどの新銀行の話なんですけれども、先日の会見でも、知事は都のポテンシャルを引き出すような業務を津島さん(津島隆一 新銀行東京代表執行役)に頑張ってもらいたいというようなことをおっしゃっていたんですけども、今、いろいろ言えるかどうか制約があると思うんですが、どのようなイメージで、いつ頃明らかになるのかといったことを伺いたいと思うんですが。

【知事】それは津島さんもベテランの都の官僚ですから、都の持っているポテンシャルに精通していると思いますし、それをどう活用するかというのは、現場に入って他のスタッフとも相談して、これから具体化していくと思いますから、私がここでああだこうだ言うことじゃないんじゃないでしょうかね。言うと、また株主の越権だということになりますしね。行った限り、そういうノウハウを持って、前の都の幹部職員がそのノウハウを生かして、それを活用しながら、銀行の再生につなげてもらいたいと思っています。

【記者】あと、かなり決算としても厳しい状況であることは変わりない訳ですが、毎回聞いている質問なんですけれども、追加出資は、今のところは考えてないということですか。

【知事】今、考えていません。まあ、そのニーズがあるかないかということも、これから新しい責任者の報告を踏まえて、要するに、考えるべき問題だと思っていますけども。

【記者】先ほどの法人2税の質問と似たような話で恐縮なんですが、一部報道で、都の税収3000億円を地方に移転することで、都の内諾を得たというものがあるんですが、内諾していないんですよね。

【知事】全く、全く根拠はない、ガセネタだね、それは。

【記者】わかりました。ありがとうございました。

【知事】随分期待が濃いみたいだけど、そう簡単に人の財布に手を突っ込んで、親がとにかく働きが悪いからさ、子供の小遣いをかっぱらうみたいなことは、やっぱりおかしいと思うよ、僕は、本当に。

【記者】昨日、都税調の中間報告で、環境税の導入に向けた検討について求められておりますけれども、知事は、環境税に対してどういうふうにお考えでしょうか。

【知事】これはもう少し具体的な報告を聞きませんとね。とにかくやる、やらんにしろ、政策に反映されなければしようがないことですから、詳細な報告を聞いて考えますけども。やっぱり本当にトレードオフのきかないところまで、温暖化の問題が来ているということの認識を、その対象になる市民なり企業はどれほど持つかということでね。

 ただ、私もね、今度のマニラの会議に行って、みんな、何というのかな、それぞれの国では、発展の度合い、濃淡はありますけど、やっぱりその国では首都の、あるいは首都に近い都市の幹部だから、レベルより上のインテリジェンスを持っている人でしょう。それが異口同音に、環境問題について温暖化を踏まえて危機感を言うのは結構だし、大事なことだけども、いざそれを政策に移して、例えば、いくということにすると、この日本でだって、東京でだって、やっぱりCO2の削減をノルマ化することに企業は抵抗するし、繰り返して申しますけれども、この間やった世界の先端工業技術の国際会議で、経産省が「会議の主題を環境問題にするな」なんていう圧力をかけてくる。ばかな話で、これは昔と全く同じだ。昔の通産省とね。

 そんな発想で、要するに、役人だって人間なんだろうけど、国家のエリートかどうか知らないけどもね、そういった連中がそれなりの責任を果たしたことになるかといったら、これはやっぱり大きな誤謬(ごびゅう)で、目の前、足元しか考えていない、実に、何というんでしょうかね、情けない姿勢だと思いますな。

 ですから、その環境税の問題なんかも、やっぱり結局、それを行うにしても、それを受けて、税なら税の負担をする市民なり企業というものの環境問題に対する人間としての、どれだけ先になるかわからないけど、自分の首都に対する一つの責任というものの濃淡にかかってくるんじゃないでしょうか。

 はい、それじゃ。

(テキスト版文責 知事本局政策部政策課)