石原知事施政方針

平成24年9月19日更新

平成24年第三回都議会定例会知事所信表明

平成24年9月19日

 平成24年第三回都議会定例会の開会に当たりまして、都政運営に対する所信の一端を申し述べ、都議会の皆様と都民の皆様のご理解、ご協力を得たいと思います。

 去る7月9日、名誉都民である山田五十鈴さんが逝去されました。ここに謹んで哀悼の意を表し、心よりご冥福をお祈りいたします。

 先ず、先般の水道関連施設の工事に関する職員の不祥事について、都議会の皆様、都民の皆様に心からお詫びを申し上げます。
 このような愚劣な行為が、都政全体の信頼を著しく低下させたことは、誠に遺憾であります。本件を重く受け止め、再発の防止に万全を期し、信頼の回復に全力を尽くす決意であります。

 このたび名誉都民の候補者として、北浦雅子さん、山田禎一さんの二人の方々を選定させていただきました。
 北浦雅子さんは、重症心身障害者の福祉向上のために半世紀にわたり第一線で活躍され、障害者の能力開発による自立支援にも取り組むことで、誰もが健全な生活を営む社会の実現に尽力してこられました。
 山田禎一さんは、55年の長きにわたり東京の地域医療に尽力され、国内初の精神障害者の授産施設の創設や都内初の介護老人保健施設の開設など、進取の精神による画期的な取組みを重ねてこられました。
 お二方は多くの都民が敬愛し、誇りとするにふさわしい方々であります。都議会の皆様のご同意をいただき、来月、名誉都民として顕彰したいと考えております。よろしくお願いいたします。

1 アジアの中での東京の役割

 さて、我が国は、地理的・文化的・歴史的にアジアの一員でありまして、私は、かねてから、このことを十分に自覚すべきであると訴えてまいりました。アジアは、産業革命以来、西洋の植民地主義による収奪を余儀なくされてきましたが、約70年前の第二次世界大戦が引き金となって、植民地支配からの解放を勝ち獲たのであります。そして、21世紀を迎えた今、アジアは、世界経済の牽引車として、世界の三極の一つを占めるまでに、発展成長を遂げました。

(尖閣諸島を巡る問題)

〈シナの覇権主義〉

 そのアジアで、今、シナが、覇権的な海洋進出を展開しております。南シナ海では、ベトナムやフィリピンへの軍事的な圧力を強めながら、パラセル諸島、スプラトリー諸島などに進出し、東シナ海では、日本固有の領土である尖閣諸島の侵奪も試み、アジアの海を自らの支配下に置こうとしているのであります。
 アジアの海が不安定な状況に陥れば、この海域での船舶の自由な航行や、地域での自由な通商が阻害され、資源の多くを海外に頼る我が国の国益はもちろん、世界全体の利益を大きく損なうことになります。そして、もし、この問題に関して日本がシナに屈するならば、シナと対峙するアジアの国々の動揺は大きく、アジアの海におけるシナの覇権は容易に確立されることになります。ゆえにも、日本が尖閣諸島を守り抜くことは、南シナ海を含むアジアの海全てを、シナの覇権主義から守ることに繋がるのです。

