石原知事施政方針

平成23年6月17日更新

平成23年第二回都議会定例会知事所信表明

平成23年6月17日

 平成23年第二回都議会定例会の開会に当たりまして、都政運営に対する所信の一端を申し述べ、都議会の皆様と都民の皆様のご理解、ご協力を得たいと思います。

1 東京から日本を立ち上がらせる

(もはや日本の命運は窮まっている)

 戦後、我々は、アメリカ依存の平和に安住しながら繁栄を謳歌し、かつて無い物質的な豊かさと引き替えに、日本人としての価値の基軸を失ってまいりました。目先の欲望の成就のみを願いながらいかなる負担をも責任をも忌避し、あまつさえ自分の肉親が亡くなっても弔いもせずに放置して、その年金を詐取する輩さえ現れております。
 目を外に転じれば国際競争は厳しさを増しており、内向きになって困難な課題を先送りし続けることはとても許されません。少子高齢化という構造変化を冷静に捉えて社会保障や税制を痛みに耐えても立て直しながら、世界と伍す戦略と戦術を構えることを求められております。
 にもかかわらず、肝心の国の政は、自らの保身のために国民の顔色を窺うばかりであります。もはや財政は実質的に破綻しており、国家としての命運はこの数年で決せられるところまで窮まってきております。
 こうした状況の下で、東日本大震災は発生いたしました。
 今回の巨大地震と大津波では、東北の街はどこまでも続く瓦礫と化し、産業も大打撃を受けました。私も被災地を訪れ自らの目で確かめましたが、まさに地獄で言葉もありません。亡くなられた方々のご冥福を心からお祈りするとともに、被災された方々、そして、原発事故によって避難を余儀なくされている方々に、心からお見舞いを申し上げます。
 原発事故によって日本の安全神話は消えることになりました。国際社会からも危機管理能力が問われ信頼を失っております。このままでは日本自体が見限られ、ジャパンパッシングが加速し、経済は疲弊し、人材・企業・技術は流出していきかねません。

(政治は右往左往するな)

 国難の下でもなお、国は誤った政治主導で官僚組織を全く使いこなせず対応が後手後手に回っております。未曾有の事態をかろうじて救っているのは、名も無き現場の日本人たちなのであります。
 歯を食いしばりながらも、ささやかな援助にすら涙して感謝する被災者に、医療・福祉スタッフやボランティアが寄り添っております。原発事故では命を差し出す覚悟で自衛隊員、警察官、消防隊員、企業の現場作業員が奮闘してきました。都庁舎にも義援物資を持った都民が長蛇の列をなし、都に寄せられた義援金は約6億円にも上っております。
 これらは、豊穣な四季に恵まれながらも、厳しい自然や天変地異と隣り合わせにある我が国の風土・歴史が培った日本人の美質に他なりません。政治は、義援金が未だ十分に行き渡らないような国民の誠意が活かされない状況を、そのままにしていてはなりません。呼び覚まされた忍耐、自己犠牲、同胞への連帯の心を、我が国の真の復活に向けた力に変えていかなければならないのであります。
 政治は、ただ右往左往し場当たりを繰り返すのではなく、大震災からの復興を一日も早く実現するとともに、従前から直面する課題にも挑んで戦後の安易な他力本願や目先の利益追求を反省し、社会を修復へと導かなければなりません。

(東京が将来への展望を示す)

 とりわけ、首都を預かる都政が、何を為すかが我が国の将来を決します。国家にも匹敵する力を持った東京から大震災を乗り越え、将来への確固たる展望を示し、信頼を回復するメッセージも世界に発信しなければなりません。
 ゆえにも、政治・行政・都民・国民のあらゆる力を結集し、東京だからできる総力戦を展開いたします。日本を再び立ち上がらせるために、大震災にあって果たすべき東京の役割に全力を尽くし、国家の行き詰まりを打破する道筋も示してまいります。

2 被災地・被災者を支えるとともに、日本の頭脳・心臓を守る

 先ずもって、眼前の危機に迅速に対処しなければなりません。

(被災地の復旧・復興を全面支援)

