石原知事記者会見

平成19年9月6日更新

石原知事定例記者会見録

平成19(2007)年8月31日(金)
15:02〜15:23

知事冒頭発言

環境CBOの創設について

【知事】冒頭1つ申し上げます。

 環境問題に関するCBO、社債担保証券、環境CBOを創設いたします。東京の中小企業の資金調達を支えるために、これまで毎年実施してきたCBOですけれども、今度日本初の取組となる環境に努力する会社の財政的な支援のために、環境CBOを創設します。環境CBOの特徴は、従来から実施してきたCBOに二酸化炭素削減という地球温暖化対策の視点を取り入れたことでして、今年6月に策定した東京都気候変動対策方針に基づく取組の一環です。具体的には、社債の償還までに一定量の二酸化炭素削減を実施する企業を対象として、都は「地球温暖化対策推進基金」を活用して債券の一部を無利子で購入することによって、参加企業の社債発行利率を引き下げます。これを梃子(てこ)に、中小企業の省エネ化を図るとともに、資金供給の円滑化を同時に実現したいと思っています。

 また、都民向けに債券を販売することによりまして、地域住民も中小企業への資金供給を通じて、地球温暖化対策の一翼を担ってもらうことにもなると思います。さらに、東京発の環境CBOの取組を自治体広域連携を図ることによって全国に広めて、都が日本の気候変動対策をリードしていきたいと思っています。国はNOxに関しても、経済産業省の議論の中でも、中小企業の省エネ推進のための支援などの強化が必要との意見がありますけども、具体的な施策はまだ全く示されていませんし、都が中小企業の実情を踏まえた具体的な省エネ促進策を今後とも展開していきます。国の環境問題の姿勢は、冒頭、ちょっと混乱した言い方をしましたが、NOxなんかに関してもね、法律をつくった、つくったと言うけど、これはざる法ですよ。これ、皆さん、もう一回勉強し直して、精読してみるとわかりますけどね、問題のある古い車なんか全然対象になっていない。こんなものでNOxそのものを軽減できる訳がないです。いずれにしろ、地方自治体がそれぞれの現場を踏まえてのこういった施策を進めていくことが、国をも動かすんじゃないかと思っています。私から申し上げることは以上です。質問があったらどうぞ。

質疑応答

【記者】きのう計画が発表されました三宅島のバイクイベントなんですが、国内のバイクメーカーは協力を辞退しましたけれども、イベントへの影響というのは、どのようにお考えでしょうか。

【知事】ないと思いますね。スポンサーは、これからいくらでも探しますから。何もフォーミュラのようなレースにね、ファクトリーチームがですね、メカニカルに、全面的にバックアップする必要はない。要するに、素人に来て走ってもらえばいいんでね。ですから、危険な公道は除外してですね、来年からは、この間も村長と話しましたけれども、全然周りに人が住んでいない、小っちゃな半島みたいなのがあるんですよ、溶岩でできた。そこにも公道がありますからね、そういったものを使ってやろうと思うし、今年は、まあ、それは間に合いませんから、イベントに参加したり、あるいは飛行場を使って、瞬間的にスピードを出す何とかというレースがあるみたいだけど、これも世界で人気があるそうですから、これはやります。飛行場も、公道とは言わないけど、要するに公共のスペースですから、それをもってメーカーが何と言うか知りませんが、来年からは一部の公道を使って、もっとエキサイティングなレースをやります。それは村長とも合意しました。別に、オートバイのメーカーが来て、ピンからキリまで、一から十まで面倒見てもらう必要はないんでね。ただ、やっぱりイベントの人気を高めるためには、東京都の責任でスポンサーも探しますしね。断って、繰り返して言いますけど、サーキットだって事故も起こるし、人も死ぬんで、自動車レースなんかもっとだ。つまり、「危険だ危険だ」というゆえんがよくわからない。危険はやっぱりライダーそのものの負担になりますが、それを最低限に食いとめる努力はこちらもしますし、整備もしますから。ただ、それでは一体どうやってあの島を興すかといったら、やっと飛行機も飛ぶ目処がつきましたけれども、やっぱりあの荒涼として荒れ果ててしまった島を島民のためにも何とか興して、もう一回リバイブさせるためには、いろんな知恵を出さなくちゃいけないし、いろんなイベントをしないと人は来ませんからね。

【記者】先日、立川で起きました、警察官が女性を、貸与されていた銃で射殺するという、無理心中のような形でという事件がありまして、その後、その警察官に対する退職金が支払われる、退職金支払いを拒む理由がないということで支払われるということで、警視庁のほうにはかなり批判が相次いでいるようなんですが。

【知事】その警察官に?