〈国の政治に政治本来の役割を取り戻させる〉

 しかし、正当な歴史認識・時代認識を決定的に欠いた歴代政権は、現実から目を背け、事なかれ主義を続けております。こうした態度に業を煮やし、尖閣諸島を守るため、手立てを講じるべく、都が島を購入する決意をいたしました。そのための交渉も重ねてきましたが、先般、地権者の方から島を国に売却する旨の話がありました。これはもとより、国がやるべき仕事であります。しかし、これまでと同じように無為のまま手つかずに島を荒廃させるだけでは、領土を守ることはできません。一昨年の特殊船による巡視船体当たり事件に続いて、先月には、シナの政治団体のメンバーが尖閣諸島に不法上陸しましたが、政府は、この者たちを刑事手続きに付さず、単に強制送還するという弱腰な態度をとり、我が国を侮った彼等は、再び上陸するとさえ公言しています。これが、政府が言うところの「平穏かつ安定的な維持及び管理」が、もたらした結果であります。
 今、我が国に求められることは、政治が、国民の生命・財産を守るという本来の役割を果たすことでありまして、この島に当然の手立てを講じることであります。先般、都は、洋上から島に接近し、島の地勢や自然環境などについて基礎的な調査を行いました。調査の様子が、テレビの映像に映し出されましたが、尖閣の青々とした美しい海と自然の姿に感嘆した都民・国民の方々が多かったと思います。そして、あの海は、地元石垣市にとっては極めて重要な財産であります。日本の零細な漁民が、尖閣という豊穣な、しかし時には厳しい自然の顔を見せる海で、安全に漁ができるようにしなければなりません。そのためには、最低でも、海が荒れた時に一時的に小さな漁船が待避のできる船溜まりの整備が必須であります。尖閣近海での漁業無線の交信が可能となるように電波中継基地を整備し、島の頂上には海を遠く照らす灯台と、有人の気象観測所も作ることが必要であると思います。
 私は、かねてから野田総理に、戦後の歴代政権が重ねてきた事なかれ主義と本気で訣別するのであれば、いつでも東京は協力すると申し入れてきました。しかし、現政権の態度は一向に変わりません。なぜ、零細な漁民のための船溜まりすら作ろうとしないのか。もはや、この問題に関して現政権に期待することはできません。我々は、中央官僚に操られている国政に、政治本来の役割を取り戻させなければならないと思います。
 「立国は私なり、公に非ざるなり。」かつて、福沢諭吉がこう訴えたように、国を想うことこそが、最も大事な私ごとでありまして、その意思の積み重ねこそが国を動かす大きな原動力になるわけであります。都には、国家を想う国民の志が、数万人の人たちから、15億円もの拠金として寄せられております。こうした都民・国民の意思を形にすべく、島の活用を、新しい政権に確と迫ってまいります。

(アジア大都市ネットワーク21)

 アジアが旺盛な経済成長を続けていくためには、度々襲う大災害や新興感染症への対応などの課題を解決していくことが求められております。東京が創設を主唱してきた「アジア大都市ネットワーク21」では、具体的な問題解決に向けて、実務家同士での共同事業に取り組んでまいりました。先般のシンガポール総会には、私も出席して直接報告を聞きましたが、インフルエンザをはじめとする感染症の発生状況や症例などについて、都市間での情報を共有するネットワークを既に構築しております。危機管理の面では、東京での防災訓練に、シンガポールや台北の救助部隊が参加しているほか、毎年、各都市の担当者がアジア危機管理会議で一堂に会し、テロや災害時の経験とノウハウを交換しております。東京からも警視庁、東京消防庁の実務担当者が参加し、対応力の向上を図っております。
 今回の総会では、モンゴルのウランバートルと、ロシアのトムスクが、新たに加盟し、ネットワークが強化されました。今後も、実りのある都市外交を積み重ねていくことで、アジアの発展に貢献してまいりたいと思っております。

2 アジアの中心的な役割を担う東京の質を高める

 東京がアジアの中心的都市としての役割を引き続き担っていくためには、災害など自らの弱点を克服し、都市の機能性をさらに高めていかなければなりません。

(高度防災都市こそ、21世紀の都市の姿)

 都は、東日本大震災の貴重な教訓と最新の科学的知見によって、この春に見直した首都直下地震などの被害想定に基づき、被害の軽減と復興に向けた道筋を明らかにすべく、地域防災計画の見直し素案を策定いたしました。今後、議会での議論や都民・国民の意見を踏まえて、11月には計画を改定してまいります。

