石原知事記者会見

平成19年1月25日更新

石原知事定例記者会見録

平成19(2007)年1月19日(金)
15:00〜15:31

知事冒頭発言

1.教育特区の申請について

【知事】きょうは冒頭、いくつか私から申し上げることがございます。

 最初に教育特区の申請をいたします。耳の不自由な方、聴覚障害のある子どもたちがですね、新たな方法で教育を受けられるようにするための特区計画の認定申請を、このたび国に対して行うことにしました。現在行われているろう学校での聴覚障害教育は、国の学習指導要領に基づいていましてですね、音声による会話の取得を目指す教育が行われている。これはやっぱり唇の動きを読むということなんでしょうかね。しかし、この方法ではですね、重度の聴覚障害を持つ子どもの中には遅れが生じてしまうケースがあります。これに対して、品川区でフリースクールとして活動している龍の子学園では、耳の聞こえないろう者の間で行われてきた手話を言語とする教育を実践しています。これはですね、テレビなんかでよくやってる、あるいは講演会なんかでやる手話と、もうちょっと違って、複雑な(語順等が異なる)手話の方法だそうですけども、このような教育はですね、北欧や米国では既に行われておりまして、重度の聴覚障害を持つ児童に対して効果があることが実証されています。今回の特区申請が認定されますと、日本で初めてですね、こうした教育を実践するフリースクールが学校で設立することが可能になりまして、聴覚障害の子どもたちは、個々の障害の程度に応じた教育を学校で受けられることになります。今回の取り組みが将来的に全国に波及し、日本のろう教育が一層充実していくことを期待しています。

 詳しいことは、あと、知事本局に聞いてください。

2.ジュニアスポーツアジア交流大会について

【知事】それから第2に、ジュニアスポーツアジア交流大会についてですけれども、2007年のジュニアスポーツアジア交流大会は、都が主催で、今年8月に開催いたします。種目としては、アジアで一番幅広く愛好されているバドミントンを予定しておりますが、アジア全体を視野に入れ、オリンピックを目指すジュニア選手を対象とする大会で、今後、複数競技種目の大規模な国際交流試合の実現を目指してまいります。交流試合のほかに、ジュニア選手育成や、オリンピックに向けた選手強化などをテーマとする指導者間の交流も行いたいと思っております。

 「10年後の東京」にも盛り込んだように、ジュニアスポーツのアジア交流については、今後、東京は豊かなスポーツ資源を活用して、アジア各国の将来を担う世代の育成を支援することで、スポーツのみならず、アジアの発展にも寄与していきたいと思っております。

3.東京国際フォーラムについて

【知事】次いで、東京国際フォーラムでありますけれども、東京国際フォーラムは、この1月で開館10周年を迎えました。3年前の株式会社化に際して、民間の、前の丸紅の社長、会長の鳥海さん(鳥海巖 株式会社東京国際フォーラム代表取締役社長)を社長に登用した結果ですね、非常に大きな成果を上げてくださってまして、来場者数は年間2,000万人とですね、この3年で500万人も増加しました。とりわけ毎年ゴールデンウイークに開催しているラ・フォル・ジュルネは、今年(昨年)も70万人が集まりまして、もうちょうど連休の、5月の閑散とした時期ですけど、あの界隈だけが大変なにぎわいでしてね、一種の社会現象ともなる画期的なお祭りに成長し、定着しました。

 そこで、開館10周年を記念してですね、今後1年間にわたり、家族で楽しめるアニバーサリー・イベントを実施します。今日から記念のイルミネーションを点灯するほか、夏休みには世界各国の料理とジャズが楽しめる催しや、親子で楽しめる新たなイベントも開催します。

 今年のラ・フォル・ジュルネは、民族のハーモニー。去年はモーツァルトですか、その前がベートーベンだったですかな。今年の主題は、「民族のハーモニー」をテーマにして、世界各国の有名な作曲家の代表曲を楽しめる音楽祭にいたします。チャイコフスキーの「悲愴」、ラヴェルの「ボレロ」、ビゼーの「カルメン」、ドヴォルザークの「新世界」などなどが、レパートリーとして予定されているようです。

 プレイベントとして、子どももクラシック音楽に親しめる面白いコンサートも企画しているようでありまして、国際フォーラムを1つの拠点として、文化の面から、東京の魅力をさまざまな形で強力に発信していきますので、皆さんもぜひ立ち寄っていただきたいと思います。

