石原知事記者会見

平成19年9月13日更新

石原知事定例記者会見録

平成19(2007)年9月7日(金)
15:01〜15:24

知事冒頭発言

1.名誉都民について

【知事】冒頭、3つほど申し上げることがあります。

 最初、名誉都民でありますけど、今年の名誉都民の候補者として、50音順に申しますと、加瀬三郎さん、それから多湖輝さん、松平康隆さんの3名を選びました。

 加瀬さんは、先天性の疾患のために、小学校を卒業して間もなく両眼を失明されまして、その後、独学で1,000種類を超える折り紙を習得されました。世界40カ国以上の学校や福祉施設を訪問して、折り紙を通じた民間外交によって、障害者への理解を深める活動に熱心に取り組んでこられています。

 多湖さんは心理学者であり、皆さんご存じのかつてのベストセラー「頭の体操」の著者でもありまして、一方、「心の東京革命」の推進協議会会長として、青少年の健全育成に尽力していただいております。

 松平さんは、バレーボール全日本男子チームのコーチ・監督として、チームを東京オリンピックでは銅メダル、メキシコ五輪では銀、ミュンヘンのオリンピックでは金メダルに導いた大きな功労者でありまして、また、現在も世界の主流戦術になっている「速攻」、「移動」、「時間差」などの攻撃システムの基礎を築き上げて、バレーボールの国際的な普及発展にも貢献されました。

 それぞれの分野における3人の素晴らしい功績は、都民が敬愛し、誇りとするものでありまして、次の都議会で同意がいただければ、10月1日に顕彰式を行う予定であります。

2.地方六団体のオリンピック招致支援決議について

【知事】次いで、全国知事会の会長の麻生さんのいろいろご努力で、地方六団体のオリンピック招致支援を決議していただきました。本日、地方六団体から、オリンピック及びパラリンピックの2016年東京招致を支援する決議をいただきまして、大変心強く思ってます。

 全国の地方自治体の連合組織が、足並みをそろえて決議を採択してくれたことは、日本全体が東京オリンピックを支援する証しとして、大変心強いと思っております。各団体の会長さんをはじめ関係者の皆さんに心から感謝いたしておりますとともに、この期待に応えて、必ずや東京オリンピックを実現させたいと願っております。国も近々閣議了解を行うと聞いておりまして、東京のオリンピック招致は、名実ともに国家プロジェクトとなると思います。

 また、今月中にはIOCから立候補を申請した都市が発表されまして、いよいよオリンピック招致は本戦に入るわけでありまして、我が国が総力を結集し一丸となれば、必ず勝利できると思っております。都民、国民の皆様のさらなるご支援を願いたいと思っております。

3.低所得者に対する個人都民税の減税の見直しについて

【知事】次いで、選挙の事前にも申しましたが、低所得者に対する個人都民税の減税、公約の1つにしました。これはちょっと見直すことにいたしました。

 というのは、何かいい政策の建言をしてくれと言っておりましたが、その出どころである都の幹部から「これを建言しましたが、しかし、いろいろ考え直してみると、一律の減税という形は、逆に違う不公平も生じるおそれがあるので、行政としてきめの細かい努力をすることに直したほうが、都民のニーズにこたえることになるんじゃないか」という意見がありまして。昨日NHKからも取材がありましたけど、3月に減税を公表して以来、低所得者層の現況について、いろいろ把握するために検討を行ってきましたが、その結果、低所得者層の中には、所帯主以外にも収入がある方や、多額の預貯金を保有している方なども多く、真に困っている方が、80万人のうち一部にすぎないと推計されまして、生活に困っている方の状況を正しく把握した結果、税金の免除という形ではなくて、政策として手当てする方法が公平と考えました。

 低所得者層への支援が必要であるという認識は、基本的に変わりありませんが、将来に向けて、生活改善や正規雇用への道を切り開く観点から、より効果の高い新しい政策を構築し、公約を進化させていきたい。これは方向転換、一種の公約の進化ととらえていただきたいと思います。

 詳細については、関係局に聞いていただきたいと思います。

 私から申し上げることは以上であります。質問があったら、どうぞ。

質疑応答

【記者】今回、首都圏を直撃した台風9号なんですけれども、被害状況はどのように受けとめていらっしゃいますか。

【知事】おかげで割と軽く済んだ、被害が少なくて済んだと思っています。一時、世田谷のある部分で多摩川が非常に水位が増しまして、河川敷が水浸しになりましたけれども、氾濫のおそれがあるので退避勧告をしましたけど、間もなく解除になりまして、その程度で済んだことは僥倖(ぎょうこう)だと思っていますが。