 東京は福島の電力をはじめ、被災地の農林水産物や工業製品などに負ってきました。東京が、刻苦しながら再び立ち上がらんとする方々を全面的に支援するのは当然であります。
 これまでも福島・仙台・盛岡に現地事務所を設置しニーズを的確に捉え協力してきました。今後も、被災地・被災者のため、実務に長けた技術職員やこころのケアチームなど必要な人材をできる限り派遣いたします。
 被災地の復旧に立ちはだかる瓦礫については、区市町村や民間と共同して都内に受け入れ、処理に協力してまいります。
 経済の立て直しも急がれておりまして、風評被害に晒される農林水産物について、安全性を消費者に正確に伝え販売を後押しするなど、巨大な消費地である東京を復興のために提供いたします。また、売上げの減少が深刻な被災地の中小企業の受注回復に繋げるため、都内中小企業等との商談会を現地で開催いたします。
 都内に退避された方々も支えてまいります。現在、約5000人の方々を都営住宅等で受け入れておりまして、福祉相談や孤立化を防ぐ戸別訪問、就業支援や子供の就学支援など、生活全般をサポートいたしております。

(都民・都内事業者を守る)

 大震災の影響が都内にも及んでおりまして、都民・事業者を確かな手立てで守らなければなりません。
 震災により直接・間接に被害を受けて厳しい状況にある中小企業に対して、制度融資の新たなメニューを追加して、資金繰りに万全を期してまいります。経営が急速に悪化した中小企業に専門家を派遣し、立ち直りを支援いたします。雇用面において、東京しごとセンターに離職を余儀なくされた方々のための専門窓口を設置して、就職を後押ししてまいります。
 放射能への不安も広がっておりまして、測定体制を強化し、結果をホームページや街頭ビジョンで公表いたします。都民の不安を払い、冷静に行動する手掛かりとなるよう、情報をわかりやすく迅速に提供してまいります。
 電力不足の中での猛暑にも備えて、自治会、民生委員等の地域の力で高齢者を見守り、「熱中症対策緊急病床」も確保してまいります。

(高度防災都市を造形する)

 大震災では、東京は被災地に比べはるかに小さな揺れだったにもかかわらず、都市機能は麻痺いたしました。帰宅困難者の問題が現実となり、相次ぐ余震や電力不足に伴う計画停電などで不安心理が高じ、被災者・被災地に最優先で送るべきガソリンや水、食料品などの買占めも起こりました。

〈東京都防災対応指針の策定〉

 普段は当たり前と思っている都市の機能がいかに脆いかが明らかになったことから、災害対策を根底から見直してまいります。
 帰宅困難者が駅から締め出されるような事態が再び起こらぬよう事業者など各々の役割分担・責任を明確化し、燃料や生活必需品の備蓄のあり方も抜本的に見直します。直下型地震への備えを固め直し、東京にも大きな影響が懸念される「東海・東南海・南海三連動地震」への対策も新たに加えた「東京都防災対応指針(仮称)」を11月を目途に策定いたします。

〈災害に強いまちづくり〉

 専門家の指摘によれば、東京では体に感じないものも含めて地震が実に10分間に一回は起きておるそうです。世界最大の火山脈の上にある地震大国の首都を守るためには、街自体を災害に強くしなければなりません。これまでも阪神・淡路大震災の教訓などを取り入れ、道路や橋梁、ライフラインなどの耐震性を高め、液状化対策にも取り組んできました。これを強化しながら、津波・高潮に備えて、区部東部に広がるゼロメートル地帯や臨海部を守るインフラについて総点検いたします。
 もとより、災害に強いまちづくりは、ひとり行政だけではできません。人間は、死が不可避であるにもかかわらず自分自身の死を信じないのと同様に、地震が起きても自分だけは大丈夫だと考えがちであります。これを改め地震を我がこととして捉えなければ、肝心の建物の耐震化は進まず、危険な木造住宅密集地域は残り続けます。
 先の定例会で決まった緊急輸送道路沿道の建物に耐震診断を義務付ける条例に基づき、対象となる路線を速やかに指定いたします。また、建物の耐震性がわかるマークの表示制度を創設して、条例を効果的に運用してまいります。
 木造住宅密集地域には専門家を派遣して、建物倒壊の恐怖や火災が津波のように広がる危険性を示し、住民の意識を変えてまいります。まちづくり施策や税制、建て替え時の生活支援策なども総動員した新たな手法も編み出し、壊れず燃えない街への歯車を大きく回していきたいと思っております。

 一連の取組みによって、いかなる災害に直面しても都民の生活が確実に守られ、一刻たりとも日本の頭脳・心臓が止まらないように高度な防災力を備えた都市を造形してまいります。
 なお、国は、国家における首都の役割を全く考慮せず、ただ自らの場当たりな財政運営を糊塗するために、本来地方税である法人事業税の税収を東京から一方的に奪っております。東京が潰れ日本が崩壊するようなことがあってはならず、東京の金を東京を守るために東京が使おうという我々の意思を、国が阻む道理は全くありません。法人事業税の暫定措置の即時撤廃を改めて、強く要求してまいります。