 鳥海さんのおかげでね、あの有楽町から東京駅にほとんどつながる、あそこのサラリーマンにとっては通勤路というんでしょうかね、あそこが新しい、非常に在来なかった1つの街として定着してきたことは、大変うれしく思ってます。やっぱりさすがに日本で有数の経営者が座るとね、かくも違うかなという感じがしますが。

4.東京大気汚染訴訟への対応について

【知事】次いで、東京大気汚染訴訟への対応ですけども、東京大気汚染訴訟の解決に向けてですね、都が示した医療費助成の提案に、自動車メーカーが協議に応じる意向でありまして、現在の発達した自動車文明社会にあって、社会的な責任を認識した判断を行ったものと、これは都としても高く評価をしたいと思います。

 来週以降、メーカー各社と個別に交渉することになると思いますが、どうも残念なのは国の対応でありまして、環境大臣は、「因果関係がわからないんだから、東京は東京でやったらいいだろう」と、「やりたいことをやったらいい」というようなことですが、これではとても済まないんじゃないかと思いますね。

 昨年、国は、アスベスト問題でね、これは明らかに国の責任というものを国も認めたんでしょうけど、直接かかわりのない、責任のない都道府県に、約100億円の拠出を求めてきましたし、こちらも人間の健康にかかわることですから、生命にもかかわることですから、被害者の救済を優先するということで同意しましたが、国のこのやり方がですね、自らの失策の責任をあいまいにして、転嫁するもので終わっては困ると思うのですね。今度の大気汚染の訴訟でもですね、国は一審で負けたにもかかわらず、自分の責任を果たそうとしないで、都に負担を押しつけようとしている。これはもう非常に勝手だというほかない。高裁も国に対して再考を促したようですけども、こうした国の態度は社会的に糾弾されて然るべきだと思います。

 前に申し上げましたように、モータリゼーションの到来の必至、しかもそれは、日本の重要産業の1つとして、国力そのものを担う、そういう督励、指導をもしてきた中で、その結果モータリゼーションの盛隆というものが大気汚染を引き起こしたわけで、これはですね、1つの文明というものをとらえ切れなかった、みずからに文明批判の能力がなかった証しでありまして、これは国がそういった観点に立って、国としての文明批判を怠った、いわゆる国としての不作為の責任というものを、やっぱり強く自覚するべきだと思います。

 アスベスト問題については、後ほど報道官から説明させますが。

 私から申し上げることは以上であります。

 質問があったらどうぞ。

質疑応答

【記者】4月の知事選のことなんですけれども、自民党から推薦をするという話は、もう知事は聞いていますでしょうか。

【知事】聞いてません。決めたようですけど、私は別に直接何のメッセージもありません。都連というのかな、都議会、今度の地方統一選挙にね、随分その補欠選挙で擁立する候補が多いんで、そっちでばたばたしているんじゃないんですか。その話は仄聞(そくぶん)してますけど、私は正式にまだ伺ってません。

 それは推薦、結構ですね。できたら共産党以外ね、公明党も民主党にも推薦してもらう。皆さん、政策にずっと賛成してこられたんだから、その成果も出てるんでね、そうしていただくとありがたいと思いますけども。

【記者】あと、もう1点お伺いしたいんですけれども、きのうの全国知事会議なんですが、もともと知事は出席する予定ではなかったけれども、出席することになったのは、これはどうしてでしょうか。

【知事】岡山県の知事も随分いろいろスタッフ動員してね、小委員長として、道州制の問題のリポートを出してくださったんですがね。その中にね、物事を考えていく1つの枠組みとしてね、「ケースによっては都道府県の1つだけが道州制の道州になり得ることもある」と明記された。これはね、現実に全然違いますね。

 大阪の方は知りませんが、東京が中心になってやっている首都圏の広域行政というのは、はるかに県境をまたいだものでして、諸井君(諸井虔 第28次地方制度調査会会長)が、この間亡くなりましたけれども、諸井君がヒアリングに東京に来たときも、私は実際に神奈川県、埼玉県、千葉県の合意で行って、私は成功したと思うけど、あの大気汚染のディーゼルガスの排気ガス規制もそうですし、それから、9.11の後、国が動かないので、とにかく首都圏だけで災害対策のFEMAですね、Federal Emergency Management Agency(アメリカ合衆国連邦緊急事態管理庁)というんですか、あれに似たものをつくろうということで、ネットワークもつくりましたし。花粉症もそうですし、いくつか広域行政やっているわけで。そういうものを実態としてとらえて考えないと、1つの都道府県だけでも道州になり得るというのは、それは東京都、大阪のことでしょうけど、そんなことではとてもね、東京都の昼間人口というのは、周りの3県から来て300万ぐらい日中増えるわけで、正確な数字400万ですか。とにかく数百万増えるわけで(※)、そういう実態の中で、行政需要もありまして、それに対応しているわけですから、場合によったら、一都道府県がそのまま道州になるという考え方は全く現実性がないので、「これは削除しよう」と言って、削除してもらいました。そのために行きました。