【記者】はい。

【知事】退職金を払うの?

【記者】退職金を払うという…。それが、東京都の職員への退職金手当の規定に基づいて払われるということになっていまして、批判が…。

【知事】当然だろうね。

【記者】それについて知事のお考えを。

【知事】僕は初めて聞きましたがね。それはやっぱり警視庁の見識の問題じゃないですか。やっぱり危機管理というか人間管理の問題でね。これは私はやっぱり論外だと思いますな。自分が死んだから自殺という訳にはいかん。人を殺しているんだから。そんな訳のわからん人物にだね、これだけの事件を起こして警視庁が、どういうルールがあるか知らんけれども、退職金を払うというのは、警察の沽券全体にかかわるから、しっかり考えてもらいたいね。

【記者】都の条例に基づくということなんですが。

【知事】条例っていうのは、条例としてあるでしょう。しかし、その死んだ警察官に同情か憐憫(れんびん)があるかしらないけど、やっぱり世間というものとの兼ね合いでね。しかも、警察という生命の安全を本来預かる立場の人間がそういうことをしたんで、それにまで条例があるから退職金を払うっていうのは、私はちょっと信じられないし、初めて聞いた話だけども。私が都民だとしたら、やっぱり非常に違和感を感じるし、警察に対する信頼っていうものも阻害されるんじゃないかという気がしますがね。

【記者】横田の軍民共用化についてなんですが、12カ月以内に結論を出すという日米政府間の会議がもうそろそろ期限が迫っておりますが、知事がどのような感触を得られているかというのはいかがでしょうか。

【知事】これは残念ながら後退しましたね。両方とも政府が何か弱腰になっちゃったね。ブッシュ(ジョージ・ブッシュ 米国大統領)はレイムダックだし、安倍(晋三)総理には2度ほど、ブッシュと会う機会に念を押してくれと言いましたが、つまり、小泉・ブッシュ会談で、サミットとしての合意で事が非常に動き出したんだけど、途中、今度アメリカ軍のトランスフォーメーション(変革・再編)の問題が出てきて、それとの兼ね合いでごちゃごちゃにされたけども。大体どこの国の軍人も役人ですけども、要するに、自分の握っているものは放したがらないんですよ。手放したくないんですよ。それでね、せっかく杉山委員会(横田基地軍民共用具体化検討委員会)で具体案を出して、あの飛行場のニーズってのはどれだけ高いかということをちゃんとしたのに、いざ段になると、どこに弾薬庫があるから、こうだとか、ああだとか、具体的な案を踏まえて事を動かそうとしない傾向が出てきたんで、ちょっとね、あることを考えています。これは小泉前総理にも相談して、ちょっと彼の力もかりて。それから、私、今はいないですけども、戻ってきたら、シーファー大使(トーマス・シーファー 駐日米国大使)にも会いますが、やっぱり政治レベルの問題に引き戻して考えてもらわないとね。アメリカは一方では、オープンスカイ、オープンスカイと言っている訳でしょう。オープンスカイは大変結構です。これはやっぱり国際的な空のアクセスを持つということは、その国の繁栄のために不可欠のことだけれども、アメリカやほかの国が言っているのは、言っちゃ悪いけども、名古屋とか大阪じゃなしに、やっぱり首都圏なんですよ。ですから、それを満たすためにもキャパシティーを増やす。増やすためには、使っていない横田を返せとは言っていない、とにかく共同使用、もしくはあそこが軍事的に非常に頻繁に使われるような事態になったら、これはやっぱり考慮しなくちゃいけないけど、そういう事態ってのをいちいち想定したら、万万万が一の話でね。今使っていないんだから、とにかくこの段階で使わせろと言っていることでね。この問題について、外務省も防衛省も非常に積極的だ。防衛省なんか、ここでちょっと言えないこともあって、守屋君(守屋武昌 前防衛事務次官)なんか非常に協力してくれた。国交省が本来やらなくちゃいけないことだけどね、何に気兼ねしてか、成田に気兼ねしてか、「そんなに需要がありますかね」とかね。とにかく本当は杉山委員会が、本当は国交省がやらなくちゃいけない問題だけど、政治イシューになっていないから私たちがやったんだ。それを検討してエンドース(承認)するのが本当は国交省の役目だと思いますけどね、国交省がなぜか及び腰というか、あまり積極的じゃないね。だから、あそこに国際線のアクセスというものが、国家の繁栄、社会の繁栄にどれだけ意味があるかという文明論的な見識がないのかね。今度新しい航空局長に話しますけどね。その前にちょっと、どういうんでしょうかね、議論が変にトリビアル(さまつ)な問題になって、そこで膠着しかねないから、ちょっと大きな手を打とうと思います。現にとにかく、これは大した問題じゃないけども、それでも随分経済効果があったんだけども、空域だけは彼らは開放しました。全部じゃありませんがね。こういった問題も踏まえて、いかに意味があるかということを国交省にもう一回認識してもらいたい。冬柴(鐵三)大臣も政治家ですから、わかっていると思うんで、彼にも、留任したというんで、もう一回突っ込んだ話をしたいと思ってますけども。