〈帰宅困難者対策〉

 今回の震災が突きつけた東京の弱点が、帰宅困難者の問題であります。都が、国と共同座長を務めて、首都圏の自治体や経済団体、鉄道事業者なども交えた協議会を開催し、課題や対策を検討してまいりました。今般、その最終報告を取りまとめ、第一回定例会で成立した帰宅困難者対策条例と合わせて、大都市に共通する課題への処方箋を示すことで、全国を先導してまいります。都は、この条例に基づいて、行政・企業・学校・駅やデパート等それぞれの具体的な取組みを促す実施計画を11月に公表いたします。自助・共助・公助を適切に組み合わせながら、一斉帰宅の抑制や一時滞在施設の確保など、実効性ある対策を定め、被災時の首都の混乱を最小限に食い止めてまいります。

〈首都の防災上の弱点に果断に対処〉

 木造住宅密集地域については、当初の予定を大幅に拡充し、区から提案のあった12の地区全てを不燃化特区の先行実施地区としました。地元区と連携して、地域の実情に即した整備計画を策定し、今年度中には、不燃化特区制度を創設いたします。火災の防波堤となる延焼遮断帯の形成では、緊急に対処すべき道路を指定して、移転先の確保など特別の生活再建支援策を講じることで、整備を進めてまいります。また、東京消防庁と水道局が連携し、消防車が入れない狭隘な道路の行き止まりに設置されている排水栓を、消防団や町会・自治会が、消防水利としても新たに使用できるようにいたしました。改良しました。これを多摩地域にも拡げて、自助・共助の取組みを後押ししてまいります。
 区部東部のゼロメートル地帯と臨海部を守るための水門や防潮堤、都市の内部における浸水を防ぐ下水道のポンプ所などについては、耐震性・耐水性の総点検を行っております。この結果を基に、想定される最大級の地震発生時にも東京を津波から守る取組みを進めてまいります。年内には具体的な整備計画を策定するとともに、損傷すれば特に甚大な被害が生じる箇所については、直ちに対策に着手いたします。

(都市を動かすエネルギーの確保)

 次に、震災以来、我が国に重くのしかかっているエネルギーの問題について申し上げます。
 先般、政府は、国のエネルギー戦略なるものを策定しました。国は、目指すべき社会と国民の生活水準を明らかにしないまま、「原発ゼロ」を方針として掲げ、その実現に向けた現実的な方策も、工程も示すことができてはおりません。これまで繰り返し申し上げてきているように、我が国の産業社会を支えるエネルギーの議論を行うには、地球温暖化という問題を見据えながら、ある期間を想定して、何パーセントの経済成長を目指すのか、そのために、いかなる現実的な策を講じ、エネルギーをどれだけ確保するのか、複合的・重層的に検討していかなければなりません。そもそも、原子力発電の割合に関して、あらかじめ三つの選択肢を用意して、それを前提に進めた政府の粗雑な、幼稚なやり方は、根本的に間違っていたと思います。
 国家の命運を左右するエネルギーの問題に関して、国が有効な戦略を打ち出せない中、都は、独自に戦略的かつ具体的な取組みを進めてまいります。鍵となるのは、地域独占の電力供給体制を改め、市場自体の競争性を高めていくことでありまして、そのためには、新しい電力事業者を育成していくことが不可欠であります。
 本定例会には、奥多摩にある都の水力発電所で生み出した電力を、東京電力以外の事業者にも売却可能とするよう、条例の改正を提案しております。また、100万キロワット級の天然ガス発電所の建設に向け、候補地周辺の自然環境の調査に着手する一方で、稼働から35年以上経った、首都圏に1660万キロワットもある東京電力の老朽化した火力発電所を高効率なものへ置き換えていくために、局横断的なプロジェクトチームを立ち上げました。新電力の参入を促し育成しながら、東京電力の既存発電所の更新を進める具体的な方策を検討してまいります。さらに、都のインフラファンドを活用して、10万キロワット規模の中小の火力発電所や再生可能エネルギーなどに投資することで、多様な主体の参入を後押ししてまいります。
 東京電力の電気料金値上げの問題については、厳しい経営環境にある中小企業を全力で支えるために、影響を受ける企業の資金繰りを支援する新たな制度融資のメニューを設けて対応しております。また、中小企業の節電を一層進めるため、相談体制を充実し、無料の省エネ診断や節電に資する機器の導入を支援しております。東京電力は、失った信頼を回復するためにも自らの改革を進めなければなりません。都は会社が設置した経営改革本部と定期的に会合を持ち、改革の進捗状況をしっかりと監視してまいります。