※中央防災会議の首都直下地震対策専門調査会報告書では、都内の帰宅困難者数は約390万人と想定されている。平成12年国勢調査では都の昼間人口は夜間人口に比べ約265万人多い。

 ただ、まあ道州制はね、率直に言ってみんなやる気がないね。

 それで、いろんな面白い意見も出ましたよ。今度長野県の知事になった村井さん(村井仁 長野県知事)なんかは、確かに長野、そうなんだな、やっぱりあそこはアルプスの中にあるというのかな。だから、県の中にも非常な大きな分水嶺が3つも走っていて、県そのものの中につい立てが3つも立ってね、そういう地勢学的な条件の中で、県そのものもなかなかまとまりにくいし、前の知事はそういう意味でかどうか知らんけれども、「市町村合併に反対だった」と言っておられたけれども、そういう事情もありまして、私は道州制についていろんな問題提起をしたいと。

 だから、いろいろ意見が出ましたけど。道州制はいかにあるべきかというテーマでは議論しちゃならんという声が圧倒的で、「これだと道州制せざるを得ない。することにアプリオリ(前提)で決まっているような印象を与えるので、もっとその前にすべき議論がある」というのが圧倒的だったね。まあ、みんなあまりやる気しないね。

 ただね、前から申し上げたみたいに、徳川が倒れて明治のご維新になってね、太政官制度ができた。憲法が発布される前に、廃藩置県で殿様追い出して、官選の知事が48(47)都道府県に出向いていって、そこをコントロールしたわけですけど、その行政の体制がいまだに続いているというのは、滑稽というか、私はそれはやっぱり機能的じゃないと思いますわな。

 日本そのものが時間的、空間的に狭くなってきたので、道州制という声が上がるのは当然でしょうが、しかし、その前に国はもうちょっと大きな視点での人口の流動というものを促進する考え方をしませんと、それは地方に行けばいろんな格差が出ているし、そういうものに対する不満というのはうっ積していくのはむべなるかなという気がしますが、それがにわかに道州制で淘汰されるものでもないし、もっと日本全体の発展とそれから格差の是正というものを大きな視点で国がとらえる必要があると思いますね。

【記者】きょう昼間、教育再生会議が安倍総理も出席されて行われて、基本的にはゆとり教育の見直し、10%の授業量をふやすということも了承され、まとめられたようなんですけれども、それについて知事のお考えをちょっと。

【知事】当たり前だと思いますね。ああいう変な思いつきでやって、結局たちまち学力が下がってね、それは如実に出てくるわけだし、指数でね、それは国の役人は朝令暮改を嫌がるけれどもね、いい意味の朝令暮改はどんどんやったらいいしね、試行錯誤もあるしね。それは人間のやることですから、「やった、しまった、間違った」と思ったら、ぱっと変えたらいい。やっぱり子どもの学力の維持というのは絶対必要だと思いますよ。

 それから、これは首都大学東京の西澤(潤一)学長がよく言ってらっしゃるし、その通りだと思うけれども、小中高等学校は絶対的に詰め込みしなくちゃいけない。そうすることで彼らの基礎体力ができるわけだから、基礎学力が。その上で人間の情念、感性が育まれていった。高等学校では選択の幅のようなものを考えたらいいと。

 ところが、今日本のカリキュラムは逆になって、要するに非常に間違った倒錯の顕著な例がゆとり教育でね、小中学校のときには少し苦しくても無理やり教えたらいい。例えば、インドなんかは、九九算が、9×9=81じゃなしに、あれでしょう、25だか35までやるんでしょう(インドでは2桁の九九を習う)。「25掛ける22はいくつだ」というの、頭で計算するんじゃなしに、お経みたいに覚えちゃうわけだから、これはやっぱり大事だと思いますよ。