【記者】じゃ、そのアクションを起こすということは、在日米軍再編とは全く切り離した問題…。

【知事】本当は問題、関係なかったの。ところが、彼らは在日米軍再編を口実に、その話なんかに巻き込まれてしまってね。巧みに巻き込まれちゃったんだね。それから、アメリカの政府側も、そうだ、そうだみたいなことになってね。要するに、ブッシュを離れて、下の役人が非常に姑息なことを考えて、自分たちの利権を守ろうとしているだけの話になっちゃったから。日本はどうもそういう交渉になると弱いでしょう。だから、もっとしっかりしてもらわなきゃ困るんだ、国の役人にね。

【記者】新しい安倍内閣で、元岩手県知事だった増田(寛也)さんが、地方問題の担当大臣になられたんですが、増田さんに対する期待とか注文みたいなのが東京都知事としてあれば、ちょっとお聞かせいただきたいんですが。

【知事】彼は、岩手県で立派な業績を残されたと思いますよ。東京も、首都大学東京の学長の問題なんかも協力してもらって、非常に多としていますが、しかし、県知事、地方の県の知事の立場と、そこで踏まえた経験、認識と、やっぱり国全体を預かる総務大臣のスタンスは違いますからね。その違いっていうものを十分彼も認識していて、彼はもともと国の役人だから。建設省かな。だから、その限界もあるかもしらん、あるいはその利点もあるかもしらないが、やっぱり地方の問題を預かる立場として、物事を複合的、重層的に考えてもらいたい。それを期待しています。大いに期待しています。

【記者】昨今、国も地方自治体もそうなんですけれども、公務員のあり方がやっぱりまた問われてきている時代だと思うんです。それで、知事のおっしゃる首都公務員と言われる東京都庁の中でも、これからの時代といいますか、非常に難しい時代だと思うんですが、知事が求める都庁管理職のあり方というのは一体どういうふうなことなんでしょう。昔、都議会のほうで、理想の人物は吉田松陰という答えもあったかなというふうに記憶しておるんですけれども、都庁における管理職のあり方について、どうお考えなのかというのをお聞かせください。

【知事】これはね、やっぱりいかなる役所もね、情報開示ということだけじゃなくてね、もっと広い意味で開かれたものじゃなきゃならんと思いますよ。その最悪の例がね、要するに今の社保庁でしょう。それから、かつての国鉄もそうだったしね。これが民営化されると、要するにガラッと変わってきた、実績も上がってきた。これから郵政の問題も民営化されてどういうふうに効率が上がってくるかわかりませんが、やっぱり開かれた役所ということのためにはね、幹部に限らず、まあ幹部だってヒラから上がっていく訳だから、公務員になる人たちの意識というものが変わってこないとね。だから、国の役所だって「このごろあまり魅力の職場じゃなくなってきた」って、これはうぬぼれた話でね。公僕なんだよ。みんな勘違いしている。政治家は公僕じゃないんだ。これは選ばれた代表なんですよ。だから、政治家の言うことをちゃんと聞く、耳を傾けて聞く、そういう姿勢って持たなかったら、役人天国になっちゃってね。それは、ゴルバチョフ(ミハイル・ゴルバチョフ 旧ソビエト連邦元共産党書記長)が日本に来て言っていたけど、「石原さん、世界で一番成功した社会主義国は日本ですな」と。これは半分皮肉で半分本当なんだよね。それじゃ困る。ある効率は上がってきたかもしらんけどね、もはやそんな時代じゃないですよ。だからね、それじゃ、ならないといって、役人になりたくなきゃならなきゃいいんだ。それは勘違いしているんで。役人はあくまで公僕なんだから、その意識をきちっと持つということね。だから、やっぱりね、僕は政治家、特に1つの地方自治体なり何にしろね、日本の政府からそうですよ、これはね、総理大臣は選挙経てくる訳だから。選挙の洗礼ということは、要するに平民、庶民、民間に戻るということですからね。そこで選ばれた人がやっぱり首長になるのが好ましいと思う。だから、私は役人出身の県知事も多過ぎると思いますしね、東京都の首長もそうでないほうがいいと思いますな。その限りでね、要するに、民間の代表の指導者、大臣なり県知事なりそういう人の言うことをちゃんと聞く。何言っているんだという姿勢でものを聞かれたらたまらないし。この間も怒ったんだけどね、私が「うん」と言わないのに、「知事も了承」なんていう書類が回ってくるんだよ。例えば、参議院の宿舎の問題なんかだって。あれだって、実は東京の建設局はだまされたんでしょう、高さの問題や何かで。こういうことが頻々と起こったら、何のための行政機関かわかりませんからね。お役人というのは、ある選ばれた者かもしれないが、ただ試験を通っただけなんだから。うぬぼれちゃいけないね、国の役人も、東京都の役人も、地方の役人も、何だろうと。やっぱり公僕なんですからね。要するに、民間の代表の声をきちっと聞くという姿勢がなくなったらね。それが嫌ならやめたらいい、ならなきゃいいんだよ。民間のもっと激しい競争の企業に行ったらいい。そんなものじゃ済まないんだから。と思います、私は。ある意味で、だから、このごろ役人のなり手が少なくなったのはいいんじゃないですか。どんどん数も少なくなっていってね。