3 東京から次なる日本の姿を先取りし、価値観も転換

 我が国が真に立ち直るには、単に被った被害の復元に止まらず、再起を通じて生活様式や価値観を転換し、次なる日本への道筋をつける必要があります。こうした観点に立って、東京はいかなる都市を目指し、社会や仕組みを率先して構築すべきか、申し上げたいと思います。

(東京発の環境・エネルギー戦略)

 原発事故に伴い、電力不足に直面しております。国は、節電の目標数値は定めても、後は企業・国民に下駄を預けており、何への遠慮か産業活動や国民生活を考えた自らの権限行使に、極めて極めて消極的であります。先般のサミットでは、実現への具体策も示さずに1000万世帯に太陽光発電パネルを設置すると闇雲に打ち上げました。これを見ても、国は、国家存立の生命線である経済やエネルギーについて、定見を持ち合わせているとは、到底、思えません。
 今、必要なのは、電力不足の長期化や災害の発生はもとより、地球の温暖化も見据えた上で、環境と経済とが高度に両立した社会を創り上げることであります。節電を機に生活や意識を変えCO2を削減しつつ、必要なエネルギーは低炭素で高効率なものへと多様化・分散化して確保していく戦略的な思考が求められております。
 それゆえ、節電は夏を乗り切るだけではなく、煌々と輝くネオンや街中に林立する自動販売機に表象される、過剰なエネルギー消費に痛痒を感じない社会や過度の便利さに慣れた生活を見直し、21世紀にふさわしい低炭素型社会に転換する、またとない機会にしなければなりません。
 先ず都庁舎が率先して、政府の目標を大幅に上回る25%の節電を実行しております。そして、地球温暖化対策で培ってきた省エネ・節電のノウハウをフル活用し、企業の具体的で実効性のある取組みを後押ししてまいります。公立小中学校では節電教育を実施し、家族ぐるみで家庭の暮らしを見直すことを促してまいります。
 一方、電力不足によって、遠隔地の大規模発電所からの送電に頼り切ってきた脆さが明らかになったことから、東京という日本のダイナモが麻痺して止まらぬように、打つべき手を果断に打たなければなりません。
 電力供給への不安により産業が停滞し空洞化することを防ぐため、首都圏の電力自給能力を高めてまいります。これに極めて有効な天然ガス発電所の新規な建設に向け、民間とも連携し行動を開始いたします。
 また、人命を預かる病院などの必要不可欠な電力は、いかなる事態にあっても確保しなければならず、自家発電設備の導入を支援いたします。
 さらに、家庭への太陽光発電パネルの普及を後押しするほか、大規模開発では地域エネルギー供給システムの導入を促進するなど、東京の隅々に発電装置を分散して配備し、危機にあっても東京が動き続けることを可能にしてまいります。
 エネルギー政策を都市政策の柱に据え、東京発の環境・エネルギー戦略を展開し、国に提起してまいります。

(アジアのヘッドクォーターへと進化)

 大震災からの復興を考えるに際して、関東大震災の復興を担った後藤新平に脚光があたっております。後藤新平は、モータリゼーションの隆盛を見越したかのように環状道路などの重要な都市インフラを構想し、東京を本格的な近代都市へと導きました。
 それから90年を経て、平成25年度に中央環状線がようやく全線開通し、彼の卓見が一つの形として実を結びます。我々は、先見性溢れた大きな構想力に、大いに学ぶべきであります。同時に、文明工学的視点を欠いた政治と行政が続いたがために、実際の道路整備は遅れ、交通渋滞や大気汚染という多大な損失を生んだ現実も忘れてはなりません。

〈文明工学に立脚した都市インフラの整備〉

 都市インフラの整備は、未来に繋がる財産を築く極めて重要な営みであります。これまでも「10年後の東京」計画に基づいて、投資効果の高い事業に力を注いできました。今後とも、東京と日本のさらなる発展のために、大きな流れに適った都市インフラを弛みなく整備いたします。
 只今述べた中央環状線の開通をはじめ、今年度の東京港臨海道路の完成、いよいよ工事着手となる外環道の整備などにより20世紀の負の遺産である交通渋滞を大幅に解消いたします。圏央道の整備はもとより、来年度の府中清瀬線、新滝山街道の開通などで、多摩の発展にも拍車をかけてまいります。さらに、新しい大動脈を造って文明発展の原動力である人・モノ・情報の交流を革新的に高めるために、品川を、世界と日本を結ぶ羽田空港と、我が国の三大都市圏を約1時間で結ぶリニア中央新幹線との結節点にしてまいります。