 それが頭の中にしみ込めば、それは計算は速くなるし、それがインド人が得意な数学の領域でも示されているわけでね、私はね、ゆとり教育は間違ったという認識を政府の機関が持ったということは大変結構だし、慶賀(けいが)にたえないというか、当たり前のことだと思います。

【記者】いのしし年が明けて半月以上がたちまして、世の中は相変わらず嫌なニュースがあちらこちらから起きているわけなんですが、今週考えてみても、メーカーの不手際でフランチャイズが非常に困っている不二家の問題でありますとか、それから殺人事件の問題とか、いきなり子どもを投げ落とすとか、そういった嫌なニュースばかりの中で、来週本当はお伺いすればよろしいんですが、1月26日を迎えます。

 その1月26日というのは、私たちの場合には、昭和23年のときの帝銀事件と昔は言っていましたけれども、ところが、最近では2001年の1月26日の東京都内の出来事というものを私たちは忘れてはいけないんだろうというふうに思うんですが、新大久保駅での、線路に落ちた人を命を犠牲にして救ったという韓国の青年のことですね。

 それにつきまして、ちょうど1月26日、来週を迎えようとしている中で、その映画ができ上がって、ぜひ若い人たちにも命を大切にするという意味では見てほしいというようなこと、こういう動きが非常に盛り上がっておりますが、これも知事はきっともろ手を挙げて賛成されるのではないかと思うんですが。ご意見を。

【知事】賛成ですね。それは、その逆の事例をこの間聞きました。

 ある年配の婦人が、地下鉄ですか、普通の電車ですかな、乗ろうと思ったら、駆け込みで後ろから来た人がその人のハイヒールをけっ飛ばして、靴がぬげてね、電車とホームの間に落ちちゃった。しかし、自分はですね、靴なしで乗れないから、一列車あれして(見送って)、それで見たら、靴が片方ぬげて、片方はだしの年配の女性が自分の靴がどこに飛ばしたか見ているけど、とにかくだれも振り返ってくれなかった。

 それで、駅の駅員もこの頃合理化されて数少ないんだけれども、やっと探して頼んだら、勢いで外れたところに、自分もその場所を忘れちゃいけないから、後ろの看板がどこにあるか、何の看板の下というのを覚えて、戻ってきて見てもらったけれども、かなり離れたところに飛んでいったというんですがね。

 「石原さん、とにかくね、本当に人情紙風船ですね。だれもどうしましたかとか、大変ですねとか、自分が飛びおりなくても、駅員を探してきましょうかとか言ってくれる人は1人もいなかった」。

 それに比べれば、韓国というのはある意味でね、かつて日本の美風の一つであった儒教の影響というんでしょうか、そういった他人のために尽くすという美風が残っていて、それがああいう犠牲につながったと思うんですけども、これはやっぱり私たち胸に刻んで覚えてですね、反省も含めて、あの犠牲者を称えなくちゃいけない事例だと思いますね。

【記者】実は、日本の国民の中にだって、もちろん大勢の都民の中にだって、同じような気持ちをみんな持っているはずです。そうした部分というのは、逆にニュースに取り上げられないというケースが往々にして多いわけなんですが、これは1つ要因をいろいろ考えてみたときに、人口が結構多い。やっぱり集中し過ぎている。人の大勢の中の、他人の中の1人、自分ですよね。

 そうすると、だれが見て、だれも見ていないだろう、逆なことを言うとね。そういうようなことも結構あるのではないかなと思うんですが、お気を悪くされるかもしれませんが、1つには、一極集中でありますとか、そういったことも一応要因としてあるのではないか。いろんなことをお考えになっておられると思うんですが、どうでしょう。

【知事】全くそのとおりだと思いますね。私はね、東京にこれ以上の集中・集積というんですか、特に人口の増加は好ましくないと思いますね。ただね、「10年後の東京」もこの間発表しました。未来像、あのシミュレーションの1つにね、どう考えても10年後の東京だけは人口が増えるんですね。これは決して好ましくないです。ですから、それにこたえるインフラの整備もしなくちゃいけないから、環状線(三環状道路)を早くつくらなきゃいかんと思うけれども。

 このごろよく言っているんですがね、つくば新線に皆さん乗っていただくと、秋葉原から筑波まで、急行で45分ですよ。普通のダイヤ、各駅停車でも1時間かからないんじゃないかな。これは私が、今でも逗子に家がありますけど、昔、逗子から東京の学校に通った。今でもね、逗子、鎌倉間から、葉山からも多くの人たちが東京に通勤していらっしゃるけど、1時間5分(程度)かかるんですね。それに比べればはるかに速い電車で、しかもその間の関東平野というのはがらあきなんですよ、今までアクセスがなかったから。