【記者】都庁でも一時期、管理職を目指す人間が減ったんじゃないか、そういう声も逆に聞かれましたが、それでも毎年管理職の方が、きちっと合格されている方は合格されていると思うんですが、創意工夫なり地道な努力は必要だと思うんですけれども、知事が都庁に入られたときに、「君らには、とにかく創意工夫とスピードを求める」というのが、常に繰り返しおっしゃっていたことなんですけれども、そういう尺度で考えればいかがでしょうか。

【知事】まさに私は今でもそう思っています。そう期待していますしね。それから、創意工夫はたくさんありますよ。だから、東京スピリット賞もつくってね。私あの表彰式が一番楽しいんだけどね。やっぱり創意工夫というものを持ち上げてくるのはあまり偉い人じゃないんだな。偉くなってくると、くたびれちゃうか何か知らんけどね、ルーティンになっちゃってね。もっと下の連中が、びっくりするみたいな、ものによってはノーベル賞クラスみたいなものも発案してくるしね。そういう点では、官僚のいない社会というのはないんです。官僚がいない社会というのはあり得ないしね、官僚なしに社会は動いていかないけど、しかし、それだからといって、つまりおごっちゃいけないし、独善的になっちゃいけないし。結局、官僚統制国家に日本はなっちゃった訳でしょう。その余韻がいまだに残っているから、社保庁なりの問題が起こってくる。いち早く手を打った、中曽根さん(中曽根康弘 元内閣総理大臣)の時代にね、電電とか専売公社とか国鉄も見事にリバイブしたじゃないですか。

【記者】ありがとうございました。

【記者】安倍改造内閣のことなんですけれども、鴨下一郎議員が環境大臣になられて、与謝野馨議員が官房長官になられ、東京都選出の議員の方が…。

【知事】鴨下も東京?

【記者】はい。

【知事】知らないんだ、このごろの若い人は。

【記者】なられましたけれども。あと、それから自民党の政調会長には石原伸晃議員ですけれども、東京の施策を推し進める上で、この内閣、そして自民党三役、どのようにお考えでしょうか。

【知事】それは、あなたの誘導尋問もあるんだろうけれども、やっぱり東京にとったらね、東京出身の政治家が要衝(ようしょう)に座ってくれることは非常にありがたいですよ。これから伸晃も教育し直していかなきゃいけないと思っていますけどね。与謝野さんも昔からよく知っているしね。僕はあのお父さんと仲がよかった。年がわかっちゃうけどさ。彼は非常に優秀な、物わかりの早い人で、平衡のとれた、そういう点で冷静な人だし、一時期、体を壊して心配していましたがね、要衝に座ってくれて僕はとてもうれしいと思います。期待しています。

【記者】この改造内閣、東京にとって、変わってよかったと思いますか。

【知事】そんなもの、これから。結果だよ。動いてくれなかったら、与謝野だって、伸晃だって、鴨下だって、こちらは非難するし、何か文句を言いますけどね。なったばかりで、これからどうなるかわからんよ、それは本当に。ただ、やっぱりね、東京というものを、国の中で比重をちゃんと斟酌(しんしゃく)してくれる政治家がもっといていいと思う。これは何も東京出身に限らず、地方だってそうですよ。国会議員なんか国全体を考えなくちゃいけないんでね。今の選挙制度って非常に悪くなっちゃったんでね。これは、小沢一郎(民主党代表)がそうしたんだけども、政治家のスケールが小さくなっちゃったですな。はい、それじゃ。

(テキスト版文責 知事本局政策部政策課)