【記者】その多摩川で、河川敷で生活しているホームレスの人たちが、避難が遅れて流されたというような情報もありますけれども、ホームレス対策というのは、どのようにお考えでしょうか。

【知事】こういう災害の折のですか。

【記者】はい。

【知事】それ以前に、ホームレス対策というのは、自治体でいろいろ腐心してますけれども、河川敷の中州に住んでいる人がいるとはちょっと知らなかったんですが、私も大田区に住んでますので、土手をよく散歩したりすると、特に対岸の神奈川県側に多いんですけれども、その限りでは土手の上だからと思っていましたが、今回は中州にいる人たちが取り残されたというのは、これは日ごろの関係自治体の、当然日本は台風国ですから、増水ということはあるわけでして、その配慮が足りなかったのか。

 ただ、やっぱり、「そこは危ないですから、万が一のことがございますので、他へ住んでください」という勧告しても、彼らは彼らなりにそこを選んでいるわけで、なかなか言うとおりになってくれない節もありますけれども、やっぱり反省すべき1つの案件であったと思います。

【記者】知事が3番目におっしゃった個人都民税の免除の関係なんですけれども、知事選の直前に打ち出されたということで、格差が広がっていると言われている中で、低所得者への目配りの施策の1つだったと思うんですけれども、そういった知事の姿勢に共感して投票された方も多いかと思うんですけれども、その辺、公約違反というふうに受け取られる向きも…。

【知事】だから、公約違反じゃなしに、より良い施策を講じるということですから、何が違反ですか。

【記者】では、あくまで、公約に反した形になってしまったというような認識ではないということでしょうか。

【知事】違いますね。より良い施策を講じて、きめの細かい手だてを講じようとしているんでね。

【記者】そのあたり、来年度予算等で政策のパッケージとして打ち出されるということでよろしいんでしょうか。

【知事】このほうが手間暇かかるんですよ、進化した案のほうがね。一律に減税するよりもね。だから、やっぱり、それをしないと、結果として、せっかくやった施策が十全に生きてこないと言うから、より良い方法をですね。しかも、発案した当事者からそういう建言があったんで、私もやっぱり事例をよく考えてみればね。例えば、500万以下の所得と言ったって、かなり富裕の人もいたり、あるいは、500万以上の所得があってもね、養護している親を抱えていたり、お子さんが複数あって、そういうものの学費の問題があったりしてね、やっぱり家庭のケースによって違うと思いますから、そこら辺、やっぱりきちっとした方程式をつくってね、複雑な要素を勘案する福祉というものにしたいと思ってますんでね。君らが意地悪く、どういうふうに来るかどうか、勝手にしてくれよ。

【記者】個人都民税の話なんですけれども、この話を発表された3月と比べても、そんなに社会情勢は大きく変わっておりませんし、当時でも減税の問題点は考えられたと思うんですけれども、当時、なぜ公約を進化させられなかったのか、練れなかったのかということをちょっとお伺いしたいんですが。

【知事】やっぱり政策というのは試行錯誤がありますからね、どういう経緯でこの案が見直されて、これから先、どういうことを考えているかということは、当事者に聞いてください。

【記者】当事者とおっしゃいますと、今回の政策転換、進化には、庁内の方からのご提言があったからということでよろしいんでしょうか。

【知事】そうです。私は、これ、いいことだと思いますよ。朝令暮改じゃないかという節もあるかもしれないけどね、国の役所がだめなのは、朝令暮改しないので。例えば、文部省の言い出した「ゆとり教育」なんというのは、明らかに失敗したのに、いまだに根本的に直せないというのはね、僕は、朝令暮改というよりも、昨日言ったことを、今日、もうちょっと反省して、より良く政策をブラッシュアップしてるんだから、いいことじゃないですか。それは非常に健全な行政の責任者の姿勢だと思ってます。