〈東京が日本経済を牽引し続ける〉

 着々と整備が進む都市インフラを跳躍台に、東京は金の卵を産む鶏として日本経済を牽引し続けなければなりません。成長の旗を振り、雇用を生んで若者の就職を確保し、福祉を充実させる富も生む循環を導かなければ、大震災からの復興は遅れます。少子高齢化に伴う財政負担の増大も、到底、乗り越えることはできずに、日本は沈むしかありません。
 東京の高度な集中・集積を堅持し、世界中から人・モノ・金融・情報を吸い寄せる磁力を維持すべく、首都としての防災力・危機管理能力を向上させて国内外の信頼を高めるとともに、放射線測定値も広く発信して国際的な風評被害を払拭してまいります。
 また、外国企業のアジア本社や研究機関を誘致するために、国の規制や競争上のハンディキャップを乗り越える総合特区制度を活用いたします。これを起爆剤として、外国の頭脳と日本の頭脳が刺激し合って新たな価値を生む舞台を整え、集積の底力を引き出し、アジア諸国には真似のできない研究開発や新技術・新サービスの創出を促してまいります。多摩シリコンバレーの形成も加速すべく、産業技術の新たな教育機関も整備いたします。
 正確無比な公共交通システム、多彩な食文化、世界自然遺産登録目前の小笠原をはじめとする豊かな自然といった東京ならではの魅力もさらに高めるなど、都市政策や産業政策、交通政策等を重層的に展開し、アジアのヘッドクォーターへと東京を進化させてまいります。

(連帯に裏打ちされた安全安心社会の実現)

 大震災にあって、同じ被災者同士が支え合い秩序正しく行動する姿は、世界を瞠目させました。人間は他者との関わり無くして生きてはいけず、血縁で結ばれた家族から始まる連帯が、会社や地域などを通じて広がり、堆積重層してエネルギーを生むこの世の中の公理を改めて悟らされました。社会の安全と安心には、行政による子育て施策や高齢者福祉といった公助の充実だけではなくて、地域の力などの共助も不可欠であります。
 東京は全国から人が集まり、核家族化が進み価値観も多様化して、しがらみも無ければ絆も希薄であります。そればかりか、親殺し子殺しといったおぞましい事件も後を絶ちません。ならばこそ、大震災を機に人間の絆の価値を再認識し、大都市にふさわしい連帯の形を創り上げる必要があります。これは、過度の権利を主張し責任は軽視する戦後の悪しき風潮を変えることにもなるに違いありません。
 先ずは、住宅街で近所の繋がりを結び直します。また、ネットの中で繋がる若者を地域での現実の人の輪へと橋渡しをいたします。区市町村とも連帯し、防災隣組とも言うべき新たな共助の絆を張り巡らすことにより、常日頃から周りを気遣い声をかけ合い、孤立とは無縁な、災害時に一人でも多くの人が救われる東京へと転換してまいります。

(次代を担う若者を育てる)

 いわゆる「失われた20年」に生まれ育った今の子供たちは、停滞・衰微する日本しか知りません。そんな子供たちに大震災があったとはいえ、さらに大きな重荷を背負った国家を残すことは許されません。我々には、環境と調和した社会や良質な社会資本、強い経済、連帯に裏打ちされた安全と安心を次の世代に引き継がせる責務があります。そして、複雑さと厳しさを増す国際社会を生き抜く力を与えなければなりません。

〈世界と戦える力を養う〉

 四方を激しい海に囲まれ、外に出て行くことが極めて困難であった日本の国土は、受動的で自己主張が苦手な日本人の性情を形づくってきました。こうした民族的DNAに加え、昨今の若者は過保護に漬かって抵抗力を欠き、ひ弱な内向き志向も見られます。しかし、既に手にした繁栄も空しい夢に終わりかねないこの今、この閉塞を打ち破り国家の希望となり得るのは、若者しかありません。
 世界に飛び出し、摩擦・相克の中で明確に意思表示もしながら、独自の才能を開花させていくような若者こそが、求められております。「かわいい子には旅をさせよ」と言いますが、世界を舞台に活躍する力強い若者を育成すべく、海外武者修行や留学を直接応援する新たな仕組みを構築したいと思います。
 あらゆる摩擦・相克に耐えるためにも、脳幹を鍛えていかなければなりません。その効果的な方法であるスポーツを通じて、若者に成長する喜びを実感させ、強靱な肉体や健全な精神を養ってまいります。
 国際化の時代に必須な論理的思考力や、他者と十二分に意思を交わす言語の技術といった「言葉の力」も身に付けさせます。