 これはね、国がやっぱり本気で考えて、あそこにどういう、首都圏の一部になるかもしれないけども、とにかく物をつくっていく。少なくともあれはほとんど茨城県ですから。だからね、そういう大きな設計というものをやっぱり国がすべきだと思いますね。せっかくアクセスができたんですから。そういうことがね、何か発想力ってなくなっちゃったですね、このごろ。

 むしろ民間から知恵出してもらってね。私は、あの関東平野という日本で一番大きな可住面積を持っているところ、ほとんどがらあきなんですよ。だから、茨城県の橋本(昌)知事もめったに土地を売らずに、持っている県有地は押さえていてね、「やっぱり国との絡みで行政が指導力を発揮して大きなプロジェクトを考えようじゃないか」と言っているんですが、なかなかそういう発想は国からは出てこないですね。

 ただね、その発端になればいいと思うんだけど、この間、神奈川県の松沢君(松沢成文 神奈川県知事)と埼玉の上田君(上田清司 埼玉県知事)、両知事と話しましてね、向こうも少しお金を出してくれるって。茨城県はただで土地を提供してくれますから。北区に国がつくったトップアスリートのための施設(国立スポーツ科学センター)だけじゃなしに、もうちょっと下のね、「自分もやがて国体の代表選手になろう」、「オリンピックの候補選手になろう」と思うようなレベルの子どもたちが何かトレーニングできるような、そういうセンターをつくりたいなと思って、土地は大体、向こうが指定してくれるところでいろんな条件を見に行っていますけども、そういうことが必要だと思いますね。やっぱり東京だけに何もかもがあるということは、僕は間違いだと思うし、あれだけ大きな空き地があるわけですから、スペースが。ということで、おっしゃるとおり、これ以上の集中・集積というのは決して好ましくないです。

【記者】今お話のあったトレーニング施設なんですけど、それはどういう運営主体というか、その辺はどのように。

【知事】さあ、それもね、4県で、含めて考えていこうと思っていますけども。どういう形態のセクターにするかね。あるいは民間をどういうふうに組み込むか、そんなことも含めてですね。やっぱりあの広大なスペースに、南北に走る電車というアクセスができたんでね、これを活用しないわけにいかんでしょう。ただ、周りにやたらに住宅地をつくるということだけじゃ済まないと思うから。まだ、今調査中というか、いろいろドラフト、設計図をかいている最中です。

【記者】都知事選に関連してお伺いしたいんですけど、告示まであと2カ月ほどということになりましたけれど、知事は3期目の公約としてどんなことを掲げていきたいというふうに考えていらっしゃるのか、伺いたいんですけれども。

【知事】これは、今いくつか考えていることがありますからね、もうちょっとブラッシュアップしてね、発表したいと思います。特に、地方分権、分権と言うけどね、その税制、財政の分野というのは中長期だって棚上げされているけども、都なら都でできる税制改正みたいなのはあると思いますからね。それがあることのために引き金になればと思って、今研究していることはあります。もう少しでき上がったら発表します。

【記者】もう1ついいですか。都知事選に関連して、民主党がまだ候補者でなかなか難航しているようなんですけど、それについて、知事の方からどういうふうにごらんになっているか。

【知事】まあそれは、東京にとっていい案を掲げた人が出てきて、それが争点になればいいと思いますけども。要するに東京がよくなればいいんだから。今まで、そう間違ったことしたことないと思うし、民主党も全部賛成してきてくれてたんでね。だから、あえて私はどこの党からの推薦をとることもなしに来ましたけども、今度ちょっと、随分いじめられているからさ、それは相当の覚悟で当たらないかんと思っていますよ。

【記者】大気汚染訴訟に関してなんですけど、先日、原告団の方が会見して、やっぱり「都やメーカーの姿勢を非常に高く評価する」と言っている一方で、やっぱり「国は許せん」というようなことを言っておるんですが、そうはいっても、国がこのまま都の案に関しての資金負担なんかを拒否し続けた場合にどうなっちゃうんだろうということを非常に懸念しておりまして、その場合、自己負担なんかが出てきちゃうんじゃないかみたいなことを原告としては非常に心配されておるんですが、都としては、例えば国がこのまま拒否し続けた場合にはその分穴埋めするとか、そういったようなお考えというのはあるんでしょうか。