(機能的な都市の造形)

 東京が国際競争を勝ち抜き、アジアの発展にも貢献していくためには、社会資本を充実させ、機能的な都市をつくり上げる必要があります。

〈空港という戦力〉

 世界が時間的・空間的に狭小となった今日、首都の空港は、国家の存在感を示すために欠かせない戦力であります。羽田空港の再拡張は実現しましたが、首都圏の空港容量は、近い将来には限界に達すると予想されておりまして、我が国最大級の滑走路を有する横田基地の軍民共用化を絶対に実現しなければなりません。
 とりわけ、世界的に活用が進んでいるビジネスジェットについては、首都圏での利用環境が整っていないため、我が国を素通りして他国に向かうジャパンパッシングが起こっております。受入れに横田を活用することは、日本にビジネスチャンスをもたらすとともに、共用化を実現する一つの突破口になると思います。
 4月の日米首脳会談の場で、横田の問題を、再び正式に取り上げさせたことで、国でもようやく具体的な動きが出てまいりました。先般、都と国との会合も持たれて、協議再開に向けて日本側の体制を固めることになりました。今後も国を突き動かし、この問題を前に進めてまいります。

〈インフラの着実な整備〉

 空港とともに、首都の重要なインフラである三環状道路の整備も進めなければなりません。その要となる外環道は、先日、東名・関越間の本体工事に着手し、美濃部都政以来、長いこと止まっていた時計の針が、ようやく目に見える形で動き始めました。2020年までの確実な完成を国に引き続き求めてまいります。
 環状道路の機能を最大限に発揮させるためには、残された東名以南の区間も整備して湾岸道路と繋げ、羽田空港や京浜港など、陸海空の要衝を結ぶことが不可欠であります。今後も、延伸に向けて国や関係機関との協議会を立ち上げ、具体的な検討を進めてまいります。
 東京の最大の弱点である渋滞を解消するためには、道路整備とともに鉄道の立体交差を進め、開かずの踏切を取り除いていくことが必要であります。線路で分断された街の一体性を取り戻すなど、複合的な効果も期待できます。先月、京王線調布駅付近を地下化し、18か所の踏切を除去しました。また、来月には京急蒲田駅付近を高架化して、先行して除去した環状八号線など4か所の踏切と合わせ、28か所の踏切を除去いたします。箱根駅伝で有名な、電車が通る間、選手が足踏みして待たなければならない、あの第一京浜の踏切も無くなります。都心から羽田に向かう直通列車の所要時間も短縮され、空港へのアクセスが向上いたします。
 今後も粘り強く、東京の都市インフラを整備し次世代に遺してまいりたいと思います。国に対しては、国家の屋台骨を支える首都のインフラの重要性を認識させ、整備に必要な財源を確実に措置するよう強く求めてまいります。

〈安全安心の都市づくり〉

 東京が成熟した都市としてその存在感を高めていくためには、高齢者や障害者、妊娠中の女性など、あらゆる人々が安心して街に出て、活発に行動できる環境を整えなければなりません。
 障害のある方々の中には、外部からはわからない場合も多くて、今般、そうした方々のためにも、新しいマークを作成しました。これを都民・国民に広く周知させて、電車の車内の優先席にも標示いたしますし、援助が必要な方がマークをわかりやすい位置に身につけることで、周囲の理解も得られやすくなると思います。先ずは、来月末から都営大江戸線で取組みを開始し、都営交通を核にして他の交通機関にも拡げてまいります。
 合わせて、都営地下鉄では、今年度中のエレベーター全駅設置に向け、取り組んでおります。少子高齢化の中で地域の足として期待が高まる都営バスも年度内に全てのバスで乗降口の段差の撤廃を完了するなど、誰もが快適に生活できる都市へと東京を進化させてまいります。