【記者】今回の決断には、いわゆる「東京富裕論」への配慮みたいなものもあったんでしょうか。

【知事】いえ、全くありません。やることは同じですから。都の負担はそれだけあるわけですからね。

【記者】わかりました。

【記者】五輪招致に関してですが、近々に閣議了解がされるということですけれども、その了解の中で、国の財政負担であるとか政府保証みたいなものに限って、今後、期待すること、先月もお聞きしましたけれども、また内閣もかわり、こういうことまで踏み込んで、例えば、晴海のスタジアムに対して、どこどこまで補助が欲しいであるとか、そういったことはありますでしょうか。

【知事】これはやっぱり、基本的にね、今まで東京でオリンピックを主催しよう、やろう、行おうという国家のプロジェクトとしての認定というのは、閣議了解というのはなかったわけですから。今度、最初の段階として閣議了解してもらって、さらに具体的な案件についてはすり合わせをしていくわけでね、これですべてが決まるわけじゃありません。ですから、これから、都の要望、国側の姿勢というものがすり合わせして、できるものはできるようになっていくでしょうし。

 それから、一番大事なことはね、もともと国家の事業であるインフラの整備というものが、オリンピックが1つの引き金になって拍車がかかればいいと思ってますんでね、そこら辺の、国全体の社会資本というものの推進、経営というものを、国がどういうふうにとらえて、どういう認識を持っているかというのは、これから討論の対象になると思います。

【記者】今後また世論調査なども行われていくと思うんですが、どのくらいの支持が必要だとか…。

【知事】これはやっぱりね、IOC(国際オリンピック委員会)も評価しているみたいな、そういう世論というものの形成に努力していこうと思ってますけどね。国民全体が、政府も含めて、背中向けてるんじゃ、とても国家のプロジェクトになりませんし。

 ロンドンに決まった際だって、前の総理大臣のブレア(トニー・ブレア 前イギリス首相)が、とにかく大見得切ってくれて助かったとリビングストン(ケン・リビングストン ロンドン市長)も言ってましたし。それから、この間の冬季オリンピックだって、グアテマラであったときに、プーチン(ウラジーミル・プーチン ロシア連邦大統領)が、IOCの会合のある会場の間に即製のスケートリンクつくってね、これはさすがにIOCが、そういうデモは困ると言って、使用したパフォーマンスを禁止したらしいけど、それでも、そういうものをつくったということそのものは大きなパンチになった。やっぱり国の姿勢がなかったら、こんなもの、とてもできるもんじゃないし。

 振り返ってみると、40年前の東京のオリンピックのときの政府というのは、高度経済成長に向かいつつある時代の自負のようなものがあってですね、その数年前には、「もはや戦後ではない」という経済白書も出ましたし、池田内閣のときに、普通だったら、当時の文部省が担当主務官庁になるんでしょうけど、しかし、それを超えて、池田さんの後、総理大臣になった重要閣僚の佐藤(栄作)、当時は通産大臣でしたかな、この人が担当大臣になったというぐらい気合いが入ってましたよ。

 そういう点ではね、ちょっと今、政界が混迷してるんでね、肝心の政府がどうなるか。2年先の10月2日のコペンハーゲンのIOCの大会で、だれが日本の総理大臣で行くのか、そういう言い方は安倍さん(安倍晋三 内閣総理大臣)に失礼かもしらぬけど、これだけ政界が混迷してくると、政府自身も約束し切れないものがあるかもしれない。

 しかし、よしんば違う政党の政権ができても、ナショナルプロジェクトとしての継続性というものを認識した上で、国の力を仰がなければ、これはできないし、国民の夢もかなわないと思います。

【記者】やはりまだまだ政府が、こちらから見ると、完全に前を向いていないのは、混迷していることが原因であると思われますか。

【知事】いや、それだけじゃなしにね、伊吹君(伊吹文明 文部科学大臣)なんかの発言も聞いてますが、気持ちはわかるんですが、彼自身も大蔵省の出身ですしね。国の財政はかなり逼迫していますよ。ただ、それを補うべき経済効果というと、何だ、金のためにやるかと誤解を受けるけども、JOC(財団法人日本オリンピック委員会)とも突き合わせして、かなりの経済効果はあると思いますし、決して無駄な投資にはならない。