〈破壊的な教育改革を〉

 戦後、我が国は、正当な歴史を教えることもせずに、官僚に表象されるような先行事例を学び追いかけることに長けた人材を効率よく生み出すための教育が惰性のように続き、子供から個性や想像力の芽を摘んできました。
 このままでは、子供に海図・チャートも無しに21世紀の海へ乗り出せ、ということになりかねません。知力・体力・人間力を備え、自信と誇りを持って世界と渡り合える人材を育てるために、従来の制度や常識、慣行に囚われない新しいシステムが求められております。
 そこで、破壊的な教育改革を議論し発信してまいります。高い見識と類い稀な人生経験を持ち、国際感覚も豊かな方々からなる「教育再生・東京円卓会議(仮称)」を設置いたします。
 合わせて、只今申し上げた産業技術の新たな教育機関で次代のものづくり人材を育成するなど、これからの我が国を担う人材を東京から輩出してまいりたいと思います。

(「10年後の東京」計画の改定)

 これまで述べた施策を強力に推進するために、すぐに着手すべきことを「東京緊急対策2011」にまとめ、とりわけ早期の予算措置が必要な施策は補正予算に計上し本定例会に提案しております。年末には「10年後の東京」計画を改定して「2020年の東京(仮称)」を策定し、東京を一段と高い次元で成熟させる新たな政策を構築してまいります。

(オリンピック・パラリンピック日本招致)

 次に、オリンピック・パラリンピック招致について申し上げます。
 1964年10月10日、世界中の青空を持ってきたかのような快晴の下、神宮の杜に聖火が灯りました。戦後の焼け野原から立ち上がり、国際社会に復興した姿を示した瞬間でありました。
 世界史的にもかつて無い今回の大震災からの復興は、戦災からの復興にも匹敵する苦難の道程でありましょう。しかし、必ずや立ち直り、9年後の日本の姿を披瀝するならば、世界中から寄せられた友情や励ましへの何よりの返礼となるに違いありません。次代を担う若者に夢と希望を贈るためにも、日本開催を目指す松明を消さずに灯し続けることは、我が国の将来にとって大きな意義があると思います。
 招致成功には、国やスポーツ界、経済界など国家の総力が結集され、気運が盛り上がることが不可欠であります。都民・国民の皆様にも是非、被災地をはじめ広く日本全体とスクラムを組んで東京にオリンピック・パラリンピックを再び招致することを、考えていただきたいと思います。招致に向けて、日本が一つになることを強く期待しております。

4 都民・国民の連帯で大きな潮流をつくる

 先の選挙では皆様のご支援を賜り、四度、都政の舵取りを担うこととなりました。内憂外患に呻吟する日本にとって、この4年間は正念場でありましょう。かつて、福沢諭吉が「立国は私なり、公に非ず」、この強い言葉で示した国家を動かす個々人の強い意思が、未曾有の危機にある今ほど、必要な時はありません。政治は大きな目標を掲げ、現実を変える具体の手立てを通じて、個人の強い意思を連帯させ、大きな潮流にしていかなければならないのであります。
 それができる現場を持つ東京からこそ、この国の再生を先導しなければなりません。そのためにも被災地と肩を組み、首都圏と連合し、全国の自治体とも手を携えます。国には権限と財源の移譲や規制の改革を迫りますが、国の動きを待つだけでなく、必要とあらば民間とも手を携え、海外からの資金も活用してまいります。
 都議会の皆様とは共に首都を預かる政治家として議論を重ね、後の子孫が我々を顧みて、この4年間から日本は再び立ち上がったと認めてくれるような決断をし、施策も生み出したいと思います。身命を賭して都政運営にあたる決意であります。一層のご理解、ご協力をお願いいたします。

 なお、本定例会には、これまで申し上げたものを含め、予算案8件、条例案6件など、合わせて24件の議案を提案しております。よろしくご審議をお願いいたします。

 以上をもちまして、所信表明を終わります。