3 オリンピック・パラリンピック招致

 続いて、オリンピック・パラリンピック招致について申し上げます。
 この夏、ロンドンで開かれた大会ではアスリートたちが繰り広げた熱戦は、日本のみならず世界中を魅了しました。都民・国民に夢と希望、深い感動を与えてくれた東京のメダリストたちを顕彰するために、「都民スポーツ大賞」を贈呈することにしました。特に、世界一の座に輝いた金メダリストの方には、合わせて「東京都栄誉賞」を贈り、その功績を称えたいと思います。
 大都市ロンドンでの開催は、3度目になります。先進的な都市機能に、歴史と伝統を兼ね備えたロンドン大会の成功は、共通項を持つ東京にとって大きな意味を持つものであります。アジアでいち早く成熟を遂げた東京が、その証として、アジアで初めて、2度目となる大会を目指します。世界で最も安全・快適な未来の都市モデルを示すことで、21世紀にふさわしいオリンピック・パラリンピックの姿と震災から復活した日本の姿を世界に披瀝したいと思います。
 来年9月の開催都市決定まで、残り1年を切りました。先般、都議会の皆様には、全国をまわって招致への協力を呼びかけていただき、ロンドンでの大会期間中は、副知事が、現地で関係者に東京の強みを訴えてまいりました。来年1月の立候補ファイル提出に向けて開催計画を練り上げ、招致気運をさらに盛り上げてまいります。
 先月の銀座のパレードでは、50万人もの方が沿道に集まり、オリンピックのメダリストたちを祝福しました。都民・国民の皆様、ロンドンでのアスリートの活躍と感動をもう一度胸に刻んでいただきたいと思います。今から8年後、家族と共に、友人らと共に、この日本で、その感動を味わおうではありませんか。一人ひとりの純粋素直な気持ちを、招致成功への確かな力にしたいと思います。

4 おわりに

(法人事業税の暫定措置の確実な廃止を求める)

 先の国会において、社会保障と税の一体改革関連法が成立いたしました。少子高齢化が進んでいく中で、「高福祉・低負担」は到底成り立ち得ない幻想であって、破綻しかかった国家財政を見れば、消費税率の引き上げは避けて通れないことであると思います。もとより、政府は、都が先導している複式簿記・発生主義による新公会計制度の活用や外部監査の導入により、徹底した行政改革を行うのが当然であります。
 そして、この税率引き上げに併せて、法人事業税の暫定措置のような、都市の財源を奪う小手先の手法は確実に廃止して、地方税財源の拡充という本質的な解決策を検討すべきであります。

(戦後日本を呪縛してきたもの)

 さて、私は、8月15日、靖国神社に参拝しました。毎年、同じ日に詣でる度に、今の日本の姿を英霊たちにどう伝えたらよいのか、言葉を失っていくのに暗澹とさせられる思いであります。
 我が国は、戦後、奇跡とも呼ぶべき復興を成し遂げ、経済大国としては成功をおさめました。しかし、それと引き替えに失ったものは決して、決して小さくはありません。権利ばかり主張して義務や負担をですね、厭う今の日本人の姿、北朝鮮が同胞の誘拐・拉致を認めてから10年経っても何ら進展しない拉致問題、そして尖閣諸島の問題を巡る歴代政府の事なかれな対応、これらは、いずれも、戦後日本を呪縛した観念的な理想主義と言葉だけの平和主義がもたらしたものであります。
 国政は、そう遠くない時期に、国民の信を問うことになるでしょう。今、この国に求められていることは、敗戦以来、我が国に取り憑いてきた悪しきものと訣別することであります。そのために、日本の頭脳部・心臓部たる東京こそが、果敢に行動を起こしてまいります。私は、首都を預かる知事として、そうした強い信念の下に、都政運営にあたってまいりたいと思います。都議会の皆様の協力を心からお願いするものです。

 なお、本定例会には、これまで申し上げたものを含めて、条例案15件、契約案9件など、合わせて28件の議案を提案しております。よろしくご審議をお願いいたします。

 以上をもちまして、所信表明を終わります。