【知事】その前提にね、やっぱり国は国の責任があるんですよ。水俣のときもそうだったんだけどね、やっぱり国の不作為の責任というものはね、気取った言葉で言うわけじゃないけど、文明批判、つまり文明の大きな動きを把握できなかった、要するに行政の中枢の国の政府というものにあるわけでね。政府は代々変わっていくでしょうけども、しかし、それを支えているお役人というのは変わらないわけだから。

 私は、場合によったら国を、東京都が原告団と一緒に訴訟してもいいと思っていますよ、この問題について。それは新しい地方自治体と国との関係を1つ明示することになるんじゃないですか。

【記者】関連で、そうやって都の助成案に関しては原告の方も歓迎されている一方で、高裁での和解に向けては、「それとは別に解決一時金のようなものを支払ってくれ」、そういう主張を、これはメーカーに対しても、国に対しても、都に対してもだそうですけど、それに関して東京都の考え方はどうなっているんですか。

【知事】まだそこまで具体的に話しておりません。

 それから、これから、要するに(日本)自動車工業会、自動車会社と個々に、意見も大分違うところもあるようですから、話をしてその平均値をとってですね、メーカーと都と、どれぐらいのポーション(負担割合)で責任を負って、要するに補償するか。それから、やっぱり国がすべきものはどれぐらいの部分であるかということもみんなで割り出してですね、国がそれをもって是としないんなら、私たちはやっぱり国を告訴してもいいと思いますね。

【記者】2つお伺いしたいんですけど、まず1つ、野球関連なんですが、星野仙一さん(野球解説者)が北京オリンピックの日本代表監督に就任される方向ということなんですけれども、いろいろご交友もおありかと思うんですが、期待されるところといいますか…。

【知事】僕は仙ちゃんと仲いいからね。本当にガッツのある鬼監督でもあるし、優しいところもあるしね。

 皆さんご存じかどうかね、竹花(豊)前副知事が、「青少年の健全育成というのはやっぱり治安につながるんだ」ということで、親の責任をもうちょっと強調して、「お父さんたちに頑張ってもらいたい」というので、日本の「おやじの会」(おやじ日本)というのをつくった。

 それは、最初は東京の「おやじの会」(おやじ東京)をつくろうと思ったらね、あまり頼りになるようなおやじさんがいないんだね。それで、誰がいいかといったら、星野仙一さんがいいということになって、あの人は東京人じゃないから。それだったら日本の「おやじの会」にしちゃえというので、「日本おやじの会」にしたら、だんだんあちこちで「よし、うちもやる」という地方が出てきましたがね。そういう点でね、彼はやっぱり日本での最もプロミネントな(顕著な)実績もあるし、哲学を持った、すばらしい、単に野球の監督だけでないリーダーだと思いますから、大変結構じゃないですか。

【記者】それで、もう1つなんですけれども、知事選といいましても宮崎県の知事選なんですが、今週、日曜日が投票なんですけれども、ご存じだと思いますけれど、タレントのそのまんま東さんも立候補していて、かなり接戦の状況になっているというのが今の現状のようなんですが、タレント候補善戦といいますか、頑張っているというような状況について何かお考えはありますか。

【知事】僕は、東さんについても、もう1人の候補者についてもよく知りませんからね、軽々(けいけい)にものは言えませんしね。それはね、県民が判断することでしょう。ただ、「タレント候補」という言い方も、非常に嫌なくくり方でね。私だって参議院に出たとき、「タレント候補」と言われましたよ。青島君(青島幸男 前東京都知事)もそうだったよ。

 しかし、ある才能がなかったら「タレント」と言われないんだろうからね。そういうくくり方っていうのは、何か半分軽侮を込めたみたいでね、僕はやっぱり妙な固定観念があると思いますよ。開かれた社会なんだからね。誰が立候補するのも自由でしょうけど、あとの判断はやっぱり県民なり都民がすることでしょう。投票者がすることですから。

【記者】最初、芸能界を退いてというか、もう芸能活動をやめるということで立候補ということになったんだと思うんですけれども、相当激戦になっているというようなので…。

【知事】いや、それはわからない、他人の選挙のことは。

【記者】そうですか。

【知事】それじゃね。

(テキスト版文責 知事本局政策担当 細井)