 また、IOCも、オリンピックでの社会資本の整備というものが、会場の設置も含めて、レガシー、つまり遺産として健全に継承されていくような、そういう、つまり条件というものを1つの判断の条件にしているようですから、そういう点では、私は国にもいろんな負担をかけることになるかもしらぬが、いずれにしろ、例えば東京のインフラ整備の中での外環とか圏央道のような環状道路は、これがないことが東京の致命的な欠点になるわけで、これは日本全体の経済にも響いているわけですからね。やっぱりそういうものを優先的につくっていくことが、私はやっぱり国家の経営のためにも必ずプラスになると思う。そういう認識をぜひ政府全体で持ってもらいたいと思ってます。

【記者】住民税のことでお伺いしたいんですけれど、先ほど知事は政策として手当てする方法に転換するというふうにおっしゃっていましたけれども、具体的に案というのはあるんでしょうか。

【知事】いや、ですから具体的な案といいますか、具体的な方程式をね、これはやっぱり調査をしなくちゃいけないから、申告されているボーダーラインの所得の前後の家庭というものを調査するというのはかなり手間暇かかると思います。しかし、家庭の構成というのは申告すればわかることですし、お子さんが何人いるかとか、それからやっぱり介護している老人がいるとかいないとか、そういうものを勘案して、必ずしも緻密な方程式になるとは限らぬが、しかしやっぱり一種のばらまきでね、一律に所得のボーダーラインを限って、それ以下の人は減税するということでは、逆に不公平が出てくると思うんで、そこら辺の方程式を今つくっています。

【記者】それから知事、先ほど公約違反ではないというふうにおっしゃっていましたけれど、都民の中には、選挙のためだったんじゃないかと思う方もいらっしゃると思うんです。

【知事】だから、言ったことをよりよくブラッシュアップするんで、都は都なりの財政の余裕もありますから、やろうと思えばすぐできますよ。しかし、それでは逆に不公平ができてくるから、もうちょっと緻密なものをつくろうということで、それを建言してくれた、それは菅原(秀夫)、現在の副知事ですよ。菅原さんからも建言があって、「自分自身もそういう反省をしているんで、ひとつこれを考え直してくれ」というから、それはやっぱりより良い結果になるならば、そうしたほうがいいじゃないかということで、その所信を発表したわけです。

【記者】都民の理解は得られると思いますか。

【知事】ですから、結果を見てもらえばわかるんで、やらないわけじゃないんだから。もっといい方法でやるということで、これは要するに政策の説明をすれば、必ず理解は得られると思います。

【記者】同じく知事選のときに、生活者をサポートするための公約として、子どもの医療費を無料にしますということを掲げられたと思うんですが、23区はもう今年の10月から、足立区なんかも追随して、22区では実質もう全体的に無料になるんですが、多摩だと財政力の制約で、就学前がぎりぎりという町も多いんですが、これは知事は、都下全域に及ぼす時期はいつごろというふうに目指されてて、多摩の市や町からすると、今後付加的にかかってくる部分の財政負担は都でやってほしいという意見も強いんですが、これはあくまで実施する市町村にも応分の負担を求めていくということになるのか、都が余分にこれからかかってくる分は全部持つという姿勢なのか。これはどちらなんですか。

【知事】それは今、検討してます。いずれにしろ、子育てにかかる経済支援というのは、本来は少子化の時代で、これが大きな案件になっているわけで、担当の大臣もできているんですから、国が具体的に積極的に講じていくべきものですよ。しかし、これは非常に不十分ですから、都は都でできることをやろうということで、所得の格差の是正を図りつつ、中学3年生までの医療費というのはゼロにしようということを言い出したんですけども、今の都民税の問題と同じように、やっぱりちょっと複雑な方程式をつくってやらなければ、いろんな指摘を受けると思いますし、これは今、実現すべく、急いで準備してます。

【記者】警視庁の巡査長が女性を殺害して、自分も自殺したということの退職金の絡みでお伺いなんですけれども、9月の三定(第三回定例議会)で退職金に絡んで改定するという提案をされるんでしょうか。

【知事】します。

【記者】中身としてはどういうような形を。

【知事】ですからね、案ができてますけども。今度のケースは、常識で考えたって論外なことですよ。ただ、これから先、どういったらいいのかな、ケースによっては、何でこういう事態なのに退職金を払ってもらえないんだという異議申し立てというか裁判が遺族から起こる可能性も、事件によってはあると思うんです。ですから、それはやっぱり都なら都の裁量で是非を決めるという、そういう幅を持った条例にしようと思っています。

 はい、それじゃ。

(テキスト版文責 知事本局政策部政策課)